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五章妖精達の森

聖なる光を悪魔に・・・

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「歩・・・楽しんでいますかね?」

「多分楽しんでいるんじゃないですか?彼の事ですからすぐにエルフの人達と仲良くなっているはずです」

 礼拝所にてメリアとマリーは座りながら喋っていた。話題はもっぱら歩の事である。

 最近まで触れあいが無かったとはいえ、仮にも孫だ。心配しないわけがない。

 しかも向かった先にはその孫を憎む者がいる。心配で夜も眠れない。

 ドンドン!教会の扉がかなり強めに叩かれる。何事かとマリーは立ち上がって扉を開いた。

 すると扉の前にいたのは───。

「歩!?何故ここにいるのです!?ていうかその剣、シグルの・・・!」

「ごめんお祖母ちゃん・・・ちょっと質問良いかな?」

「お祖母!・・・こほん、どんな質問ですか?」

 取り乱れる呼吸。整えた後に歩は言った。

「お祖母ちゃんって聖女なんだよね?」



「おやおや?歩君逃げちゃったのですかねー?」

「逃げてはいない。なんでもお前を倒す策が完成したのだとか」

 リズベルの身体はもうボロボロだった。オクトスの剣撃を避けられずにまともに喰らってあばら骨を折ってしまっている。

「ほう?それは楽しみに待っていましょうか・・・アナタの身体をボロボロにしながらね!」

 膝をついているリズベルに剣を振り翳すオクトス。シトラは剣を落とそうと矢を放つが、寸前で見えない壁にぶつかって落ちてしまう。

「私に同じ手は通用しませんよ!お馬鹿さん!」

「くっ・・・!」

「なら、新しい手はばっちり効くという事ですね?」

「え・・・うぎゃあ!!」

 余裕の表情を作っていたオクトスが、剣を落として地面をゴロゴロと転がり始める。

「あ、貴女は・・・!聖女マリー!!」

「初めましてリズベル騎士団長。ニクル・・・ではなかった。ニコラスから聞いているわよ」

 突然現れてオクトスに一撃を喰らわせたのは歩の祖母であり、聖女でもあるマリーだった。

 あまりの神々しさにリズベルも思わずたじろいてしまう。

「お待たせしました!対悪魔のプロフェッショナル連れてきました!」

「凄い頼もしい人連れてきたな!歩君!」

 リズベルは想像以上にマリーの助っ人に喜んでいるようでいつもの仏頂面も笑顔になっている。

「にしてもこの状況の中でよく私を呼び出すなんて考えに至りましたね歩。私が貴方ぐらいの歳だったら絶対にそんな冷静な判断できない」

「休んでいる時にふと父さんの片見の剣を思い出しましてね。そこから連想してお祖母ちゃんまで至ったんですよ」

 悪魔は確かに現世に生きる生き物に対してはとても強いが、全ての生き物に強いわけではない。

 悪魔は聖なる神の力を授かる事が出来る聖女には滅法弱いのである。

 その差は月とスッポンぐらいである。

 実は昔の勇者がオクトスとの戦いに苦戦した理由はパーティーに聖女がいなかったらしい。

「シトラ、見つけてくれた?」

 シトラはニヤリと厭らしく笑うと矢筒の中から一本の美しい白銀の剣を取り出す。

 間違いない、父さんの剣だ。

「もう一度確認するけれども、この剣は悪魔に通用───」

「しますね。豆腐のように心臓まで突き刺せますよ」

 何とも怖くて分かりやすい説明ありがとうお祖母ちゃん。竜殺しの剣を鞘に納め、片見の剣を手に持つ。

「おのれ!そうはさせるk───」

「『ホーリーライト』」

 聖女の祈りは例え地下だろうと神へと届く。そして神は例え地下だろうと聖女に力を貸してくれるのだ。

 マリーから光が発生し、オクトスはまるで石化したかのように動かなくなってしまった。

「さあ、歩。貴方がトドメを刺しなさい!」

「えっ!?お祖母ちゃんならトドメを刺せるでしょ?なんで僕がトドメを・・・?」

「そうでもないのよね・・・」

 マリーはとても苦しそうだった。まるで息を止めているかのようにも感じた。

「この悪魔の召喚に生贄が使われたのと、私自体が衰えていて牽制と動きを止める事しか出来ないのよ。だから貴方が決めて頂戴!」

「・・・分かった」

 鞘から引き抜き、柄を握り締める。唾を飲んで覚悟を決める。

「・・・はぁ、今回も貴方達人間達の勝利ですか・・・参りましたね・・・」

 マリーに動きを止められた時点でオクトスに抵抗する気力は消え失せていた。

 普通は悔しがる所だと思うのだが、やはり悪魔というのは思考回路が僕ら人間とは違うのか。

「ただ、まだ私達悪魔貴方達人間との戦いは終わりませんよ!いつか絶対にこの世界を!地獄に変えて見せます!それまで首を洗って待っていなさい!」

「その時に僕達がいるかはわからないけど、多分人間達は受けて立つと思うよ。その挑戦」

「貴方は良い人ですね。そんな貴方に特大情報。私をここで殺しても地獄で蘇るので罪悪感は感じないようお願いします」

 先程からの余裕は死ねないからだったのか。つくづく悪魔というのは厄介な存在だ。

「ではでは!皆さんさようならー!」

 オクトスの愉快なお別れの言葉と同時に歩は片見の剣をオクトスの胸に突き刺した。

「やっぱり痛い・・・」

 あんなに最後は格好つけようと愉快に別れの挨拶が水の泡。胸を刺された痛みで血の泡を吹き出してオクトスは死に絶えた。

 しばらくすると、オクトスの身体はチリ1つ残らず洞窟から消えてしまった。
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