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五章妖精達の森

恐怖!マクドスファンクラブ!

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 パーティー会場から盗んできたワインをレモとシルが楽しんでいると、再び隠密行動が得意なメンバーが戻ってきた。

 表情はあまり浮かない様子。

「ポイント1と2を通過された・・・」

「まあ、仕留めきれないとは思ってはいたわ・・・」

 何しろ相手は78レベルのベテラン戦士。そう簡単に死んでもらったら逆に驚く。

「でも────」

「でも、何?」

 ドカァン!と爆音が洞窟中に響き渡る。3人はニヤリと笑った。

「ポイント3『閉じ込め作戦』は成功」

 シルとレモはターゲットが来るまでワインを飲みながらゆったりと待つ事にした。

「そんなに余裕かましていて良いの?」

「大丈夫よ。すでに奥の手の準備は済ませているから」



「おりゃあ!──はぁ!!」

「キャアァ!!」

 10歩歩いたか歩いていないかぐらいだ。歩は早速ファンクラブメンバーの女湯達に囲まれていた。

 数は5人、平均レベルは15。歩にとっては朝飯前である。

 だが、殺生はしない。戦闘続行不可能まで叩きのめすだけで終わらせている。

 付け加えると歩は機嫌がとても良かった。勿論人を斬っているからではない。竜殺しの剣が手にしっかりと馴染んでいるからである。

 先程までは感じていた柄からの温かさをいつの間にか感じなくなっていた。今感じているのは戦っている故の熱。

 形見の剣の威力も凄まじいが、竜殺しの剣は段違い。気分は既に上がっている。

「おらおらおらぁ!!」

 別に狂戦士バーサーカーではないが、気分が良いとすぐに調子に乗ってしまう。それが歩という男である。

 戦闘開始から1分しか経過していないが、襲いかかってきた女達は戦闘不能で立つことが出来ないようだ。

 同時にトラウマを植え付けてしまったようで僕に怯えてしまっている。

「少しやり過ぎたな・・・」

 相手は人間。手加減するのは力だけではなく、気分も抑えなければいけないようだ。

 しかし、今はコイツらに構っている場合ではない。薬草を地面に投げると歩は奥へと進んで行った。

「止まr───速っ!?」

 ファンクラブがなるべく襲いかかりにくいようにとかなりの速度で洞窟の奥へと走っていく。効果はあったようで何人か僕に攻撃をしそびれている。

 このままでは捕まえられないとやっと理解したのだろう。ついに横からではなく、真っ正面に現れて仁王立ちしてきた。

「止まれぇ!止まらないと殺すぞ!!」

 走ってくる勢いで自爆させようとしているようで槍の穂先を走っている僕側に向けて何人かのエルフの女達が待ち構えている。

 勿論僕は止まる気はない。速度を変えずに走る走る走る。

「と、止まるぇ!止まってくれ!頼むから!」

 ついに恐れおののいたのだろう。半べそかきながら神に祈るように僕に止まるようお願いしてきた。

 歩は速度を下げることなく、逆に速度を上げていく。ついにはエルフの女達は泣き始めた。

 歩も鬼ではない。戦う気を失った相手を一方的に叩きのめすことなく、そのまま飛び越えて先を急いだ。

「ひぃぃぃ!!もうやだぁ!!」

 後ろからわんわんと泣く女達の声が響き渡る。先程までではないが、少々トラウマを植え付けてしまっただろうか?

 だが、本当に力加減というものは難しい。ラグドさんはどうやってレベル1の僕に剣術を教えていたのだろうか?

 いつか一人前と認められるようになったら手加減の仕方も教えてもらおう。

「にしても結構この洞窟深いな・・・」

 故郷にある洞窟が大した事無かった故に舐めていたが、やはり洞窟にも深い浅いがあるらしく、全然奥が見えてこない。

「て言うかさっきから僕の事襲って来る連中あんまり強くは無いな・・・」

 最初に奇襲してきた女5人組の平均レベルは15。横から奇襲を仕掛けようとしてし損ねた奴らの大体のレベルが20。そして先程飛び越えた女達のレベルは16程度。

 相手は僕がラグナロクのエルフの里に来るのを知っていたのだろう。でなければこんな大それた計画は練る事は出来ない。

 最近夏川の街を歩いていたら、視線をよく感じていたが、恐らくはファンクラブの差金だろう。

 偵察をエデンに送って来ているのだから僕のレベルは知っているはずだろう。相手もレベル1、20程度の奴がレベル78の奴に勝てないのは誰でも分かる。

だとしたら奇襲を仕掛けたのは殺す為ではなく、足止めをする為ではないのかと推測出来る。

「でも足止めしたって結局は戦う運命だぞ・・・」

 だとしたら考えられる事はただ1つ。何か秘策を用意している可能性だ。僕を一撃で殺せるような秘策を考えているに違いない。

 僕は生憎相手の頭の中を読むことは出来ない。ただ秘策があるのは何となく分かる。その内容は後に分かる事だ。

 わからないのならいつまでも突っ立ってないで前に進むのみ。

「警戒はしておこう」

 再び歩き始める。すると、カタリと石ころが転がる音が聴こえてきた。

 手慣れた手つきで剣に手を添える。

「・・・来い」



 レモとシルは少し酔っていた。対戦前にそんなに呑んでいて大丈夫なのだろうか?周りのメンバーが心配している。

「大丈夫だって!エデンとかぬるい世界から来た戦士なんて奥の手で一コロだから!」

「そうそう、何たって魔術師30人がかりで作ったのよ?どんなに強くったって余裕だわ」

 キャハハ!と2人の笑い声が響く。高らかに笑うシルとレモの前に隠密行動が得意なメンバーが参上した。

「あら?どうしたの?もしかして足止めだけで捕らえた?」

「何よー!呆気ないわね!小野山歩!」

「いや、その逆」

「「へっ?」」

「もうすぐそこまで来てる」

 全員耳を澄ましてみる。すると、カツンカツンと靴が石を叩く音が一定のリズムで流れてくる。

 やがて足音は大きくなっていき、メンバーも各々の武器を持って警戒する。

「『フレイム』!」

 入ってきたのはターゲットではなく、掛け声と共に吹き出してきた炎だった。レモとシル以外のメンバーはビビって武器を落としてしまう。

「やっぱり数だけか・・・中身は大した事無いな・・・」

 余裕の表情で現れたターゲット。墨のように真っ黒な髪と茶色い瞳。

 エルフの女好みの可愛らしい童顔。シルとレモも最初見た時は思わずキュンとしてしまった。

 だが、そいつこそが愛しのマクドス様を殺した帳本人───小野山歩だ。

「さあ、始めようか」
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