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四章二人の魔女の戦争

歩の行方は・・・?

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 歩は帰ってこなかった。1時間経っても、/時間経っても。全然帰ってくる気配がなかった。

 店を開ける事が出来ないので亮一に探しに行ってもらったが、商店街にはいなかったらしい。

 彼があの商店街を使わない事なんてあるのか?いや、ない。歩は野菜を買うのはあの商店街の八百屋だけと言っていた。

「シトラ、落ち着こ」

「で、でも。最近不審者とか出て危ないし、もし歩が───」

「歩がそこらの不審者にやられるわけない」

 彼はステータスカードをラグドから授かって強大な力を得ている。不審者に遭遇したとしても逆に不審者の方が怪我をするだろう。

 それはシトラも分かっていた。でも、何故か不安が消えないのだ。

「にしても亮一も遅いな。まさか・・・!」

「俺は大丈夫だよ」

 入り口を豪快に開けてエプロン姿の亮一が現れる。脇にはノートパソコンが入っていた。

「兄さんに監視カメラの映像を管理してるパソコン借りてきた。こいつで探した方がてっとり早いだろう」

「グッジョブ!早速!!」

 パソコンを起動し、過去の監視カメラの映像を閲覧。時刻は16時に設定、場所は商店街。

「あっ、歩だ」

 歩がエコバッグを持って商店街へと現れた。早く店に帰りたかったのだろうか、少し早歩きだ。

 八百屋につくと顔馴染みの八百屋の店主と2分程世間話、その後トマトを5個購入。

 買い物が終わって帰路を後にしようとしたが、店主に小松菜とキャベツが安いと言われ、Uターン。店主の巧妙な作戦に引っ掛かり、歩は小松菜とキャベツを買ってしまった。

「ここまでは異常はないわね・・・」

「多分次からが問題だ」

 亮一の予測は見事に当たった。歩が上機嫌で帰路を歩いていると謎の女性が現れ、歩に急接近すると、歩と共に何処かへと消えてしまったのだ。

 今まで摩訶不思議な体験をしてきた亮一達だが、流石に今の出来事には目を剥く反応を示す。

「・・・何、あれ・・・?」

「さ、さあ・・・・」

「・・・・・・」

 葵と亮一が驚いく中シトラだけが驚かず、顎に手を添えて考え事に没頭していた。2人は空気を読んで彼女の考え事が終わるまで喋らず静かに待つことにした。

 あれは何者なんだ?突然消えたぞ?そんな事が普通の人間に───いや、違う。そもそも普通の人間という考え自体がおかしいんだ。歩と一緒に考えた女は普通の人間ではないと仮定してみよう。

 ──・・・あれはもしやステータスカードを持った魔術師か何かではないのだろうか?その可能性が極めて高い!

「亮一!葵!すぐに警察署に行こう!元山署長に会いに行くわよ!」

「お、おう・・・」「あいさ!」

 『憩いの場』の看板を裏にして閉店させ、しっかりと扉の鍵を閉めてから警察署へと走っていった。



「元山署長!失礼します!」

「ダイナミック入室!?」

 勢いよく扉を開け、署長室へと入ってきたシトラに驚き、椅子から転げ落ちてしまう元山。

 立ち上がるといきなり入ってきたシトラに注意の一環として怒鳴ろうとしたが、その前にシトラが目の前に現れたせいで怒りが失せてしまう。

「歩がステータスカード所持者と思われる魔術師に拐われたんです!すぐラグドさんに連絡を!!」

「何!?わ、分かった!すぐに取ろう!」

 元山が行動に移すのは早かった。机の中に入っていたきり箱を取り出すと、中に入れていた繋りの石を取り出してラグドに連絡を取る。

 1分程静寂が続いたが、1分後にはラグドの声が部屋じゅうに響き渡った。

『やあ、どうしたんだい元山?』

「良し、繋がった!単刀直入に言うぞ!歩が拐われた!」

『何ぃ!?』

 パリン!とティーカップが割れる音が繋りの石から響いてくる。ラグドはい今まで聞いた事もないようなあわてっぷりで元山を問い詰める。

『もう一度聞くぞ!本当に歩君が拐われたというのだね!?』

「そ、そうらしい」

「はい、歩はステータスカードの所持者らしき女に連れていかれました」

『ステータスカードの所持者・・・確かに歩君を誘拐するには普通の人間じゃ不可能か・・・。それで、その女の特徴は言えるか?』

「監視カメラが上からの目線なのであまり詳しくは分からないのですが、妙に色気がある紫髪の女性です」

『色気のある紫髪の女・・・了解した。こちらでも捜索してみよう。もしかしたらかもしれないしな』

「魔女・・・ですか?」

『ああ、悪魔と契約して人がおよそ使えるはずのない魔法や強力な魔術を得た違法の魔術師だ』

「それってかなりヤバイのでは・・・」

『そこら辺の魔術師では敵わないな』

 結果が出次第報告すると言い残すとラグドは繋りを切る。元山は溜め息をつくとどかっと高そうな署長専用の椅子に座った。

「と、言うわけだ。連絡があり次第君達に連絡するので、各々の自宅で待機しているように」

「・・・・はい」

「心配するのは分かるけど、歩なら絶対に大丈夫。あいついつも死にそうなピンチに襲われても何だかんだで無事なんだから」

 葵が落ち込むシトラの肩を叩き、慰める。するとシトラは目尻涙を滲ませ訴えた。

「本当の本当の本当に大丈夫なの!?」

「ああ、きっと大丈夫だろうよ。逆に魔女から逃げ出すぜアイツは」

「有り得る」

 場の空気を変えようと高らかに笑う葵と亮一と元山。しかしそれでもシトラの不安は消えない。

「逃げ出したとしても、その先で怪我とかしたら・・・!」

「アイツは治療魔術も得意だろ?毒に侵されてもキュアで解毒するだろうさ」

「そうだよね・・・そうだよね・・・」

 相当に精神が参っている事に気づいた葵はシトラは自分へと手繰り寄せ、ギュッと抱き締めて上げる。

「大丈夫。大丈夫だから」

「うん、うん・・・・」

 シトラの瞳からポロポロと涙が流れる。葵はそっとハンカチを渡してあげた。



「ラグド団長!叫ばれていたようすですが、どう致しましたか!?」

 心配して飛んできた騎士達が最初に見たのは床に落ちた割れたティーカップ。その次に見たのは顎に手を添えてうーんと唸るラグドだった。

「あの・・・どう、しましたか・・・?」

「歩君が、拐われたらしい」

「英雄シグルの魂を持つというあの青年がですか!?」

「ああ、しかもただの誘拐ではないかもしれない。歩君の仲間に聞いた所、拐ったのは紫髪の色っぽい女らしい。もしかしたら魔女かもしれないな」

「魔女・・・ですか?」

「ああ、魔女だ」

 厄介な事になった。普通の魔術師ならともかく、魔女となると骨が折れるというもの。探すのも面倒だし、戦うのも面倒だ。

 奴らは単刀直入に言って強い。竜の牙で作り上げた竜牙兵で軍を作り、相手を魔術で翻弄する。

 大魔術師兄弟のプリングやプロングとは比べ物にならない魔力の高さだ。魔力だけならば、私を大きく上回っている。

「しかし、何故歩君を狙ったのだろう・・・?」

 確かに歩君は見違える程強くなった。今私が彼と戦ったら果たして勝てるのだろうかと思うくらいに。

 しかし、この世界にも優秀な騎士や戦士は山ほどいる。そちらをターゲットにした方が手間が省けるのではないか?

 もしかして、新魔王軍が関わっているのではないのか?だとしたらかなり厄介だ。新魔王軍が魔女と組んでいる事になるのだから。

 この後も2時間考えたが、納得出来る理由が1つも思い浮かばなかった。
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