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一章混沌と魔物
習得
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ラグドは手合わせという形で歩に剣術を教えていた。その方が効率的と考えたからだ。それが功を為したのか、1週間。いや、1日、24時間という短い時間の中で剣の特訓をしたのは、約3時間だったから7かけて1週間の期間中に剣術に費やした時間は21時間。あまりにも短い期間で歩の剣術は、日を追うごとに上達していった。達人と呼ぶには程遠いが、素人とは言えない域までには達していた。
「ハァ、ハァ、ハァ・・・」
「フゥ、今日も良い汗かいた!!」
ローブの袖で額の汗を拭うと、ラグドは新たな指示を歩に出す。
「歩君、ステータスカードを出してくれないかな?」
「あ、はい」
彼を信頼している歩は一切怪しまずにステータスカードを実体化させる。ほんの僅かだが、ステータスが上昇していた。
「お、パワーとスタミナが3も上がっているな。上出来上出来」
「それで、何をするんですか?」
「流石歩君、察しが良いね。君の言う通り今から次の段階に進んで貰う」
「次の、段階・・・?」
次の段階という物に驚きつつも、興味を示した歩。ラグドは勿体ぶる事なく説明を始めた。
「スキルと言ってな。自身が身に付けた技術をステータスカードで確認出来るのだよ。ステータスカードを実体化させる時みたいに念じれば見れるはずだから」
「『スキルが見たい』と念じれば良いんですね?」
うむ、と頷くラグドを見て確証を得た歩はステータスカードを握り『スキルが見たい』と念じる。
・・・しかし、反応がない。今までからして光ったりするのではないのか?
目を開けてカードを見てみるとなんと不思議な事か、ステータス数値ではなく、別の事が記されていた。
記されていたのは、剣術レベル1という内容。成程、これをラグドさんは確認したかったのか。そう確信した歩は満を持してラグドにカードを見せる。すると、ラグドは「よし!」と小さく喜んだ。
「いやー、1週間で習得させられるか不安だったけれども、君の才能は僕が予測していたよりも遥かに凄いようだね!!」
「は、はい!ありがとうございます!!」
1週間の適切な指導に感謝に歩は、深々とお辞儀をする。
これでやっと僕も、ゴブリン達と渡り合えるようになるだろう。
「でも、何で1週間で剣術スキルを習得させなければならなかったんですか?時間なら、たっぷり・・・」
「ないのだよ」
「・・・え?」
「ないのだよ、歩君。黙っていたのだが」
驚きのあまり口が開きっぱなしの歩。ラグドは硬直する歩の手を引っ張って「ついてきてくれ」と半ば強引にとある場所へとつれていかれたのであった。
★
「・・・なんですか、これ・・・」
連れてこられたのは大きな洞窟だった。大人が体を屈めなくともいとも簡単に奥へと進めるであろう大自然が産み出した迷宮(ラビリンス)。しかし、歩が驚いたのは洞窟の大きさではない。歩が驚いたのは大洞窟を蓋をするように入り口を覆った巨大な魔法陣だ。
「私が10日前に施した封印魔術『シールオブブレイブ』だ」
「す、凄いですね・・・」
魔術を知らない僕でも分かる。この魔術は多少魔術の心得ある程度の人間が出来る魔術ではない。この人(ラグド)、何かを僕に隠している。
「単刀直入に言おう。封印は時間にしてあと25時間で消える」
「あと1日で消えちゃうんですか!?」
「ああ、昔はもう少し耐えられたのだが、最近は老いてきたせいか弱まってしまった」
つくづく老いには頭を悩まされるとラグドはため息をつく。しかし、1週間以上も封印出来ただけでも十分に凄いと思う。
「という訳だ。今からあのケイサツショという所に行こう」
こくりと頷くと言われるがままに歩はラグドと警察署へと向かうのであった。
★
土曜の午後。元山は署長室で優雅に紅茶を啜る。
はあ、心が安らぐ。こんな時間が続けばいいのに・・・・。
だが、その願望もあっけなく2人の人物の登場で打ち砕かれる。
「おい、入るぞ」
「し、失礼します・・・」
「どわあぁ!?──あつぅ!!」
ローブを着た老人の登場に驚いて不幸な事にティーカップに入っていた残りの紅茶を全部右膝にかけてしまった元山はその熱がる勢いのままラグドに怒鳴り付ける。
「おい!入ってくるならノックぐらいせんか!それとも、君の住んでいる世界とやらではノックという概念がないのか!?」
「すまない緊急事態なんだ。許してくれ」
「緊急事態?何かあったのか?」
「ゴブリンの巣にかけていた封印があと25時間程できれる」
「な、何だと!!あれほど自信ありげだったのにか!?」
「あれ?何で知っているんですか?」
「『シールオブブレイブ』を使用する10日前に1度ね」
あれは今日と同じく紅茶を啜っていた時の事。ヤツはいきなり署長室に顔を出すなり、ゴブリンの巣ごと一時封印すると言ってきたのだ。その時どれ程もつのかと聞いたら、「分からん。しかし、この魔術はかなり強力だ」と言ったのだ。だから期待していたのにこの様とは。まあ、魔術という物を知らないので、文句は言えないのだが。
「文句を言えないとは・・・元山、お前実は良い奴なのではないか?」
「だから心を読むなといっているだろうが!!」
ダメだ。こいつの相手をしていると調子が狂う。
「それより、許可は下りているのか?私の要求は?」
そう、彼には約1ヶ月前にとある要求をされた。内容はいたってシンプル“自由”だ。市民の脅威であるあの化け物を倒す代わりに自由に行動させてほしいと要求されたのだ。10日前に再度お願いされて、考えたが、答えはすぐに出た。
「許可する。君の力を貸してくれ」
「ありがとう元山。君が話が分かる人で良かった」
不本意ではあるが、彼が差し出してきた手を握り、握手を交わした。
「ハァ、ハァ、ハァ・・・」
「フゥ、今日も良い汗かいた!!」
ローブの袖で額の汗を拭うと、ラグドは新たな指示を歩に出す。
「歩君、ステータスカードを出してくれないかな?」
「あ、はい」
彼を信頼している歩は一切怪しまずにステータスカードを実体化させる。ほんの僅かだが、ステータスが上昇していた。
「お、パワーとスタミナが3も上がっているな。上出来上出来」
「それで、何をするんですか?」
「流石歩君、察しが良いね。君の言う通り今から次の段階に進んで貰う」
「次の、段階・・・?」
次の段階という物に驚きつつも、興味を示した歩。ラグドは勿体ぶる事なく説明を始めた。
「スキルと言ってな。自身が身に付けた技術をステータスカードで確認出来るのだよ。ステータスカードを実体化させる時みたいに念じれば見れるはずだから」
「『スキルが見たい』と念じれば良いんですね?」
うむ、と頷くラグドを見て確証を得た歩はステータスカードを握り『スキルが見たい』と念じる。
・・・しかし、反応がない。今までからして光ったりするのではないのか?
目を開けてカードを見てみるとなんと不思議な事か、ステータス数値ではなく、別の事が記されていた。
記されていたのは、剣術レベル1という内容。成程、これをラグドさんは確認したかったのか。そう確信した歩は満を持してラグドにカードを見せる。すると、ラグドは「よし!」と小さく喜んだ。
「いやー、1週間で習得させられるか不安だったけれども、君の才能は僕が予測していたよりも遥かに凄いようだね!!」
「は、はい!ありがとうございます!!」
1週間の適切な指導に感謝に歩は、深々とお辞儀をする。
これでやっと僕も、ゴブリン達と渡り合えるようになるだろう。
「でも、何で1週間で剣術スキルを習得させなければならなかったんですか?時間なら、たっぷり・・・」
「ないのだよ」
「・・・え?」
「ないのだよ、歩君。黙っていたのだが」
驚きのあまり口が開きっぱなしの歩。ラグドは硬直する歩の手を引っ張って「ついてきてくれ」と半ば強引にとある場所へとつれていかれたのであった。
★
「・・・なんですか、これ・・・」
連れてこられたのは大きな洞窟だった。大人が体を屈めなくともいとも簡単に奥へと進めるであろう大自然が産み出した迷宮(ラビリンス)。しかし、歩が驚いたのは洞窟の大きさではない。歩が驚いたのは大洞窟を蓋をするように入り口を覆った巨大な魔法陣だ。
「私が10日前に施した封印魔術『シールオブブレイブ』だ」
「す、凄いですね・・・」
魔術を知らない僕でも分かる。この魔術は多少魔術の心得ある程度の人間が出来る魔術ではない。この人(ラグド)、何かを僕に隠している。
「単刀直入に言おう。封印は時間にしてあと25時間で消える」
「あと1日で消えちゃうんですか!?」
「ああ、昔はもう少し耐えられたのだが、最近は老いてきたせいか弱まってしまった」
つくづく老いには頭を悩まされるとラグドはため息をつく。しかし、1週間以上も封印出来ただけでも十分に凄いと思う。
「という訳だ。今からあのケイサツショという所に行こう」
こくりと頷くと言われるがままに歩はラグドと警察署へと向かうのであった。
★
土曜の午後。元山は署長室で優雅に紅茶を啜る。
はあ、心が安らぐ。こんな時間が続けばいいのに・・・・。
だが、その願望もあっけなく2人の人物の登場で打ち砕かれる。
「おい、入るぞ」
「し、失礼します・・・」
「どわあぁ!?──あつぅ!!」
ローブを着た老人の登場に驚いて不幸な事にティーカップに入っていた残りの紅茶を全部右膝にかけてしまった元山はその熱がる勢いのままラグドに怒鳴り付ける。
「おい!入ってくるならノックぐらいせんか!それとも、君の住んでいる世界とやらではノックという概念がないのか!?」
「すまない緊急事態なんだ。許してくれ」
「緊急事態?何かあったのか?」
「ゴブリンの巣にかけていた封印があと25時間程できれる」
「な、何だと!!あれほど自信ありげだったのにか!?」
「あれ?何で知っているんですか?」
「『シールオブブレイブ』を使用する10日前に1度ね」
あれは今日と同じく紅茶を啜っていた時の事。ヤツはいきなり署長室に顔を出すなり、ゴブリンの巣ごと一時封印すると言ってきたのだ。その時どれ程もつのかと聞いたら、「分からん。しかし、この魔術はかなり強力だ」と言ったのだ。だから期待していたのにこの様とは。まあ、魔術という物を知らないので、文句は言えないのだが。
「文句を言えないとは・・・元山、お前実は良い奴なのではないか?」
「だから心を読むなといっているだろうが!!」
ダメだ。こいつの相手をしていると調子が狂う。
「それより、許可は下りているのか?私の要求は?」
そう、彼には約1ヶ月前にとある要求をされた。内容はいたってシンプル“自由”だ。市民の脅威であるあの化け物を倒す代わりに自由に行動させてほしいと要求されたのだ。10日前に再度お願いされて、考えたが、答えはすぐに出た。
「許可する。君の力を貸してくれ」
「ありがとう元山。君が話が分かる人で良かった」
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