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一章混沌と魔物
背負いし宿命
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「・・・あの、ラグドさん。特に何もないんですが・・・」
超人的な力を得ると聞いていたので、手に取ったら力がみなぎってくるような感覚に襲われるかと思いきやまったくそれと言った感じはなく実感は湧かない。本当に僕は人を凌駕するような力を手にいれたのだろうか。
「気持ちは分かるぞ小野山歩君。私も所有者になった時の反応も君と同じだった」
「まーた僕の心を読みましたね・・・って。え!?ラグドさんもステータスカード所有者だったんですか?」
ここで新たに衝撃の真実が明らかになる。思い返してみれば、あの時怪物達を一言言い放っただけで追っ払っていた。それに加え先程から僕の心の言葉を見事に正確に当てている。原因はきっとステータスカードが関係しているのだなと脳内で結論付ける。
「そう。やはり君は頭が良いようだ。君にステータスカードを託して良かったよ」
「もう突っ込むのやめよ」
そして僕はいちいち突っ込みを入れるのを止めることを固く誓うのであった。
「で、本当に強くなったんですかね?」
「ああ。普通の人間よりかは強くなった。試してみるか?」
と言うとラグドは何かを呟き始めた。
「大地の精霊よ。我に生命を育む大地の力を貸したまえ───ストーン!」
何処からともなくラグドの手の平にラグドの手よりも大きな石が現れる。現れた石は平べったく、厚みもある石壁を作るには持ってこいの質だ。だが、石の質よりも驚くべきことが今目の前で起こった。何かをラグドが呟き始めたと思ったら突然石が発生した。歩達は驚く事しか出来ない。
「そうだった。君達の世界は魔法という概念が忘れ去られてしまっているのか。すまなかったな驚かせてしまって」
「今のが魔術・・・?」
「ああ、魔術だ」
たった一言の言葉だが、歩達はそれで納得する。
魔物や異世界が存在するのなら魔術も存在するだろうと。
「さあ、これを殴ってみてくれ」
「は、はい!」
歩の方を向き、腰を落とし、石を両手で持ち、殴れと命令する。歩も腰を落とし、利き手である左手で拳を作り、前へと突き出す。正拳突きの構えだ。
再び尋問室が静まる。さっきとは違く、緊迫とした空気が流れている。その空気に侵されたのか優人と緑も口を閉じ、歩を見守る。
「来い」
拳を腰元まで引く。空手をやったことがないはずなのに、何故か形はとても様になっている。心を落ち着かせ、体の震えを押え、決意を固める。
「おりゃ!」
腰まで引いていた拳が疾風の如く石へと飛んでいく。速度は明らかに人を超えている。
歩の拳はあっという間に石へと到着し、見事に割った。パラパラと石くずが床に落ちる。石な綺麗な程に真っ二つに割れ、歩の拳は石粉こそ付着していたが、かすり傷の一つもついていなかった。
「嘘・・・!」
「どうだね?これがステータスカードの恩恵だ」
生まれてこれまで殴るという行為を一度もしたことがないので、元のパンチ力は分からないが、明らかに人が繰り出せるパンチの威力を超えている。これがステータスカードの恩恵というものなのか・・・。
「これで僕も化け物と戦えるんですか?」
「ああ。だが、今のレベルままでは苦戦するだろう」
「レベル・・・?」
「説明しよう。ステータスカードの所有者となった者は確かに超越した力を得られる。しかし、所有者になったばかりの人間は普通の人間の1.5倍のパワー程しか引き出せていない不完全な状態だ。カードを見てみるが良い君の物となったステータスカードにレベル1と表記されているはずだ」
「えーと・・・カード、体の中に入っちゃったんですが・・・」
「『カードよ出てこい!』と強く念じればステータスカードは現れる」
言われた通りに強くカード、出てこい!と念じてみる。すると、数秒も経たぬうちにステータスカードが歩の前へと再び姿を現した。
カードには先程は書かれていなかった文字が書かれていた。表記されていた文字は漢字にもローマ字にも似ていない未知の文字だった。しかし、まるで母国の文字のようにその文字が出来る。これもきっとステータスカードの恩恵というものなのだろう。
カードにはこう表記されていた。
オノヤマアユム:レベル1
攻撃力:8
守備力:10
素早さ:8
体力:11
魔力:7
幸運:4
「ふむ、やはりみこんだ通りだ。初期ステータス値が幸運以外平均より高い」
「え?そうなんですか?」
「ああ。大体レベル1の初期ステータスの平均値は攻撃力が4、守備力が5、素早さが5、体力が5、魔力が4、幸運が5、だ。それに大して君のステータス値は幸運を除いて全て平均以上だ」
攻撃力と守備力と体力に関しては平均の2倍の数字である。それにしても人よりちょっと幸薄だと思っていたが、まさか本当に人より幸運がひくいだなんて・・・。しかし、レベル1と表記されているが、レベル2やレベル3もあるのだろうか。
「あるとも。レベルアップというものがあってね。レベルアップをすることによってレベルをもう一段階上のものに出来るのだ」
「また頭の中読みましたね・・・まあいいや。で、どうやってレベルを上げるのですか?」
「戦いの経験を積んでいけばレベルは上がるぞ。限界は99までだ。稀に99を越える事が出来る逸材がいるが」
戦って勝利して手にいれた経験値で一段階強くなる。RPGのシステムそのものだ。
「あと、武器の事なのだが・・・少し待っていてくれないか?私の方の世界に戻って調達してくる」
「え?待たなくてもこの世界にある物で良いんじゃないですか?」
「いや、いかん。普通の武器ではあいつらを倒すことは出来ない。だから魔力を用いて作った丈夫な武器ではないとダメなんだ」
「そうなんですか・・・分かりました。ラグドさんがまた戻ってくるまで待っています」
「うむ。そうしてくれ」
ラグドさんはそう言うと懐から透き通った青い石を取り出す。
ステータスカードの影響なのかその石が目には見えない不思議な力を帯びていることが分かる。
これが、魔力という物なのか。
不思議な石を手に取ったラグドは呪文を唱える。
「我、この世界とは異なる世界の民なり。全知全能の神よ、我を元の世界へと戻したまえ───ワープ!」
淡い光がラグドを包み込む。あまりの光量に慌てて目を手で覆った。やがてラグドも光り始め、泡のように跡形もなく消え去った。
「「「・・・・・・」」」
取り残された三人は思考が追い付かず、呆然とたちつくすのであった。
超人的な力を得ると聞いていたので、手に取ったら力がみなぎってくるような感覚に襲われるかと思いきやまったくそれと言った感じはなく実感は湧かない。本当に僕は人を凌駕するような力を手にいれたのだろうか。
「気持ちは分かるぞ小野山歩君。私も所有者になった時の反応も君と同じだった」
「まーた僕の心を読みましたね・・・って。え!?ラグドさんもステータスカード所有者だったんですか?」
ここで新たに衝撃の真実が明らかになる。思い返してみれば、あの時怪物達を一言言い放っただけで追っ払っていた。それに加え先程から僕の心の言葉を見事に正確に当てている。原因はきっとステータスカードが関係しているのだなと脳内で結論付ける。
「そう。やはり君は頭が良いようだ。君にステータスカードを託して良かったよ」
「もう突っ込むのやめよ」
そして僕はいちいち突っ込みを入れるのを止めることを固く誓うのであった。
「で、本当に強くなったんですかね?」
「ああ。普通の人間よりかは強くなった。試してみるか?」
と言うとラグドは何かを呟き始めた。
「大地の精霊よ。我に生命を育む大地の力を貸したまえ───ストーン!」
何処からともなくラグドの手の平にラグドの手よりも大きな石が現れる。現れた石は平べったく、厚みもある石壁を作るには持ってこいの質だ。だが、石の質よりも驚くべきことが今目の前で起こった。何かをラグドが呟き始めたと思ったら突然石が発生した。歩達は驚く事しか出来ない。
「そうだった。君達の世界は魔法という概念が忘れ去られてしまっているのか。すまなかったな驚かせてしまって」
「今のが魔術・・・?」
「ああ、魔術だ」
たった一言の言葉だが、歩達はそれで納得する。
魔物や異世界が存在するのなら魔術も存在するだろうと。
「さあ、これを殴ってみてくれ」
「は、はい!」
歩の方を向き、腰を落とし、石を両手で持ち、殴れと命令する。歩も腰を落とし、利き手である左手で拳を作り、前へと突き出す。正拳突きの構えだ。
再び尋問室が静まる。さっきとは違く、緊迫とした空気が流れている。その空気に侵されたのか優人と緑も口を閉じ、歩を見守る。
「来い」
拳を腰元まで引く。空手をやったことがないはずなのに、何故か形はとても様になっている。心を落ち着かせ、体の震えを押え、決意を固める。
「おりゃ!」
腰まで引いていた拳が疾風の如く石へと飛んでいく。速度は明らかに人を超えている。
歩の拳はあっという間に石へと到着し、見事に割った。パラパラと石くずが床に落ちる。石な綺麗な程に真っ二つに割れ、歩の拳は石粉こそ付着していたが、かすり傷の一つもついていなかった。
「嘘・・・!」
「どうだね?これがステータスカードの恩恵だ」
生まれてこれまで殴るという行為を一度もしたことがないので、元のパンチ力は分からないが、明らかに人が繰り出せるパンチの威力を超えている。これがステータスカードの恩恵というものなのか・・・。
「これで僕も化け物と戦えるんですか?」
「ああ。だが、今のレベルままでは苦戦するだろう」
「レベル・・・?」
「説明しよう。ステータスカードの所有者となった者は確かに超越した力を得られる。しかし、所有者になったばかりの人間は普通の人間の1.5倍のパワー程しか引き出せていない不完全な状態だ。カードを見てみるが良い君の物となったステータスカードにレベル1と表記されているはずだ」
「えーと・・・カード、体の中に入っちゃったんですが・・・」
「『カードよ出てこい!』と強く念じればステータスカードは現れる」
言われた通りに強くカード、出てこい!と念じてみる。すると、数秒も経たぬうちにステータスカードが歩の前へと再び姿を現した。
カードには先程は書かれていなかった文字が書かれていた。表記されていた文字は漢字にもローマ字にも似ていない未知の文字だった。しかし、まるで母国の文字のようにその文字が出来る。これもきっとステータスカードの恩恵というものなのだろう。
カードにはこう表記されていた。
オノヤマアユム:レベル1
攻撃力:8
守備力:10
素早さ:8
体力:11
魔力:7
幸運:4
「ふむ、やはりみこんだ通りだ。初期ステータス値が幸運以外平均より高い」
「え?そうなんですか?」
「ああ。大体レベル1の初期ステータスの平均値は攻撃力が4、守備力が5、素早さが5、体力が5、魔力が4、幸運が5、だ。それに大して君のステータス値は幸運を除いて全て平均以上だ」
攻撃力と守備力と体力に関しては平均の2倍の数字である。それにしても人よりちょっと幸薄だと思っていたが、まさか本当に人より幸運がひくいだなんて・・・。しかし、レベル1と表記されているが、レベル2やレベル3もあるのだろうか。
「あるとも。レベルアップというものがあってね。レベルアップをすることによってレベルをもう一段階上のものに出来るのだ」
「また頭の中読みましたね・・・まあいいや。で、どうやってレベルを上げるのですか?」
「戦いの経験を積んでいけばレベルは上がるぞ。限界は99までだ。稀に99を越える事が出来る逸材がいるが」
戦って勝利して手にいれた経験値で一段階強くなる。RPGのシステムそのものだ。
「あと、武器の事なのだが・・・少し待っていてくれないか?私の方の世界に戻って調達してくる」
「え?待たなくてもこの世界にある物で良いんじゃないですか?」
「いや、いかん。普通の武器ではあいつらを倒すことは出来ない。だから魔力を用いて作った丈夫な武器ではないとダメなんだ」
「そうなんですか・・・分かりました。ラグドさんがまた戻ってくるまで待っています」
「うむ。そうしてくれ」
ラグドさんはそう言うと懐から透き通った青い石を取り出す。
ステータスカードの影響なのかその石が目には見えない不思議な力を帯びていることが分かる。
これが、魔力という物なのか。
不思議な石を手に取ったラグドは呪文を唱える。
「我、この世界とは異なる世界の民なり。全知全能の神よ、我を元の世界へと戻したまえ───ワープ!」
淡い光がラグドを包み込む。あまりの光量に慌てて目を手で覆った。やがてラグドも光り始め、泡のように跡形もなく消え去った。
「「「・・・・・・」」」
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