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最終章 探究者と門番

23話 好奇心の塊ルミナ

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「これで、止まったんですかね?」

「確実にゆっくりにはなっただろうね。でも、まだ止まりはしないさ」

 ああ、やはりそうなのか。俺らが破壊した生贄の遺体の数は20体。世界融合の魔術に必要な生贄は21人。残りの1人は、賢者ルミナ自身が行なっている。

「やっぱり、賢者ルミナを説得するか、倒すしかないですかね?」

「説得は絶対無理!それで失敗して賢者リャオは一回殺されてるから!」

 あの人、一回殺されてたのか。賢者は死んでも生き返ることくらい容易なのだろうか。

「20体の遺体の破壊に成功したんだから、そろそろ出てきてもおかしくはないんだけどな・・・」

「出てくるって、実験の邪魔をした報復ですか?」

「いや、そんな怒りで動くような人じゃないよ賢者ルミナは。多分だけど、オレ達に興味を持ったとかそんな理由で来るんじゃないかな?」

 本当に自分勝手に生きている人間なんだな、賢者ルミナは。

「どんな顔してるのかやっと見れるのか」

「うん、そうだね。エルフだから、そこそこ容姿は良いと思うんだけど、どうかな☆」

「う~ん、確かに美形だ。何処か幼さを感じる顔立ちが父性をこれまた刺激する。こんな顔で世界を終わらせようとしてたのか・・・主任はどう思います?」

「うん、死ね」

 間髪入れずに主任の剣が目の前に現れた謎のエルフの女性をぶった斬る。俺も、あまりに自然な会話の入り方をしてきたので、油断していた。

「おおっ、怖ッ。流石、ザナ家の人間。判断と反射神経が良い。お前に身体能力も戦闘能力も最高。今、人類で最も強いって言われても何らおかしくないね♪」

「現れたな、賢者ルミナ。まさか、オレ達の前に現れるとは思わなかったよ・・・」

「あはっ☆別に君達だけじゃないよ~。他の人の前にも姿を出してるよ。まあ、全部コピーだし、私もコピーだけど」

 コピー?クローンなのか?ありえないように思えてしまうが、魔物を遺伝子改造できる技術があるなら、十分に可能なはずだ。

「君ィ~中々察しが良いね~。そう、私は賢者ルミナのクローン体。ザナ風に言うならホムンクルス!だから、本物じゃないんだ!」

「なるほど、どうりで魔力が賢者にしては低いわけだ。魔力までコピーできなかったみたいだな」

「う~ん、そうみたい☆天才をぽんぽん作れたら、良いんだけどね!世界はそれを許してくれないみたい」

 クローンを作っている葛藤はなく、自分がオリジナルのコピーだという劣等感も全く抱いていない笑顔。倫理観の欠如としか言いようがない。

「世界を動かしてきたのは、君達が定義する人間からはかけ離れていた。私の考え方を聞いてそんな事思うのは酷くないかい?」

「貴女はそれが欠如しすぎだ。それで、何故我々の前に姿を現したんです?やはり、興味ですか?」

「正解せいかい大せいかーい!私の実験の素晴らしさが分からない人達ってどんな顔してるんだろう?って気になっちゃった」

 新しいお店ができたから、来てみたみたいなノリなのか。天才なのかバカなのかよく分からない。

「それで?感想は?」

「生きるのに必死だね☆」

「そりゃどうもっ!!」

「おっと!私を殺してもオリジナルがいるから意味ないよ?それでも、攻撃してくるのは感情によるもの?」

「よく分かってんじゃねえか。こっちは、門番としての仕事が忙しいってのに、余計な仕事増やしやがって」

「それはごめんなさいっ!でも、どうしてもやりたかったの!だから、許して♡」

 声を高くして、わざとらしい上目遣いをしてくる。正直あざといのは嫌いなので、若干嫌悪感を抱く。

「321にもなる三十路が何やってんだ。歳を考えろ歳を」

「歳なんて、数字に過ぎないのに・・・ま、いっか!とにかく、使を邪魔して本当に申し訳ないけど、どうしても、ザナとリオを融合したいの!ダメかな?」

 まるで、ゲームをねだる子供のようだ。当然、首は縦に振った。

「なんでかなーきっと、面白い事が起きるはずなのに・・・」

「貴女にとって、面白くても我々にとっては面白くないからです。貴女の行っている行動は、世界の破壊行為。決して許される事ではありません」

「許されないか~。それじゃあ、敵対しかないみたいだね~」

 話し合いは無駄以外の何物でもなかったようだ。まるで、話が通じない。思考回路がまるで違う。宇宙人と話しているみたいだ。

「そうそう!あと、余談なんだけど、私が今してるのは!」

「「・・・は?」」

 今更何を言っているんだこの人は。言い訳か?いや、違うな。悪いと思っていないのに言い訳なんてするはずがない。

「厳密に言うと、私がしてるのは。ザナっていう星とリオっていうの星を合体しようとしてるだけ。だから、世界を破壊してるわけじゃないんだ」

 世界融合じゃなくて、惑星融合?ザナは異世界ではなくて、別の惑星だったのか?常識が覆る情報に頭が混乱をしている。

「私もつい最近知ったんだ!世界同士を繋いだんじゃなくて、惑星同士を繋いだんだって。そもそもおかしな話だったんだよ!人間如きが、世界宇宙っていう1%すら把握できないモノ同士を繋げるなんてさ!」

「・・・つまりこう言いたいんだな?だだっ広い世界に数えきれない程ある惑星の1つや2つ実験に使っても構わない、と」

「うん!そう言う事!ダメかな?」

「ダメに決まってるだろうがっ!」

 また、主任が殺す気で剣を振るうが、ルミナコピーは軽やかに避ける。

「怖い怖い。血の気の多い人は嫌いだなー」

「そりゃ良いね。両思いだ。互いに嫌いあってる」

「えー!ほんとー?奇遇だねー!!じゃあ、私を殺してみなー」

 ルミナコピーは煽るだけ煽ると、アイスクリームのようにドロドロに溶けて、死んでしまった。骨も、砂のように砕けて跡形もなくなってしまう。

 あまりにも幻想的な死に方だった上に先程まで陽気に話していた為、全然悲壮感がらないのがかえって不気味だ。

「どうします?俺ら、賢者ルミナの住処なんて全然知りませんよ。遺体を破壊したおかげで融合まで猶予ができたからと言って流石に今から探すのは無茶が過ぎるのでは?」

「いや、そんな事ないさ。翡翠、19体目の遺体が破壊されたのはいつか知ってるかな?」

「いえ、その時は父さんと稽古していたので全く」

「今から26時間前。つまり、今まで1日以上暇だったわけだ。君だったら、どうする?休む?」

「・・・居場所を特定します」

「せいかーい!既に同盟騎士団が居場所の特定を済ませてる。さっさと向かってルミナをぶっ殺しに行こー!!」

 いつものテンションに戻った主任だが瞳はメラメラと炎のように燃えていた。
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