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最終章 探究者と門番
19話 託された形見
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「あ~楽しかった・・・」
「あんなに激しい運転だったのに、車体に傷一つついてないのなんで・・・?」
ゴツいジープだからだろうか?とにかく、無事に門に着けて良かった。
「あれ?皆は?」
「北海道と福岡に遺体が出現したからその対処に向かってる。今から、ザナに向かうのはオレと翡翠だけ。それとも、オレじゃ力不足かな?」
「とんでもない!さあ、行きましょう」
内容は知らされていないが、今の状況からして、遺体の破壊だろう。謎なのが、なぜ俺にやらせる必要があるのか?だ。
「ザナの方の門番にも話は通してあるから、行こっか!」
「はい!」
今度は、足ではなく、車でザナに入る。既にザナ側の門前も、リオに転送されてしまっているのだろう。大小異なる貴方があちこちに空いている。
「やばいでしょ?これがザナのあちこちで起きてるから」
「リオに転送される時は対象の地面が光るんでしたっけ?そのまま居続けたら土地と一緒に転送されるんですよね?」
「うん!何処に転送されるか分からないから気をつけて!」
死ぬことはないと、分かっていても、やはり怖いな・・・と思った矢先に地面が光り始めた。
「翡翠!スピードあげるよ!シートベルト締めて!!」
「は、はい!」
今度はしっかりシートベルトを締めて、走り出す。様々な地形の集合地点の門付近を抜け出し、砂漠を走り出す。馬力が強いからなのか、砂にハマることなく、進む。
20分ほど走行しただろうか。主任は突然スピードをガクンと落として安全運転を始めた。魔物がいない安全地帯に突入したのだろうか。
足元から、細長い袋に入った棒状の物を俺に渡してきた。
「それ、上の方からの君へのプレゼント。本当はちゃんと渡したかったらしいんだけど、そんな場合じゃなくなったみたいだからオレから渡すね」
「なんですか?これ・・・って刀?」
握った瞬間理解した。これは、刀だ。鍔もしっかりとある。よく見たら、入れてある袋もよく見たら刀袋だ。
「開けてみ?」
主任に促されて蝶結びを解いて、刀の姿をあらわにする。柄紐は暗い赤色、鍔は彼岸花をデザインに落とし込んでいる。肝心の刃だが、木目のような模様の鋼が使われていた。
世界史が好きだった俺は、鋼の木目模様を知っている。古代インドで開発され、現在ではその技術が失われ、完全再現が不可能だと言われた金属ダマスカス鋼じゃないか!
「これ、本物ですか?」
「ああ、本物のウーツ鋼だよ。間違いない」
ウーツ鋼とは、ダマスカス鋼の別称である。
「この金属はザナで作られた物だ。リオにも同じ物があったらしいね~。たまたまかな?それとも、しっかりと理由があるのかな?」
「ザナとリオは所々共通してる所もありますし、偶然じゃないですかね。ダマスカス鋼は、ザナでは結構一般的な金属なんですか?」
「うんにゃ、かなり貴重。オレも鍛治には詳しくないから説明はできないけど。作れる人が少ないからその分量も少ないらしい」
「そんな良い物もらって良いんですか!?」
「うん。だって、あの紫陽花石の刀が折れちゃって以降、ずっと支給品の刀使ってたんでしょ?あの、最低限の性能しかないやつ」
前の愛刀だった紫陽花を打ってくれた職人さんにお願いしようとしたのだが、タイミングが悪い事に、腕を骨折。
その為、折れてから3週間以上経つが、支給品の安い刀を使用している。数打ちされた無銘の刀。安いが、折れやすく作りが荒い。
既に4本は折ってしまっている。今使っている支給品の刀も刃毀れしている。刀鍛治も涙目だろう。
主任が、俺に気を使ってくれたようにも見えるが、門番を管理する上の人達が、俺に前から渡そうとしていたように見える。
「その刀は翡翠のお父さん、焼太さんがオーダーメイドで作った刀らしいよ。使う前に死んじゃったんだけど」
なるほど。自分で言うのもなんだが、確かにこの刀は俺が持っておくべきかもしれない。
「銘は・・・〈隼人一陣〉か。良い刀な上に名前のセンスが高い」
「そうなの?」
「はい!最高です!」
「そっか・・・そりゃあ、きっと翡翠のお父さんも喜ぶね~」
「はい!」
「大事な物も渡したところで、スピード戻すよー!!」
「えっ?ちょっ!待っ─────」
「ひゃっほーーーい!!」
主任は待ってはくれなかった。スピードメーターを見たけれども、時速150kmは出ていた。ザナにも速度制限を設けた方が良いと心の底から思った。
「あんなに激しい運転だったのに、車体に傷一つついてないのなんで・・・?」
ゴツいジープだからだろうか?とにかく、無事に門に着けて良かった。
「あれ?皆は?」
「北海道と福岡に遺体が出現したからその対処に向かってる。今から、ザナに向かうのはオレと翡翠だけ。それとも、オレじゃ力不足かな?」
「とんでもない!さあ、行きましょう」
内容は知らされていないが、今の状況からして、遺体の破壊だろう。謎なのが、なぜ俺にやらせる必要があるのか?だ。
「ザナの方の門番にも話は通してあるから、行こっか!」
「はい!」
今度は、足ではなく、車でザナに入る。既にザナ側の門前も、リオに転送されてしまっているのだろう。大小異なる貴方があちこちに空いている。
「やばいでしょ?これがザナのあちこちで起きてるから」
「リオに転送される時は対象の地面が光るんでしたっけ?そのまま居続けたら土地と一緒に転送されるんですよね?」
「うん!何処に転送されるか分からないから気をつけて!」
死ぬことはないと、分かっていても、やはり怖いな・・・と思った矢先に地面が光り始めた。
「翡翠!スピードあげるよ!シートベルト締めて!!」
「は、はい!」
今度はしっかりシートベルトを締めて、走り出す。様々な地形の集合地点の門付近を抜け出し、砂漠を走り出す。馬力が強いからなのか、砂にハマることなく、進む。
20分ほど走行しただろうか。主任は突然スピードをガクンと落として安全運転を始めた。魔物がいない安全地帯に突入したのだろうか。
足元から、細長い袋に入った棒状の物を俺に渡してきた。
「それ、上の方からの君へのプレゼント。本当はちゃんと渡したかったらしいんだけど、そんな場合じゃなくなったみたいだからオレから渡すね」
「なんですか?これ・・・って刀?」
握った瞬間理解した。これは、刀だ。鍔もしっかりとある。よく見たら、入れてある袋もよく見たら刀袋だ。
「開けてみ?」
主任に促されて蝶結びを解いて、刀の姿をあらわにする。柄紐は暗い赤色、鍔は彼岸花をデザインに落とし込んでいる。肝心の刃だが、木目のような模様の鋼が使われていた。
世界史が好きだった俺は、鋼の木目模様を知っている。古代インドで開発され、現在ではその技術が失われ、完全再現が不可能だと言われた金属ダマスカス鋼じゃないか!
「これ、本物ですか?」
「ああ、本物のウーツ鋼だよ。間違いない」
ウーツ鋼とは、ダマスカス鋼の別称である。
「この金属はザナで作られた物だ。リオにも同じ物があったらしいね~。たまたまかな?それとも、しっかりと理由があるのかな?」
「ザナとリオは所々共通してる所もありますし、偶然じゃないですかね。ダマスカス鋼は、ザナでは結構一般的な金属なんですか?」
「うんにゃ、かなり貴重。オレも鍛治には詳しくないから説明はできないけど。作れる人が少ないからその分量も少ないらしい」
「そんな良い物もらって良いんですか!?」
「うん。だって、あの紫陽花石の刀が折れちゃって以降、ずっと支給品の刀使ってたんでしょ?あの、最低限の性能しかないやつ」
前の愛刀だった紫陽花を打ってくれた職人さんにお願いしようとしたのだが、タイミングが悪い事に、腕を骨折。
その為、折れてから3週間以上経つが、支給品の安い刀を使用している。数打ちされた無銘の刀。安いが、折れやすく作りが荒い。
既に4本は折ってしまっている。今使っている支給品の刀も刃毀れしている。刀鍛治も涙目だろう。
主任が、俺に気を使ってくれたようにも見えるが、門番を管理する上の人達が、俺に前から渡そうとしていたように見える。
「その刀は翡翠のお父さん、焼太さんがオーダーメイドで作った刀らしいよ。使う前に死んじゃったんだけど」
なるほど。自分で言うのもなんだが、確かにこの刀は俺が持っておくべきかもしれない。
「銘は・・・〈隼人一陣〉か。良い刀な上に名前のセンスが高い」
「そうなの?」
「はい!最高です!」
「そっか・・・そりゃあ、きっと翡翠のお父さんも喜ぶね~」
「はい!」
「大事な物も渡したところで、スピード戻すよー!!」
「えっ?ちょっ!待っ─────」
「ひゃっほーーーい!!」
主任は待ってはくれなかった。スピードメーターを見たけれども、時速150kmは出ていた。ザナにも速度制限を設けた方が良いと心の底から思った。
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