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3章 異世界旅行録

プロローグ

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 悲劇は連鎖し、物語の終わりまで続く事があるが、全てがそうとは限らない。

 ふとしたタイミングで悲劇が終わり、幸せが訪れる事はザラにある。

 兄弟から存在を疎まれ、存在を亡き者にされたナチュレ王国の王女ニーナがその例に当てはまる。

 権力欲しさに国民が知らないところで行方不明にされ、ロット2世が雇った傭兵に殺されそうになった彼女は、偶然・・・否、運命的に1人の男と出会い、助けられた。

 男の名前は森山焼太しょうた。彼との出会いが、彼女の悲劇の連鎖を止めたのだ。

 2人は惹かれ合い、やがて愛し合うようになり、その結果が生まれた。

 生まれた結果息子に付けた名前は翡翠。焼太が考案した名前である。

 息子の誕生により、2人の未来は明るくなる・・・事は無かった。

 悲劇が連鎖するとは限らないと同様に、幸福が連鎖するとは限らない。むしろ、幸せが連鎖する事の方が珍しい。

 悲劇の中で、良い事が起きるから幸せと名付けたのだから。

 彼女は魔術師達によって、人柱に選ばれ、攫われた。何も説明されずに焼太の元から連れ去られたのだ。

 焼太は武器を手に取り、追いかけた。死に物狂いで追いかけて、居場所を特定した。

 だが、魔術師達の方が一枚上手だった。焼太は魔術師達が用意していた対抗策に敗れ、死亡。ニーナは人柱となった。

 しかし、2人の残した愛は残った。ニーナは攫われる事自体は予期しており、攫われる前日に生まれたばかりの赤ん坊を孤児院を経営している知り合いに預けたのだ。

 その判断によって、翡翠は生き残り、父と同じ姓である森山を継いで、森山翡翠となった。

 森山翡翠は、両親の愛に応えるようにすくすくと成長していき、成人を迎え、父と同じ門番の職に就いた。

 彼は愛してくれた両親の顔を知らない。何をしていたのか。どういう経緯で出会ったのか。院長は何も教えてはくれなかった。

 もう一生知る事はできないかと思われた時、ニーナの兄ロット2世に仕えていたシャイ・マスカッツが自分の出自について教えてくれた。

 たった1つの情報だが、大きな情報だ。とても大きな収穫を思わぬところで得た翡翠は、全てを知るべく動き出した。
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