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2章 亡命者は魔王の娘!?
30話 目覚め
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★
・・・。
・・・・。
・・・・・。
・・・・・・。
「ん・・・」
長い眠りから覚醒し、目蓋を開ける。寝ていたにも関わらず、部屋は白い光の照明でとても明るく、目を開けるのに苦戦する。
それだけじゃない。身動きが取れない。砂浜で首以外埋められた時とは非にならない身動きの取れなさに目が覚めていくにつれて焦る。
目だけを動かし確認すると、俺は拘束されていた。真っ白な部屋の真っ白なベッドで少し血が滲んだ包帯で肉体を拘束されていた。
「びょう、いん・・・?」
俺がいる場所は自宅でも無ければ、実家でもない。病院のベッドの上だ。
寝ぼけから完全に覚めた頭で何故病院にいるのか考える。
血が滲んだ包帯。特に左肩が多い。
「・・・思い出した。シャイ・マスカッツ団長だ」
俺は、キャンベル騎士団団長シャイ・マスカッツとのタイマンで負け、左肩から胴体を思い切り斬られたんだ。
愛刀を折ってでも勝とうとした結果がこれ。酷すぎて自己嫌悪に陥りそうだ。
ゴトンッ!
重たい物が床に落ちる音が近くで聞こえる。床に落ちた物はゴロゴロと床を転がり、俺が寝ているベッドの足にぶつかって止まる。
床に落ちた物の正体は、コーラのアルミ缶。まだ未開封の新品の缶だ。
缶が転がってきた方向を向くと、鳩が豆鉄砲を喰らったかのように驚くモネさんだった。
「ヒスイ・・・アンタいつ起きたの?」
「ついさっき。モネさんは?」
モネさんが一番最初にシャイさんに腹パンを喰らい、ノックダウンしていた。俺と違い、打撃だが、内臓に響く一撃だったはずだ。
「2日と・・・5時間前かな?」
「そっか・・・・・え?2日?2日って言った今!?」
「言った。アンタ、2日も寝てたんだよ。まあ、あんな傷じゃ2日寝るのも分かるけどね。リリックに謝っときな」
「リリック・・・そうだリリックは!?」
上半身だけ起き上がり、辺りを見渡そうと試みるが、何故か起き上がれない。身動きが取れないからだろうか?否、何かが上に乗っかっている。感覚が鈍っていたので、全然気づかなかったが、俺の体の上に掛け布団だけでなく、重たいナニカが乗っている。
温かくて、重たい。だけど、安心感を感じられる。そして、一定のリズムで膨張し、縮小している。
膨張と縮小を繰り返している理由は恐らく呼吸。モネさんに頼んで掛け布団を引っぺがしてみると、俺の体の上に乗っかっていたのは、ピンクのもじゃもじゃ。すやすやと寝息を立てるリリックだった。
「アンタが病院に意識不明で担がれてからずっと、泣いてたんだよ?自分のせいだって。相当精神的に追い詰められてるから慰めてあげな」
「そっか・・・分かった」
「それじゃ、アタシは帰るよ」
「分かった・・・・あ!そういえば、2日間、食事はどうしたの?それと門は大丈夫?」
「飯は牛丼とかラーメンで済ませてるから安心しなさい。あと、門はさぼり気味なザナの門番のケツをひっぱたいて主任が頑張ってるから」
「それは良かった」
「それじゃ、もう本当に帰るわよ。昼から何も食べてないからお腹空いちゃって仕方ないからね。早く怪我治して復帰しなさいよ」
「勿論。退院したらすき焼きしよう」
「何その名前からして美味しそうな食べ物。じゃあ、楽しみに待ってるわね」
床に転がっていたコーラの缶を俺の寝ているベッドの横にあるテーブルに置くと、モネさんは優しい笑みを浮かべながら部屋を去っていった。
「んん・・・寒い」
掛け布団を剥がされて寒かったのだろう。リリックが身震いしながら目覚める。
ゆっくりと目が開いていき、白い瞳が俺を捉える。しばらく見つめた後、リリックは大きく両腕を広げ、俺を抱き締めた。
「ヒスイ・・・ヒスイだあぁぁ・・・ヒスイの目が覚めたあぁぁぁ・・・!!良かった!ほ゛ん゛どう゛に゛よ゛がっだあ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
病院?静かにしろ?知った事かと言わんばかりにリリックは泣き、翡翠の目覚めに喜ぶ。
黒い目からあふれ出した透明でしょっぱい液体が、翡翠の患者衣を濡らす。
彼女が泣き止むまでの数分間、翡翠は頭を撫でるのを止めなかった。
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長い眠りから覚醒し、目蓋を開ける。寝ていたにも関わらず、部屋は白い光の照明でとても明るく、目を開けるのに苦戦する。
それだけじゃない。身動きが取れない。砂浜で首以外埋められた時とは非にならない身動きの取れなさに目が覚めていくにつれて焦る。
目だけを動かし確認すると、俺は拘束されていた。真っ白な部屋の真っ白なベッドで少し血が滲んだ包帯で肉体を拘束されていた。
「びょう、いん・・・?」
俺がいる場所は自宅でも無ければ、実家でもない。病院のベッドの上だ。
寝ぼけから完全に覚めた頭で何故病院にいるのか考える。
血が滲んだ包帯。特に左肩が多い。
「・・・思い出した。シャイ・マスカッツ団長だ」
俺は、キャンベル騎士団団長シャイ・マスカッツとのタイマンで負け、左肩から胴体を思い切り斬られたんだ。
愛刀を折ってでも勝とうとした結果がこれ。酷すぎて自己嫌悪に陥りそうだ。
ゴトンッ!
重たい物が床に落ちる音が近くで聞こえる。床に落ちた物はゴロゴロと床を転がり、俺が寝ているベッドの足にぶつかって止まる。
床に落ちた物の正体は、コーラのアルミ缶。まだ未開封の新品の缶だ。
缶が転がってきた方向を向くと、鳩が豆鉄砲を喰らったかのように驚くモネさんだった。
「ヒスイ・・・アンタいつ起きたの?」
「ついさっき。モネさんは?」
モネさんが一番最初にシャイさんに腹パンを喰らい、ノックダウンしていた。俺と違い、打撃だが、内臓に響く一撃だったはずだ。
「2日と・・・5時間前かな?」
「そっか・・・・・え?2日?2日って言った今!?」
「言った。アンタ、2日も寝てたんだよ。まあ、あんな傷じゃ2日寝るのも分かるけどね。リリックに謝っときな」
「リリック・・・そうだリリックは!?」
上半身だけ起き上がり、辺りを見渡そうと試みるが、何故か起き上がれない。身動きが取れないからだろうか?否、何かが上に乗っかっている。感覚が鈍っていたので、全然気づかなかったが、俺の体の上に掛け布団だけでなく、重たいナニカが乗っている。
温かくて、重たい。だけど、安心感を感じられる。そして、一定のリズムで膨張し、縮小している。
膨張と縮小を繰り返している理由は恐らく呼吸。モネさんに頼んで掛け布団を引っぺがしてみると、俺の体の上に乗っかっていたのは、ピンクのもじゃもじゃ。すやすやと寝息を立てるリリックだった。
「アンタが病院に意識不明で担がれてからずっと、泣いてたんだよ?自分のせいだって。相当精神的に追い詰められてるから慰めてあげな」
「そっか・・・分かった」
「それじゃ、アタシは帰るよ」
「分かった・・・・あ!そういえば、2日間、食事はどうしたの?それと門は大丈夫?」
「飯は牛丼とかラーメンで済ませてるから安心しなさい。あと、門はさぼり気味なザナの門番のケツをひっぱたいて主任が頑張ってるから」
「それは良かった」
「それじゃ、もう本当に帰るわよ。昼から何も食べてないからお腹空いちゃって仕方ないからね。早く怪我治して復帰しなさいよ」
「勿論。退院したらすき焼きしよう」
「何その名前からして美味しそうな食べ物。じゃあ、楽しみに待ってるわね」
床に転がっていたコーラの缶を俺の寝ているベッドの横にあるテーブルに置くと、モネさんは優しい笑みを浮かべながら部屋を去っていった。
「んん・・・寒い」
掛け布団を剥がされて寒かったのだろう。リリックが身震いしながら目覚める。
ゆっくりと目が開いていき、白い瞳が俺を捉える。しばらく見つめた後、リリックは大きく両腕を広げ、俺を抱き締めた。
「ヒスイ・・・ヒスイだあぁぁ・・・ヒスイの目が覚めたあぁぁぁ・・・!!良かった!ほ゛ん゛どう゛に゛よ゛がっだあ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
病院?静かにしろ?知った事かと言わんばかりにリリックは泣き、翡翠の目覚めに喜ぶ。
黒い目からあふれ出した透明でしょっぱい液体が、翡翠の患者衣を濡らす。
彼女が泣き止むまでの数分間、翡翠は頭を撫でるのを止めなかった。
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