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2章 亡命者は魔王の娘!?

12話 彼女にとってスーパーは宝の宝庫だった

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「どう?その服。着心地とかは大丈夫?」

「うん!ブカブカだし、ちょっと肌触りがざらざらしてるけど、さっきのボロボロの服よりも1000倍マシだし、動きやすい!」

 リリックの身長は凡そ160センチ程。176センチの俺と比べたらそこそこ身長差がある。なので、必然的に服がブカブカになってしまうのだが、萌え袖って事で良いだろう。

 彼女に貸し与えたのは赤色のパーカーと、半ズボン。ジーンズとかを貸してあげたかったが、丈がまるであっていないので、半ズボンで妥協してもらった。動きやすいと言って気に入ってくれたので良かった。

 スキップする無邪気なリリックをしっかりと見守りながら5分。あっと言う間にスーパーに到着した。

 主婦達の夕飯の買い出し時間もすっかり過ぎ、いるのは仕事帰りのサラリーマンやOLばかり。リリックの肌色は赤で目立ちやすいので、人が少なくて好都合だ。

 王族故の癖か、それとも魔族という事を気にしてか、彼女は自主的にパーカーのフードを被り、特徴的な頭部を隠した。

 フードのせいですっかり目元が隠れてしまい、表情が分からなくなってしまった・・・かのように思えた。

「うわぁぁぁぁぁぁ!!何ココ!?凄い凄い!すっごーい!」

 彼女の無邪気な白い瞳はフードの暗闇の中でも夜空に光る星のように輝いていた。

 まだまだ技術が未発達かつ、品種改良などの農業の進化がまだまだ予知のあるザナではまずお目にかかるのが難しい野菜の種類と量。

 冷凍技術で新鮮な状態が長く維持されている肉類。

 味や種類が豊富すぎて選ぶにも選びきれないお菓子類。

 様々な物や環境が足りていないザナから来た彼女からしたら、スーパーマーケットは近場にある小さな天国そのものだ。

「こらこら、リリック。他にもお客さんがいるから静かに」

「あら、ごめんなさい。わたしったらつい・・・」

 自分の子供っぽさに恥じらいを覚えるリリック。育ちの良さが垣間見える。

「ねえねえヒスイ!1つだけ!1つだけ良いからさ!お菓子買っても良いかな?良いよね?」

「ああ、全然良いよ。ただし、食べるのは夕食後にしなさい」

「はぁーい!それじゃあ、あのスナック菓子って所から見つけてくるね!」

 日本語を相当マスターしているようで、リリックは吊るされていた看板を見て、お菓子を選び始めた。

 目を真珠のように光らせて、厳選する。自ら1つだけで良いと言ってくるのは驚いた。しっかり教育が行き渡っている。

 魔族の王族だと言うからどんな傍若無人な人が来るのかと身構えていた自分がバカに思える。魔族の事は千年戦争でしか知識が無かったので、仕方ないっちゃ仕方ないが、失礼なのは間違いない。気を付けよう。

「さぁて、何を作ろうかな」

 魔王族が、リオに来てまず最初に食べるに相応しい食べ物とは一体どんなものだろう?スーパーで買える物は限られているので一般的な料理になってしまうが、美味しい物はやはり食べて貰いたい。

 今日は人参とジャガイモが安い。なら、を食べさせてあげよう。モネも大好きだし、皆幸せだ。

「今日はカレーで決まりっ!」

 人参とジャガイモの他に、玉ねぎと豚肉。そして、肝心のカレーのルーを入れ。菓子コーナーで待つリリックを迎えに行く。

 彼女が選んだお菓子はサワークリームオニオン味のポテトチップス。最初からそのお菓子を選ぶとは、相当の目利きだな。
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