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1章 就職!異世界の門日本支部!

14話 仕事の後の焼肉

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「───はい、これにて審査は終了です。リオでの生活をどうぞお楽しみ下さいませ」

 今日最後の審査が終わる。ケルービ以降、大きな問題がなくて良かった。まあ、蛇の魔物メドューサヘアーが乱入した時はかなり焦ったが、ケルービ程の問題ではなかった。

「いやいや、問題でしょ。実際にお客さん1人、石化させられてたし」

「その後元に戻ったから問題ないと同じよ。結果よければ全て良しってやつ」

「おっ、詳しいね。それも日本語勉強の成果かな?」

「まあ、そんなところ。ザナにも似たような言葉があるから覚えやすいのよ」

「前門のヘルファイガー後門のアイスウルフとかね」

 似てるというか、ほぼ同じじゃね?その諺。使用されてる動物が魔物になっただけじゃね?

「おいっす!お疲れさん!!」

「「お疲れ様です!」」「お疲れ様です・・・」

「今日は色々と大変だったねー!まだ、入社してから1ヶ月も経ってない新人門番とは思えない働きぶりだったよー!お陰でオレもゆっくりとサボれた!」

「ボカす努力して下さいよ」

「ごめんごめん!・・・ところで、3人共これから予定とかある?」

「飯食って寝ます!」

「もやし食って寝ます!」

「・・・特に何も」

「そっか!そっか!シャープはマジで節約を極めすぎだから、もう少し食べることをオレはおすすめするぞ!というわけで!今から焼肉に行きたいと思いまーす!!」

「焼肉!?」

「もしかして、それって・・・」

「主任の奢りですよね?」

「割り勘なんて言う上司がいると思う?」

 一度は体験したかったことその1。上司の奢りで焼肉。まさか、社会人2日目でそれが出来るだなんて思わなかった。

 肉が大好きな俺は、躊躇いなく手をあげた。シャープ君も手をあげた。モネさんも顔を赤らめながらも手をあげた。

「じゃあ、行くか!!チェーン店だけど良い?」

「肉が食えるならどこでも!」

「そろそろタンパク質を補給しないといけなかったんで助かります!!」

「奢られる側なんで文句は何も言いません。ただ、コイツ翡翠の隣の席にはしないでください。またくだらない喧嘩をするかもしれないんで」

「まあ、それは店に行ってから考えましょうや!」

 時刻は18時59分から、19時へと進む。勤務終了のチャイムが鳴ると同時に夜勤の先輩達が到着。朝会った時は、疲労困憊で、剣を杖にしていたが、今は元通りの元気な状態に戻っていた。

「よぉ!若いの!お疲れさん!それに主任もお疲れさん!」

「おう、お疲れ!これから皆で焼肉行くんだけど、夜勤組も来るか!?」

「喧嘩なら、いつでも買いますよ?主任。私達、喧嘩大好きなので♡」

 夜勤組の人達は少し血の気が多い。横柄な態度を取るザナ人を半殺しにした人もいると言う。故に防衛のみが仕事の夜勤に回されたらしい。本人たちも快諾したそうな。

「それじゃ、翡翠君。また会いましょうんね♡」

「はい!お疲れ様です!!」

 夜勤組の女性先輩に執拗なボディタッチをされるが、華麗に交わして事務室を出る。逃げられた瞬間、彼女が低く舌打ちしたが、焼肉の事で頭がいっぱいになっている翡翠には一ミリも耳に入っていなかった。

「翡翠君、君結構モテてたりした?」

「えっ?モテてたかって言われるとちょっと微妙なラインですね。高校生の時のバイト先の女店長にセクハラと援助交際を申し込まれた事があるぐらいですかね?」

「そっか・・・気を付けてね」

「?あ、はい・・・」

 どうやら、主任は気づいていた模様。



 異門町の建物は高頻度で魔物に壊される事があるので、飲食店だけでなく、生活に必要な店が非常に少ない。スーパーは1店舗しか無いし、ラーメン屋は3店舗しかない。焼肉屋も同様に1店舗しか存在しない。

 なので、異門町で焼肉を食べるとなったら、焼肉チェーン店の『ミノタウロスの角』しかないわけだ。

「というわけで!君達のこれからの成功を祝って~・・・」

「「「かんぱーい!!」」」「・・・カンパイ」

 主任はキンキンに冷えたビール。新人門番3人は炭酸飲料で乾杯し、飲み干す。

「っっくぅ~~!たまんねっ!これだけの為に魔物と戦ってるって言っても過言じゃない!!」

「僕も早く飲みたいな~お酒。あ、カルビ焼けた」

「俺の友達曰く、酒は未成年でも勢いで買えるらしいよ。シャープ君だったら、行けるんじゃない?あと、カルビちょうだい!」

「なに、しれっと犯罪教唆してんの!同期から犯罪者が出たらアタシの評価にも響きかねないんだから・・・あと、それはアタシのカルビよ」

 『ミノタウロスの角』は時間制限ありの食べ放題の店。3人は英気を養うかのように肉にがっつき、白飯を口の中に放り込む。

 飯が美味いと話が進む。肉を食べ進めながら4人は自分の身の上話に花を咲かせ始める。

「僕の村さ、めっちゃ貧乏でさ!最近は芋すら取れなくなっちゃったんだよ~!」

「土地が枯れちゃったのか・・・それでシャープ君は出稼ぎに門番をやってる?」

「うん、そう!モネちゃんもそんな感じの理由だったっしょ?」

「そうって言ってんでしょ、何回も言わせないで・・・ってか、アンタが門番になった理由って何?世界の平和を守る為~~・・・とかじゃないでしょ?」

「何で分かったの?」

「平和ボケはしてるけど、結構現実主義者だと思ったから。第一、そんな間抜けが門番になれるはずが無いしね」

 門番になってはっきりと分かった事が1つある。門番になれた人のほとんどが面接時に建前の理由ではなく、自分の奥底の欲望を言っている。面接官達は受験者の善性・人間性を見ているのではなく、我の強さを見ているのだろうか。

「2人よりかは規模は小さいけど、俺もそんな感じ。家族を援助する為に門番やってる感じ」

「ふーーん、別に門番じゃなくても稼げる職業はあったんじゃないの?リオなら」

「どうだろうね・・・俺、勉強苦手だったから」

 俺に他の道はあったのだろうか?門番以外に考えず、突っ走って来たから分からない。勉強が苦手とは言ったが、ただ単に避けてきただけだったし、もしかしたら苦手なだけで勉強は得意だったのかもしれないが、門番となった今では割とどうでも良い事。

 それに、勉強にはお金がかかる。やはり、門番で正解なのだろう。

「主任はどういった目的で門番になったんです~?」

「ん~~・・・内緒」

「ズルいですよ~~!僕達は言ったのに~~!」

「Hahaha!義務や強制じゃなきゃオレは口を割らんよ~~」

 そういえば、主任は門番になった理由は愚か、名前すら知らない。フレンドリーな態度のせいで今まで全く気にしていなかった。しかし、門番になった理由を教えてくれない以上、名前も教えてはくれないだろう。
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