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終章 3年後の平和

333話 悲惨な過去、引っ張り合戦

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 2つの国の命運が決まる最終決戦の場で明かされる衝撃の事実に驚きは隠せないものの、力を緩める事は許されない。手の皮が引きちぎれんばかりに引っ張って坊ちゃんを引っこ抜こうと試みる。

 アダムさんは風の刃の魔法で俺達を守りながら、自分の境遇と今相手している坊ちゃんについて話してくれた。

「わたしの父はクズである以上に、どんな女性にも手を出すとんでもない絶倫男でした。わたしの母もほぼ強姦にちかい形でわたしを妊娠させられました」

 当然だが、その頃はシャックルの『オール・イン・ザ・ハンド』が発動しており、ベルム族は迫害されていた。にも拘わらず手を出すのだから相当の性欲モンスターだったのだろう。

「当然ですが、節操のない男が良い父親になれるはずがなく、父は5歳の頃からぱったりと姿を見せなくなりました。わたし的には暴力が無くなるのでありがたかったのですが、わたしとわたしの母に向けられた暴力性は代わりに彼・・・ブラッドとその母に向けられるようになったそうです」

 坊ちゃんの名前と、その背景がさらに明らかになっていく。

「わたしは彼とは15歳の時に出会いました。その時にはすでに彼は天涯孤独の身となっていました。彼の母は父からの過剰な暴力によって死亡。それによって怒りの沸点が頂点に達したブラッドは父を殺し、母の旧姓であるペピトーンを名乗るようになったらしいです」

 彼もまたルナと同じようにシャックルの血を継ぐ者のようだ。そして、魔法で世界を変えようとしたのにも過去に原因があるみたいだ。

 自分を植物に変える魔力と大地の栄養を魔力に変換して『オール・イン・ザ・ハンド』を維持しようとする頭脳を鑑みるとまあ、妥当だろう。

 となると、アダムさんはシャックルの血を継いでいないことになる。俺達を守ってくれる姿勢からして味方である事は変わりないみたいだ。

「ふんぬぅぅぅぅぅ!!ドゥーク!お前も手伝え!!身体能力を上げる魔法があるだろう!それを使え!!」

「無茶を言うな!魔力がもう無いんだ勘弁してくれ!!」

「なら、これを飲んで。マジックポーション」

「うぅ・・・苦手なんだよなこの薬」

 アダムオーナーから手渡されたマジックポーションを一気に飲み干す。すると、ドゥークから魔力が再び溢れ始める。

「マジックポーションは魔力の前借り!次魔力切れを起こしたらもう助けられないからな!!『ドラゴンズビート』!!」

 ドゥークの体にとてつもない力が宿る。魔力の縄を掴み、引っ張り合戦に参加する。

 怪力を得たドゥークの参加により、ブラッドの顔が穴から出てきた。しかし、まだ抜けそうにないようだ。
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