上 下
294 / 341
終章 3年後の平和

295話 支配からの解放

しおりを挟む
「アタシ、今まで何度も自分の意思で依頼とかで盗賊とかを殺してきた。その都度罪悪感に苛まれて眠れなくなってた。けど、どうしてだろう。ルナを殺しても全く心が痛まないや」

「山賊達は悪党であって悪人ではありません。その大半が生活で困窮していて仕方なくなった者ばかりで、根っからの悪人ではないんです。ですが、ルナは盗賊とは違って根本的な悪。だから心が痛まないんでしょうね」

 完全なる悪の人間に会うのは初めてかもしれない。俺もヘリナ先輩同様にまるで良心が痛まない。

「さて・・・そろそろ出てきて来いよ。お前らペピトーン一派があの程度の数ではない事ぐらい分かってるんだ」

 何処にいるか分からないペピトーン一派の魔法使いに向かって叫ぶ。すると、20人程が俺達の前に現れた。

「で、出てきたぞ・・・こ、これで殺さないでくれるか?」

「こんなにあっさり出てくるとは思わなかったし、俺は一言も出てきたら命は助けるとは言って無いぞ」

「そ、そんなぁ・・・!酷いじゃないか!無抵抗の人間を殺そうだなんて!!」

「ハハハッ!冗談だよ!・・・まだな」

「ヒィッ!!」

 さて、脅すのはここまでにしておいて、本題に入るとしよう。

「お前らがシャックルの『オール・イン・ザ・ハンド』で歴史と常識を変えてるのは俺達は把握済みだ。それを維持する為に複数人で魔法を維持しているのもな。ここまで言えば、頭の良いお前らなら俺が何を求めているのかわかるだろう?」

「『オール・イン・ザ・ハンド』を解除しろと言いたいんだろう?」

「話が分かるじゃないか。お前ら20人が戦いに参加していなかった事を鑑みるに、今の時間帯はお前達が『オール・イン・ザ・ハンド』を維持する担当だったんだろ?話してる今でも、魔力が減ってるのが分かるしな」

「・・・本当に良いのか?」

「ああ、これ以上見えない所で魔物に食われるなんて被害をだすわけには行かない。だからさっさと解除しろ」

「パニックが起きるぞ」

「人間関係の面でパニックは起きるだろうが、魔物に関しては問題ない。既に対処済みだ」

「・・・本当にそうかな?」

「??」

 含みのある言葉だ。何を考えているんだ?ただ、『オール・イン・ザ・ハンド』を解除して北東の地域の人達の認識を元に戻すだけだというのに・・・。

「知らないぞ。この国に混乱が訪れても、私達の責任ではないからな」

「いや、お前らの責任だろ。良いからさっさとやれ」

「分かった・・・フンッ」

 ペピトーン一派の魔法使い達の魔力の減少が止まる。北東の地域がペピトーン一派による支配から解放された瞬間だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

最強の回復魔法で、レベルアップ無双! 異常な速度でレベルアップで自由に冒険者をして、勇者よりも強くなります

おーちゃん
ファンタジー
俺は勇者パーティーに加入していて、勇者サリオス、大魔導士ジェンティル、剣士ムジカの3人パーティーの雑用係。雑用係で頑張る毎日であったものの、ある日勇者サリオスから殺されそうになる。俺を殺すのかよ!! もう役に立たないので、追放する気だったらしい。ダンジョンで殺される時に運良く命は助かる。ヒール魔法だけで冒険者として成り上がっていく。勇者サリオスに命を狙われつつも、生き延びていき、やがて俺のレベルは異常な速度で上がり、成長する。猫人、エルフ、ドワーフ族の女の子たちを仲間にしていきます。

異世界転生したので、のんびり冒険したい!

藤なごみ
ファンタジー
アラサーのサラリーマンのサトーは、仕事帰りに道端にいた白い子犬を撫でていた所、事故に巻き込まれてしまい死んでしまった。 実は神様の眷属だった白い子犬にサトーの魂を神様の所に連れて行かれた事により、現世からの輪廻から外れてしまう。 そこで神様からお詫びとして異世界転生を進められ、異世界で生きて行く事になる。 異世界で冒険者をする事になったサトーだか、冒険者登録する前に王族を助けた事により、本人の意図とは関係なく様々な事件に巻き込まれていく。 貴族のしがらみに加えて、異世界を股にかける犯罪組織にも顔を覚えられ、悪戦苦闘する日々。 ちょっとチート気味な仲間に囲まれながらも、チームの頭脳としてサトーは事件に立ち向かって行きます。 いつか訪れるだろうのんびりと冒険をする事が出来る日々を目指して! ……何時になったらのんびり冒険できるのかな? 小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しました(20220930)

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

社畜の俺の部屋にダンジョンの入り口が現れた!? ダンジョン配信で稼ぐのでブラック企業は辞めさせていただきます

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

処理中です...