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終章 3年後の平和

279話 憎い人

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 部屋に入ってきたのは、ヘリナ先輩だろうか?起きたらたまに入り込んでいる事があるので、あり得ない状況ではない。

 しかし、今日はルナが来ている。『オール・イン・ザ・ハンド』の影響を受けているならば、今頃ルナとぐっすり眠っているはずだ。

 では、ルイスだろうか?いや、絶対に違う。彼なら窓から入ってくるはずだし、入る前にちゃんと一言かノックくらいあるはずだ。

 そして、床が軋む音から察するに、少し背が高めの女性だと思われる。だとするなら、俺の部屋に入ってきたのはルナで間違いないだろう。

(しかし、どうして・・・)

 ジャキンッ!という金属製の刃物が擦れ合う音が聞こえてくる。経験が、この音は鞘からナイフを引き抜いた音だと教えてくれる。

(ああ、成る程そういう事か・・・)

 何かを理解したファルコはそのまま目を瞑りながら、無詠唱で魔法の盾を発動した。

 ガキンッ!!刃が盾にぶつかった音がする。冒険者時代、何度も聞いた音なので分かる。

 魔法は、便利ではあるが万能ではない。本来魔法の名前を呼ばなければいけないのに対し、俺は魔法名を呼ばなかった。これによって効果は大幅に軽減される。

 恐らく俺が今使った魔法の盾は使い古したお鍋の蓋並みだったろうが、そんな耐久性でも耐える事ができた。ルナ?は大した力は無いんだろう。

「俺が気づいていないとでも?」

「ッッ・・・!」

 ゆっくりと目を開き、上半身だけ立ち上がらせる。やはりと言うべきか、そこにいたのはルナだった。

「今日は眠れなくてな。音という音に敏感なんだよ」

「その目・・・覚悟を決めた時のような目。アンタ、気づいたね?」

「そう言うって事はルナ。アンタはもしかしなくてもペピトーン一派だな?」

「へぇ、そういう呼ばれ方してるんだ。シンプルで呼びやすいじゃない。で?一体いつから気づいてたの?」

「つい最近」

「そういう抽象的な答えじゃなくて、何日前とか聞いてるのよ!そして!一体誰がアンタを元に戻したのかもね!!」

「なおさら言うと思うか?このクソ隠キャラ性悪レズ女。魔法の影響下にあったとはいえ、お前の親戚だったって事実でパン10個分はゲロが吐けそうだ!」

「はっ!ウチだって嫌で仕方なかったわ。アンタみたいな図体のデカい男がウチのヘリナちゃんとイチャイチャラブラブな生活を送っている事実だけで全身に蕁麻疹が出てくる!!」

「勝手に出てろ。それがヘリナ先輩の望んだ世界なんだからな。アンタは入れてもらえただけでも感謝しな」

「アタシよりも会うのが早かった程度で威張りやがって・・・!もう、良い!ぶっ殺してあげる!!『アンフリー』!!」

 魔力で作られた鎖が体に絡みつく。鎖は力を強めていき、俺をベッドにくくりつけて、身動きを見事に封じてしまった。
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