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5章 紛い物の神
218話 記憶の穴ボコ
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「凄いな・・・想像してた通りだ」
若葉色の髪色に、とんがった耳を持つ美男美女が独特な格好で集落で過ごしている。中には、一糸も纏っていない全裸のエルフのいる。
「エルフで全裸って何か意味あるの?」
「ううん、あれはただの変態。自然に近づく為とか言ってるけど、ただみんなに裸を見られたいだけだよ」
「なんだ、ただの変態か・・・」
人間なら逮捕ものだが、取り締まる人がいないんだろう。
「あれ?もしかしてイーグル・・・のご親戚?もしかしてお父さん?イーグルは元気?」
「いや、イーグル本人だよ。エルフとは時の流れが違うんだ。20年も経てば俺だっておっさんだよ」
「あら~そうなの。でも、前よりずっと良いと思う。そっちの子は?」
「俺の息子」
「初めまして。ファルコと言います」
「あら~昔のあなたと・・・あんまり似てないわね。心の底から優しそうな顔をしてる」
「それはどうも・・・」
すれ違う全員に話しかけられ、驚かれ続ける。そして、父さんに話しかけるエルフの人達のほとんどが500歳を余裕で超えていた。
いちいち一人一人に話を聞くのも面倒なので、長老の元に皆で行ってから話を聞いてもらう事にした。
「ほぉ、イーグルや。20年で立派になったの。ワシは嬉しいぞ~」
立派な白髭を蓄えた老人が、切り株の上で果物を齧っていた。かなり老けてはいるが、流石エルフというべきか、顔立ちはとても良い。
「長老はお変わりないようで」
「さて、今回は迷子になったわけではなさそうじゃな。一体何があった?」
「実は────」
514年続いた戦争、ベルム族への迫害は何者かの魔法によって歴史を改変された為である事を話す。しかし、歴史の書から黒幕の痕跡は無かった為、生き証人であるエルフの元にやってきた事も話した。
「・・・外の世界ではそんな事が起きていたのか。じゃが、確かに今違和感を覚えた。何故、ワシらは意味もなくベルム族を魔族などと呼んでいたんだ?」
エルフの長老は何も知らない様子。よくよく考えてみたら、エルフはあまり森から姿を現さない。外の世界の事情を知らなくても無理はない。
「とんでもない魔法じゃな。しかし、世界全体にかけているせいか、精度は微妙みたいじゃな。完璧な精度ならば、こうして違和感なんて抱かないはずじゃ」
「「確かに・・・」」
思えば、歴史の書も不自然に空白があった。まるで修正液で消したかのように。それは、魔法の精度の低さの現れだったのか。
「そして、お主らがその黒幕とやらがエルフであるかもしれないと疑問を抱くのも理解できるじゃが、ワシはエルフではないと思っている」
「それはどうしてなんです?」
「歴史の書から記録すら消したのならば、ワシらの記憶からも存在を消していたっておかしくはない。そして、そんな事をした場合、記憶に人1人分の穴が開く。しかし、ワシの記憶には人1人分の穴ボコはないんじゃ。全くもってな」
「そんな・・・じゃあ、無駄足だったって事?」
「待て待て早まるでない。ここは、人間よりもワシらエルフよりも遥かにこの世界の事情を知っている者に聞こうではないか」
「そんな人がいるんですか?」
「ああ、おる。人ではないがな。我々はその存在を天使と呼んでおる」
「天使・・・でもどうやって会うんです?」
最後に天使に会ったのは、転生する前。それ以降、全く姿を現していない。もう死ぬまで会えないと思っていたのだが、長老はそうは思っていないらしい。
長老は、食べていた果物を全て平らげ、立ち上がると俺達に背を向けて歩き始めた。
「着いてきなさい。良い物を見せてあげよう」
長老の牛歩に、俺達は雛鳥のように着いて行った。
若葉色の髪色に、とんがった耳を持つ美男美女が独特な格好で集落で過ごしている。中には、一糸も纏っていない全裸のエルフのいる。
「エルフで全裸って何か意味あるの?」
「ううん、あれはただの変態。自然に近づく為とか言ってるけど、ただみんなに裸を見られたいだけだよ」
「なんだ、ただの変態か・・・」
人間なら逮捕ものだが、取り締まる人がいないんだろう。
「あれ?もしかしてイーグル・・・のご親戚?もしかしてお父さん?イーグルは元気?」
「いや、イーグル本人だよ。エルフとは時の流れが違うんだ。20年も経てば俺だっておっさんだよ」
「あら~そうなの。でも、前よりずっと良いと思う。そっちの子は?」
「俺の息子」
「初めまして。ファルコと言います」
「あら~昔のあなたと・・・あんまり似てないわね。心の底から優しそうな顔をしてる」
「それはどうも・・・」
すれ違う全員に話しかけられ、驚かれ続ける。そして、父さんに話しかけるエルフの人達のほとんどが500歳を余裕で超えていた。
いちいち一人一人に話を聞くのも面倒なので、長老の元に皆で行ってから話を聞いてもらう事にした。
「ほぉ、イーグルや。20年で立派になったの。ワシは嬉しいぞ~」
立派な白髭を蓄えた老人が、切り株の上で果物を齧っていた。かなり老けてはいるが、流石エルフというべきか、顔立ちはとても良い。
「長老はお変わりないようで」
「さて、今回は迷子になったわけではなさそうじゃな。一体何があった?」
「実は────」
514年続いた戦争、ベルム族への迫害は何者かの魔法によって歴史を改変された為である事を話す。しかし、歴史の書から黒幕の痕跡は無かった為、生き証人であるエルフの元にやってきた事も話した。
「・・・外の世界ではそんな事が起きていたのか。じゃが、確かに今違和感を覚えた。何故、ワシらは意味もなくベルム族を魔族などと呼んでいたんだ?」
エルフの長老は何も知らない様子。よくよく考えてみたら、エルフはあまり森から姿を現さない。外の世界の事情を知らなくても無理はない。
「とんでもない魔法じゃな。しかし、世界全体にかけているせいか、精度は微妙みたいじゃな。完璧な精度ならば、こうして違和感なんて抱かないはずじゃ」
「「確かに・・・」」
思えば、歴史の書も不自然に空白があった。まるで修正液で消したかのように。それは、魔法の精度の低さの現れだったのか。
「そして、お主らがその黒幕とやらがエルフであるかもしれないと疑問を抱くのも理解できるじゃが、ワシはエルフではないと思っている」
「それはどうしてなんです?」
「歴史の書から記録すら消したのならば、ワシらの記憶からも存在を消していたっておかしくはない。そして、そんな事をした場合、記憶に人1人分の穴が開く。しかし、ワシの記憶には人1人分の穴ボコはないんじゃ。全くもってな」
「そんな・・・じゃあ、無駄足だったって事?」
「待て待て早まるでない。ここは、人間よりもワシらエルフよりも遥かにこの世界の事情を知っている者に聞こうではないか」
「そんな人がいるんですか?」
「ああ、おる。人ではないがな。我々はその存在を天使と呼んでおる」
「天使・・・でもどうやって会うんです?」
最後に天使に会ったのは、転生する前。それ以降、全く姿を現していない。もう死ぬまで会えないと思っていたのだが、長老はそうは思っていないらしい。
長老は、食べていた果物を全て平らげ、立ち上がると俺達に背を向けて歩き始めた。
「着いてきなさい。良い物を見せてあげよう」
長老の牛歩に、俺達は雛鳥のように着いて行った。
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