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4章 偽りの歴史

198話 拒絶と破壊

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「・・・まるでヘリナ先輩は自分の物みたいな言い方だな」

「実際そうだもの。何か問題でも?」

「ありまくりだ。先輩は誰のものでもない。それに、先輩は物じゃなく、者だ。心をもったれっきとした人間だ。なのに、物扱いするだなんて俺が許さない」

「貴方の許しなんて足の小指くらいいらないわ。ウチは別に難しい事を言ってるわけじゃないのよ?ヘリナちゃんを渡すだけで、貴方達の命は助かる。凄い簡単な事じゃない?」

「ああ、シンプルすぎて一周回って難しく感じるよ。そして、ヘリナ先輩本人にではなく、俺に聞いているのも謎だ」

「うぐっ・・・!!」

「気づいてるんだろ?今のままじゃ、振り向いてくれないって。だから、俺に聞いた。本人に直接聞けばいいのに・・・ですよね?先輩」

「そうだね。回りくどいね・・・・・・こんな回りくどい人の所になんか戻りたくないかな~」

 ヘリナ先輩と目が合った瞬間、俺が何をしてほしいのか理解してくれたようで、100点の行動をヘリナ先輩は取って見せた。

「人の事を操って、汚れ仕事をやらせて、嘘をついて、一方的な愛を押し付けてくる人の所になんて帰りたくはないかな~~。だって、アタシの隣には、優しくて、アタシの気持ちを尊重してくれて、アタシからの愛を受け止めてくれるファルコがいるんだもの」

「な、ななな・・・」

 ルナの顔が涙でぐちゃぐちゃになっていく。どうやら泣く程好きだったらしい。涙がボロボロと零れているのだが、幻の為、地面には落ちていない。

「だから・・・ごめんなさい?ルナさん」

「うぐぅ・・・・!!」

 最後の一言がトドメになったのだろう。幻がパッとシャボン玉のように消える。ショックで気絶したのか、精神的に参って自分から切ったのかは不明だが、心がスッキリしたのは確かだ。

「ふう・・・スッキリした。アタシ、あの人苦手だったの」

「俺は嫌いでしたね。互いにスッキリできたわけですが・・・状況は未だにスッキリしませんね」

 俺達はルナを追い払っただけで、壁は対処しきれていない。しかし、

「ファルコ・ブレイヴ!ヘリナ・フリック!!我々の近くに来い!!」

 諜報員数人が魔力を高め合っている。急いで近づくと、諜報員達は息を合わせて魔力を解放した。

「「「「『マジックシールド!!』」」」」

 強力な魔法の盾がドーム状に展開され、俺達を守ってくれる。これで、迫りくる壁への対策はばっちり・・・ではない。どんなに硬い盾でも、圧力には勝てない。壁同士がピタリとくっつくまで迫りくる壁は止まらないだろう。

 その為、俺達が助かる道は破壊しかない。破壊するのは、最高火力を持つドゥーク・ドラゴムだ。

「全員、魔法の盾の中に入ったな?・・・行くぞぉ!『ドラゴンズソウル』!!」

 狭き地下の密室に、炎の竜が降臨する。降臨した衝撃は凄まじく、迫りくる壁どころか、階段を塞いでいた壁すらも破壊してみせた。

 一方、力を調整していたのか、俺達を守っていた魔法の盾と、地下牢だった部屋は完全に破壊される事なく、俺達の命に別状は無かった。
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