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4章 偽りの歴史

163話 前世と照らし合わせる

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「ベジタリアンドラゴン・・・とんでもなく強かったな・・・」

 ベジタリアンドラゴンを倒し終わり、帰ってきたのは、既に皆が寝静まりかえった次の日の真夜中だった。

 討伐に参加した人数は20人。重症者は7人で、死亡者は0人。ドラゴンを相手によくやったと思う。

 農家の人達も驚いていた。まさか、こんなにやれるとは思わなかったと。

 ベジタリアンドラゴンは、炎や氷などのブレス攻撃はしてこなかったが、とにかく動きが竣敏で、健康的な物を食べているからか、めちゃくちゃ力が強かった。はっきり言って2度と戦いたくはない。

「農家さんの反応からして、ベジタリアンドラゴンがこの国での普通なんだろうな・・・カートライトで竜種が出たら1ヶ月は騒がれる大事件なのに・・・」

 カートライト人よりも3分の1くらいなのに、何百年も戦争を続けられるのが分かったきがする。過酷な環境にいるから、個々人が強いんだ。

「明日からこれが毎日続くのか・・・強くなれそう」

 前向きに考えよう。敵は強ければ強いほど、俺が強くなれる。経験も積めるし、仲間との連携も固くなる。

 ・・・球速は速くはならないが。

「何で球速が上がらないんだ・・・」

 これは体感ではあるが、今の体は前世の体よりも運動神経に優れている。それに、若い。

 メジャーで十数年後投げ続けた経験と、若々しい才能に恵まれた体があるのに何故、160の壁が超えられないんだ?

 鉄球を投げているのが原因か?野球ボールと同じにしているはずなのに?

「今の俺に何が足りないんだ・・・」

 ベッドの上で悩んでいると、ドアが誰かにノックされた。こんな真夜中に来客?誰だろうか?

「ファルコさん、僕です。ちょっといいですか?」

 来客の正体は、親衛隊に戻ったナックルだった。

 ドアを開けると、少し顔色の悪いナックルが立っていた。理由は何と無く分かった。

「・・・助けられなくてごめんね」

「いえ、大丈夫です・・・元の生活に戻っただけですから。それよりも、佐久間さん。何にそんな苦悩しているんですか?」

「実は、球速が前世の全盛期163キロはおろか、160キロの壁を超えられないんだ・・・」

「そういえば、その話前にもしてましたよね?トルネヒロにミノタウロスが襲ってきた時」

「ああ、キャッチボールしてた時か。あれから怒涛の半年だったからその事をすっかり忘れてたよ。何度も同じ話しちゃってごめんね」

「いえ!気にしないで下さい!その話をもう一回してくれたおかげで僕も佐久間さんに言いたかった事を思い出せたので?」

 キャッチボールの時の話から思い出したという事は、野球に関連する事だろうか?

「投球フォーム、変えてみたらどうでしょう?」

 彼からの提案はとても大胆なものだった。
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