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4章 偽りの歴史

153話 ドリームトリップ

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「おうっ!?」

 しかし、体に入ってきた衝撃は、腹部のみ。当たったのは手のひらサイズの鉄球だった。

 思わずお腹をおさえてしまうくらいには痛い。けれども、死んではいないし、まだまだ戦える。

「隊長!大丈夫でしたか!?」

「ああ、うん。全然大丈夫だった・・・ん?あれは?」

 明かりのついた建物。俺達アウトレイジを欺く為に明かりをつけておいた民家の中で人影が動くのを確認した。

 シルエットからして確実に冒険者ではない。まだ、移住は完了していなかったんだ!!

「あっ、あっちにもいます・・・」

 部下が指差した建物の窓には、魔族のシルエットがあった。立ち姿では人間と偽れても、ツノで丸分かりだ。邪神の眷属め・・・!!

 俺達の目は節穴だったみたいだ。この町にはまだ魔族と裏切り者が残っている。本来の目的を果たせる。

「いえ、誰もいませんけど・・・見間違えじゃありませんか?」

「そんなわけないだろう!それにほら!笑い声まで聞こえる!!魔族が俺達を建物越しに煽っている!!これは、人間の尊厳に関わる緊急事態だ!速攻で斬り殺す!!」

「「「コロセ!コロセ!コロセ!!」」」

 そう言いながら進んでいく男の瞳は、ぐるぐると螺旋を描いており、明らかに異常だった。その異常に気づいた部下は、隊長格の男を止めようとするが、全く話を聞いてくれない。

「こうなったら俺が原因を探さなくては・・・」

 異変解決に動き出そうとした瞬間、後頭部を鷲掴みにされ、もう片方の手で口を塞がれてしまった。

「『スリープ』・・・」

「なっ・・・」

 睡眠魔法をかけられてしまった。睡眠魔法・・・魔法・・・そうか!隊長達がおかしくなったのは魔法のせい!!

 俺に睡眠魔法をかけた奴が犯人で間違いないだろう。

 おのれぇ・・・!!卑怯だぞ!魔族め!!

 薄れゆく意識の中、ぐらつく視界の中に入ってきたのは自分と同じ人間だった。

「うら、ぎりものぉ・・・」

 男は恨み節を呟きながら永遠・・・ではない一時の眠りについた。

「・・・よし、眠ったかな?いやぁ・・・今のは危なかった。仕方なかったとはいえ、やっぱりぶっつけ本番はミスが多いな・・・」

 足元でゆっくりと余力で転がっている鉄球を拾う。鉄球にはまだ微かに込めた魔力が残っていた。

 ドリームトリップ。対象に幻覚を見せる魔法。龍騎隊長から手渡された薄い魔導書に書かれていた魔法だ。

 今、アウトレイジの冒険者達は建物の中にいる幻の一般人を殺しまわっているのだろう。

 効果継続は1日以上。途中で異常に気づいたら解除される欠点を持っているが、どうやら異常に気付いていないみたいだ。今眠らせた1人を除いて。

「さて、皆に報告しに行こうか」

 マイク将軍はこの使い方を想定して俺にこの魔法を教えてくれたのだろう。ジャッジメントまで行ったら感謝しなければ。
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