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3章 平和主義者達

131話 教えて

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 俺が裏切ってショックを受けていたヘリナ先輩だが、どういうわけか戦意を取り戻したらしい。

「ファルコ、教えて・・・」

「?・・・な、何を・・・?」

「教えて欲しいの。アタシは一体どうしたら良いの?」

 ヘリナ先輩は泣くでも怒るでもなく、ただただ困った顔をしていた。何をどうすれば良いのかさっぱり分からない。そんな顔をしていた。

「アタシは、ファルコを2年半ずっと見続けてきた。だから、ファルコが致命的な間違いを犯す人じゃない事は知ってるの」

 ヘリナ先輩の口調は、普段とまるで変わらないものだった。まるで俺を敵として見ていない。

「だから、今のファルコが間違ってるとは思えないの。でも、皆は愚かだって言う」

 カートライトの教育を受けてきた者からしたら俺は異常者でしかないだろう。ある意味正しい判断だ。

「そのせいでさ、分かっちゃったの。この世には正しさがいっぱいあるって。でも、アタシに合った正しさが分からなくてさ」

 ヘリナ先輩は、一度に数個分の衝撃を受けてしまった。故に混乱してしまっているのだろう。自分自身の正しさを見つけるのは簡単だが、他人の正しさを見つけるのはほぼ不可能に近い。

 こちらの考えを伝えるか?いや、それではカートライトの教育方針とまるで変わらない。どうしたものか・・・。

 どう答えるか迷っていると、ガーディアンズの一員と思わしき騎士のような格好をした女が腰をくねらせながらこちらへと自然な雰囲気で近づいてきた。

「分かるわぁ~ウチも若い頃は凄い悩んだ悩んだ!ヘリナちゃんぐらいの年頃の子にはあるあるだよー!」

「ルナさん・・・」

 ルナと呼ばれたガーディアンズと思わしき女性冒険者は愛しそうにヘリナ先輩を撫でる。

「確かに、ヘリナちゃんの言う通り。この世にはいっぱい正しい事があるわ。けどね、間違ってる事もいっぱいあるわ」

「・・・え?」

「邪神の眷属と仲良くしようとする事が、正しいと思う?思わないわよね?」

「え、あ・・・」

「ふふ、混乱してるわね。でも、安心して、そんな状態でも戦えるようにしてあげる」

 ルナの手の平から魔力が集中する。何か、ヘリナ先輩に魔法を使うつもりだ・・・!!

「待てっ!!」

「ふふっ♪待たなーい♪『マリオネット・ダンス』♡」

「あっ・・・」

ルナの指先から、魔力で出来た糸が出てくる。糸は、ヘリナ先輩の頭を貫通すると、そのまま体の中へと入っていった。

「あ、ああ・・・」

「アンタ、ヘリナ先輩に何をした?」

「ふふっ、殺し合いに感情は必要ないわ。だ・か・ら・・・操り人形になってもらったの♡」

「ああぁぁぁぁぁ!!」

 落としていた大剣を拾い、こちらを睨みつけてくる。ヘリナ先輩の体の主導権は、あのルナとかいう冒険者に奪われてしまったようだ。
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