42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

3章 平和主義者達

122話 アダムの不思議

　マイク将軍が帰った後のレボルスの空気はとても暗いものになっていた。まるで、人が死んだ後のような、お通夜のようなものをイメージさせる雰囲気を纏っていた。

「悪い、強く言い過ぎた」

「いいや、謝るのは俺のほうだよ。あまりにも短気すぎた・・・」

　ウマは合わなくても、目的は同じ者同士。落ち込むのは分かる。互いに慰め合う様子は、理想とは言えないが、かなり良い形だ。これをマイク将軍に見せてあげたかったが、もう見せることはできない。

　仮に見てくれたとしても、芝居だと一蹴されるのは目に見えている。もう今は、別の策考えるしかないのだが────。

「アダムオーナー。どうしてそんなに落ち着いているんです？今、レボルス設立史上最大のピンチを迎えてるんですよ？落ち着きながらお酒飲んでる場合じゃないと思うんですけど・・・」

「まあ、落ち着きなよ。全て上手く行くさ。きっとね」

「もしかして、新しい策を考えているとか？アレクサンダー軍の代わりに魔物を用意するとか？」

「人間同士の争いに魔物達を巻き込むのは少し可哀想じゃない？まあ、わたしのような考えは少数なんだろうけどね」

　ベルム族は魔物を操る事が出来る実際に、ドゥークも魔物を使っていたし。

　けど、アダムオーナーの言う事はまったくもってその通りだと俺は思う。過度に魔物を戦いに使いすぎると、個体数の減少につながる。その生物は絶滅危惧種となり、やがて絶滅。絶妙なバランスで保たれている生態系が破壊されてしまう。

「じゃあ・・・もしかしてゾンビを？」

「それは道徳的に良くないね」

　ネクロマンサーは、魔法の中でも禁忌とされているタブー中のタブー。アレクサンダーでは知らないが、カートライトで使用が発覚した場合は、魔法の永久的に使用が禁止され、最悪死刑になる。法律的にではなく、道徳的にと言っているという事は、アレクサンダーの方が若干緩いのだろうか？

「じゃあ、一体どうやってこの状況を打破するって言うんです？」

「さあ？それはわたしには分からないかな？」

「きっとって言い切れるのに分からないってどういう事ですか？俺は、貴方の頭の中がまるっきし読めない」

　アダムオーナーは前世風に言い表すと不思議ちゃんだ。発言や行動がふわふわしていて、まるで頭の中が分からない。けど、先輩方から聞いた話によると、こんな事を言っている時は、必ず何かが起きるらしい。故に年下でもオーナーとして慕っているのだとか・・・。

「キエェェェェェェェェェェ！！」

　オーナーの心中を何とか読み取っていると、外から魔物の鳴き声が聞こえてきた。