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3章 平和主義者達
110話 全力のストレート
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「ええっ!?」
「どうしたの?もっと球速が出てると思ってた?」
「それもそうなんですが、ファルコさん。どうやって球速を測っているんですか?」
この世界には、スピードガンのような速度を測る機械は存在しない。そもそも、絡繰自体が存在しない。しかし、その代わりに魔法が存在する。
「風の魔法を応用して速度を測ってるんだ。投げる人の前に微弱な風の魔法を張って、風の壁にぶつかった時の衝撃から速度を測ってるんだ」
「面白い魔法の使い方ですね。ベルム族は戦う事でしか魔法は使わないので・・・」
「そうなんだ。カートライトの家庭だと、火起こしとかに使ってるよ」
「何というか、平和の差を感じますね・・・ベルムは血気盛んであんまり治安がいいとは思えませんから」
「日本にいた頃が懐かしい?」
「ええ、懐かしいです。でも、そんな環境にいたからこそ平和を願うようになったと思うんです。いつかアレクサンダーも日本のような穏やかで平和な国にして見せるって」
「それは良い心構えだね。気に入ったよ。それにしても・・・投手としては俺を尊敬してるって言うのは本当みたいだね。投球フォームがそっくりだ」
「嘘なんてつきませんよ・・・あ、そうだ!佐久間さんも投げてみてくださいよ。全力で!!」
「良いけど、大丈夫?取れる?」
「安心してください!運動神経は良い方なので!!」
「分かった。それじゃあ、行くよ・・・」
瞬間、佐久間さんの気配がガラリと変わった気がする。良く見ると僕を見る目つきが鋭くなっている。先程まで優しいまなざしだったのに、今は戦闘時にしていた目つきになっている。
ぐにゃりと緩んでいた口元も、見事に一文字を描いており、野球に対しての意識の違いを見せつけられているような気がした。
佐久間さんの右足が上がる。準備は整ったらしい。持ち上げた足を前へ移動し、左足にかけていた体重を、一気に右足に移動。
「オラァッ!!」
気迫の籠った声と共に放たれたオバースローのストレートは、僕に容赦なく向かってきた。
「うわぁ!!」
僕はそれを受け止めるのが精一杯だった。
グローブでしっかり受け止めたのに、手の平がジンジンと痛い。これが、メジャーで17年もの間、投げ続けたトップクラスのストレート。たった一球しか受け止めていないが、歴史と経験を感じる一球だった。
「大丈夫だった!?」
「はい・・・これが、メジャー101勝のストレート。世代最強のサウスポーの力なんですね」
「ああ、そうだな」
今のストレート。素晴らしい一球だったはずなのに、佐久間さんは何処か不満そうな表情を浮かべていた。何か物足りなさを感じている。そんな表情だ。
「どうしたんですか?」
「・・・足りないんだ」
「足りないって、何がですか?」
「球速が、前世に追いついていないんだ・・・」
悩みは、レベルの高いものだった。
「どうしたの?もっと球速が出てると思ってた?」
「それもそうなんですが、ファルコさん。どうやって球速を測っているんですか?」
この世界には、スピードガンのような速度を測る機械は存在しない。そもそも、絡繰自体が存在しない。しかし、その代わりに魔法が存在する。
「風の魔法を応用して速度を測ってるんだ。投げる人の前に微弱な風の魔法を張って、風の壁にぶつかった時の衝撃から速度を測ってるんだ」
「面白い魔法の使い方ですね。ベルム族は戦う事でしか魔法は使わないので・・・」
「そうなんだ。カートライトの家庭だと、火起こしとかに使ってるよ」
「何というか、平和の差を感じますね・・・ベルムは血気盛んであんまり治安がいいとは思えませんから」
「日本にいた頃が懐かしい?」
「ええ、懐かしいです。でも、そんな環境にいたからこそ平和を願うようになったと思うんです。いつかアレクサンダーも日本のような穏やかで平和な国にして見せるって」
「それは良い心構えだね。気に入ったよ。それにしても・・・投手としては俺を尊敬してるって言うのは本当みたいだね。投球フォームがそっくりだ」
「嘘なんてつきませんよ・・・あ、そうだ!佐久間さんも投げてみてくださいよ。全力で!!」
「良いけど、大丈夫?取れる?」
「安心してください!運動神経は良い方なので!!」
「分かった。それじゃあ、行くよ・・・」
瞬間、佐久間さんの気配がガラリと変わった気がする。良く見ると僕を見る目つきが鋭くなっている。先程まで優しいまなざしだったのに、今は戦闘時にしていた目つきになっている。
ぐにゃりと緩んでいた口元も、見事に一文字を描いており、野球に対しての意識の違いを見せつけられているような気がした。
佐久間さんの右足が上がる。準備は整ったらしい。持ち上げた足を前へ移動し、左足にかけていた体重を、一気に右足に移動。
「オラァッ!!」
気迫の籠った声と共に放たれたオバースローのストレートは、僕に容赦なく向かってきた。
「うわぁ!!」
僕はそれを受け止めるのが精一杯だった。
グローブでしっかり受け止めたのに、手の平がジンジンと痛い。これが、メジャーで17年もの間、投げ続けたトップクラスのストレート。たった一球しか受け止めていないが、歴史と経験を感じる一球だった。
「大丈夫だった!?」
「はい・・・これが、メジャー101勝のストレート。世代最強のサウスポーの力なんですね」
「ああ、そうだな」
今のストレート。素晴らしい一球だったはずなのに、佐久間さんは何処か不満そうな表情を浮かべていた。何か物足りなさを感じている。そんな表情だ。
「どうしたんですか?」
「・・・足りないんだ」
「足りないって、何がですか?」
「球速が、前世に追いついていないんだ・・・」
悩みは、レベルの高いものだった。
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