42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

2章 Aを目指せ

63話 愛はあったのか、確かめたい

「ファルコ、知ってる？5年前にとある錬金術師が発明した家族の見分け方」

「血液検査・・・ですよね」

「そう。正解」

　血液は、遺伝子の宝物庫だ。前世でも体液を使った親子関係の調査は行われていた。しかし、この世界の血液検査は少し違う。

　血液と共に循環する魔力から種族などを特定するものとなっている。流石にまだ親子関係を調べられる程の精度には到達していないらしい。

「どうしたんですか？藪から棒に」

　溜まっていた指名依頼を1つ片付けた帰りに突然聞かれたので驚いた。今までも突然話題が変わる事があったが、唐突に何の関係のない話が始まるのは初めての事だった。

「昔の事は、聞いたよね？」

「・・・はい」

　ヘリナ先輩の過去は控えめに言って悲惨そのものだった。悲惨すぎて、聞き終わった後、何て言えば分からず言葉を詰まらせたほどである。

「アタシは証明したいんだ。本当に愛されて生まれてきたのかなって」

「それってもしかして・・・」

「母さんの不倫相手はドワーフだった。もし、父さんの言う通り托卵だったらアタシの体には半分ドワーフの血が流れているんなら、血液検査で分かるはず」

「でも、結果が良かったとしても、罪は消えない。ヘリナ先輩のお父さんとお母さんも帰ってきませんよ」

　血液検査はこの世界では生まれたばかりの技術の為、1回受けるのに非常にお金がかかる。正直言って、貴族にしか使えないだろう。一般的に使えるにはあと数十年はかかる。

「そうじゃないんだよ。アタシは取り戻したいわけじゃないんだ。ただ証明したいんだよ。愛されて生まれてきたのか、不貞の子なのか」

「ずっと気になっていたんですか？」

「うん。アタシは父さんも母さんも大好き。だから、人間が良いけど、間男のドワーフの子供だったと分かっても構わない。アタシはただすっきりしたいだけなんだ」

「もしかしてそれがA級に上がる借金返済以外の理由ですか？」

「うん、そうだよ。悪くないでしょ？」

「はい・・・良いと思います」

　俺とヘリナ先輩は違う。誰も彼女の生き様を否定する事はできない。それは神ですら不可能だろう。

「ファルコはさ、アタシが不貞の子だとしても一緒にコンビ組んでくれる？」

「関係ありませんよ。どんな事があろうとも、俺はヘリナ先輩の相棒です」

「ホント？良かった・・・」

「ヘリナ先輩こそ裏切らないで下さいよ。俺がどんな事になってもね」

「大丈夫。何かあったら、アタシも一緒に死んであげるから」

「それはちょっと重いかも」

「うるさい」

「痛っ」

　ヘリナ先輩の小さな手が俺の背中を叩いた。