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1章 投げる冒険者

40話 嫌な推測

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 当初、昇級試験代わりのグリフォン退治は俺1人でこなそうとしていた。そこに待ったをかけたのが、ヘリナ先輩だ。

 ヘリナ先輩の主張はこうだった。

 「アタシの試験の時も複数だった。だからアタシもファルコの昇級試験を手伝う権利がある」「そもそも、北東の人間の命がかかっているのに、1人で行かせるのは、本気で助ける気があるの?昇級試験を意識しすぎ。被害を止める事を第一に考えるべき」

 最初が懐疑的だったマックスオーナー含めたファーマーズ運営全員、首を縦に振った。俺も1人でB級案件をこなすのは少し怖かったので、心の底から安心した。

「だから、野宿なんてやめとけって言ったのに」

「本当にすみません・・・」

「謝んなくて良い。それよりも、アイツなに?アンタの知り合い?」

「・・・多分、

「はぁ?アタシ、人間以外の知り合いなんていないんだけど・・・ってあぁ!!」

 ヘリナ先輩の背後奇襲を喰らったからか、グリフォンは驚いて飛んで逃げてしまった。

「逃げられちゃったじゃない。まあ、第一目的が達成できてれば何も問題はないけど」

「問題ありません。避けている時にMPSはしっかりとつけてあります」

 この世界は科学が発展していない代わりに、魔法による技術革命が起きている。その中の1つが、グリフォンに付けたマジック・ポイント・ストーン。通称、MPSだ。魔法の加工が施された特殊な地図と連動していて、地図はMPSがある場所を光らせて教えてくれる。

 つまりは、GPSだ。GPSができたのは前世では1993年に普及しているのに対して、MPSは中世で普及とはならずとも、利用されている。それほどまでに魔法という力が強いという証明だ。

「なら良し。それじゃあ、あのグリフォンについて知ってる事を話しなさい。俺達の知り合いってどういう事?」

「グリフォンが襲い掛かってくる前、俺と一緒に戦った事があるってほざいたんです」

「戦った?殺した冒険者の言葉を意味もなく使ってるだけじゃないの?」

「それなら、もっと命乞いめいた言葉を使うんじゃないんですか?少なくとも、『一緒ニ戦ッタ』なんていわないと思います」

「・・・確かに。じゃあ、つまりこういう事を言いたいのか?あのグリフォンは元人間だって」

「はい・・・それも、俺が一緒に戦った事がある人。でも一緒に戦ったのは同期の4人とヘリナ先輩とライさん」

「あのクソチビは戦ってねぇだろ」

「そこらへんは置いといてください。昇級試験以降の依頼はヘリナ先輩とずっと、一緒に依頼をこなしていたので、今までの共闘した人は6人というわけです」

「一緒に戦った新人4人は?」

「生きてギルドに所属しています。そして、ヘリナ先輩もここにいる。となると、消去法的に考えて、あのグリフォンの正体は・・・」

「・・・嘘でしょ。だって言いたいの?あり得ない!だって・・・」

「昇級試験から、ライさんは行方不明です。そして、魔物になる技術がこの世の何処かにあるかもしれない。そして、最初の被害者はウィート家とその関係者全員です」

 ライさんは、家族から冷遇されていた。魔物になって復讐というのは十分にあり得る。

「・・・他には?」

「声が似てた・・・ぐらいしかありません」

「不気味すぎて気持ち悪くなってきた・・・一旦、ギルドに帰りましょう」

「すみません・・・」

「だから、謝んなって!」

「すみま・・・・はい」

 住処はこれで特定できる。俺の推測の真偽は次会った時に聞く事にしよう。

 ヘリナ先輩に爪攻撃の傷を治してもらい、一度ギルドに帰って体勢と体調を整える事にした。
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