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1章 投げる冒険者

25話 小さな大剣使い

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「ヒッ・・・キモ」

 その容姿に驚きながらも、大剣を構えるヘリナ先輩。140センチの少女が全長180センチ程度の大剣を構える様はまさに圧巻だった。

「気づいたのはアンタが先だけど、倒すのはアタシが先よ。良いわね?」

「援護もしちゃダメ?」

「ダメ」

「俺だけじゃなく、ライさんにもその機会を与えてあげたら?」

?」

「え?・・・・ああ・・・」

 ライさんがいる後ろを振り向くと、酷く怯えてロクに戦えそうにないライさんがいた。この人は一体どうやって昇級試験に挑めるようになったのだろうか?不思議で仕方がない。

 もしかして、オーナーが諦めさせる為に仕方なく参加させたのだろうか?いや、今は考えることではないな。帰れればオーナーから好きなだけ聞くことができる。それまで頑張るとしよう。

「じゃあ・・・死ね!」

 大剣を構え、コオロギの魔物に立ち向かっていく。殺されるのだから、黙って見ているはずがなく、その足を駆使して高く飛び避ける。

「ちょこまかと・・・うざいっ!!」

 負けじと斬りかかるも避けられるばかり。ヘリナ先輩のストレスは怒涛の勢いで溜まっていく。

「コロァッ!!」

 避けると同時に煽るように飛び、ヘリナ先輩を嘲笑う。どうやら知性がそれなりにあるらしい。知性のある敵は、獰猛な野獣よりも厄介だ。

「腹立つ・・・!!」

「やっぱり、俺手伝いましょうか?」

「邪魔したら殺す」

「はい・・・」

 ヘリナ先輩の動きには、無駄が無かった。体が小さいなりに大剣を振り方をしっかりと考えている。大剣の重みに体が持って行かれていない。しかし、動きが鈍い。大剣の重みが素早さを殺してしまっている。

 普通の片手剣ではないのは、後で聞くことにしよう。とにかく、今は言われた通り何もしないでおく。投げた鉄球を回収し、ヘリナ先輩が負けた時を想定していつでも投げられる準備をする。

「コロッ!!」

「ちょこまかと・・・うざいっ!!」

 宙高く飛んだコオロギの魔物に向かって大剣をぶん投げる。円を描きながら飛んでいった大剣は、見事に魔物の上半身と下半身を真っ二つにした。

「マジか・・・」

「はぁ・・・はぁ・・・どう?倒せたでしょう?」

 腕力だけじゃない。肩の力も体の大きさにまるで比例していない。何故、こんな逸材が今まで昇級試験ができなかったのか謎だ。

「さてと、これで終わりね」

「いや、終わってない・・・!終わってないだろ!依頼は!!忘れたのか依頼の内容を!!」

 新種の魔物を討伐。そのうち一体を捕獲・・・討伐と捕獲の2つの目的が依頼達成の条件だった。この文から読み取れる事はつまり─────。

「複数体いるってことか」

 先程の一体は尖兵だったのだろう。至る所からコオロギの魔物の鳴き声が聞こえてくる。

「うわ・・・うわぁぁぁぁぁぁ!!」

「ライさん!!」

 1体だけで怖がっていた人が、複数体の存在に耐え切れるわけがなく、ハーパーの森を全速力で逃げ出してしまった。
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