大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太

文字の大きさ
上 下
197 / 212
最終章 今こそ復讐の時

第十六話 好きは止まらない

しおりを挟む
「久しぶりだな!クソ女神!会いたくて会いたくて仕方なかったぜ!!」

「私だ!裏切者!!今日こそ我が手で捻り潰してやる!!」

 標準語であった敬語まで忘れる程、怒りで我を忘れてしまっているようだ。上から降りてくる幸助を迎え撃とうと構える・・・が。

 金属を弾音と共に幸助の落下は中途半端な位置で止まってしまう。止まった原因は幸助のすぐ目の前にあった。

「アモーラ様に・・・刃を向けるな下等生物が!!」

 原因は割って入ってきた天使が幸助の一撃を光の剣で防いだだけだった。その後押し返された幸助は五点着地で安全に地面に降り立ち剣を構える。

「おい、天使。俺の復讐を邪魔するのか?」

「当たり前だクズが!アモーラ様はな!お前みたいなヤツが触れて良いお人ではないんだよ!そもそも姿を現す事自体が異例と言っても過言ではない!しっかりとその目に焼き付けておけよ?人間!」

口調の強さから鑑みるに、割って入ってきた天使は相当アモーラにお熱のようで、アモーラ狂信者と同様の雰囲気を出している。狂信者に酷い目に遭わされた事がある幸助は無意識に天使に嫌悪感を抱いた。

「ソイツが何したのか知っているのか?」

「ああ、知ってるさ。お前を病気で殺した事も勿論。だが、何故怒っているのか到底理解できない。だって、アモーラ様に会えたのだぞ?こんなにも美しく優しい神に。殺されたとしてもお釣りがたんまり出る程の喜びのはずだ」

 狂信者に似ていると言ったが、それ以上の逸材かもしれない。種族が違うからとかの問題ではなく、価値観が根本的に違うようだ。こういうタイプには何言っても自分の意見は曲げない。元の世界にもいたタイプなのでよく知っている。

「ラヴ姉さんも裏切りやがって・・・何を考えているんだ!アモーラ様を裏切るだなんて!」 

 よく似ていると思っていたが、目の前の天使は本当にラヴさんと姉妹関係にあるようだ。俺を間に入れて口喧嘩を始める。

「ライク!聞いて!裏切るしかなかったの!元のアモーラ様に戻すためには!」

「元のアモーラ様?まだ、駆け出しだった頃のアモーラ様に?つまり力を失い堕落して欲しかったってわけか!」

「違う!私が言いたいのはそう言う事じゃないの!元の優しいアモーラ様に戻ってほしいの!」

「今も十分に優しい!何が不満なんだ!」

「暴力を内包している優しさのどこが良いの?アモーラ様は人類の純粋な愛を願う思いによって生まれた神様なんだよ!そんな神が愛の為に暴力を振るうなんて間違ってる!自分の偉大さを証明する為に武力行使なんて間違ってる!その先に本当の愛なんてものはないのに・・・」

「いいや、姉さんは間違っている。愛にはね、時には暴力が必要不可欠なんだ。振るわなければ気づかない下等生物がたくさんいるから。だから、アモーラ様は仕方なく暴力を─────」

「あのー、そろそろ口喧嘩するのやめてもらってもよろしいでしょうか?」

 姉妹の口喧嘩に横入りしてきたのは間に立たされていた幸助。額と拳には血管が浮き出ており、早い間隔で足踏みをしている。剣を握る手の平からは出血を起こしている。

「俺さ、アンタらの口喧嘩聞きにきたわけじゃないんだよね。俺がしにきたのは復讐。憎きアモーラをぶちのめす為に来たの。だからさっさと終わらせてくれない?」

 対象を目の前に我慢が効かなくなってしまっているようで、言動の端々に怒りが見え隠れしている。天使ライクも幸助が怒っている事には気づいていたようで、その怒りを煽るように鼻で笑い、見下す。

「早く終わらせろ、だと?誰に向かって口を聞いているんだ下等生物。身分を弁えろ。私は天使、お前らの上に立つものだぞ?」

「それがどうした?戦いに身分なんて関係ねぇ。必要なのは力と技術だ」

「その力と技術も私達の方が上回ってるんだよな~」

 紛れもない事実である。スペック的に見たら、幸助が勝てる可能性は無いに等しい。それなのに、幸助は以前余裕の笑みを浮かべているのはどこが不気味さを感じる。

「何を企んでいる?まあ、企んだ程度で私に勝てるはずはないさ」

「いや、ただ1つだけ言い忘れていた事があってついつい笑っちまったんだ。戦闘に必要なものをね。何だと思う?」

「そんなの知る必要はない。しっかりと心で理解しているからな」

「そっか・・・じゃあ、言わなくても大丈夫だよね。姿って事は」

「何っ!!」

 確認する為に振り帰ろうとするが、顎が肩まで到達した途端、背中に刺されたような痛みと殴られた痛みが同時に襲ってきてしまう。同然の衝撃に驚きながらライクは地面に倒れ伏した。

「あわわ!コウスケ君!本当に良かったのかな!天使さん殴っちゃって!!ワタシこれでも元アモーラ教なんだけども!」

 何もない場所からゆっくりと頭から姿を現したのは僧侶風の服装の長身の女ボニー・カエターニだった。アモーラは元アモーラ教徒だからか、ボニーの事を知っているようで表情が歪む。

「大丈夫!大丈夫!他の神からはアモーラを止めろって言われてんだし、多少は手荒い方法でやっても怒られないって!」

「拙者もそう思う。いわばこの者達は自分の力に溺れた愚か者。切っても仏とらこる様が許してくれるだろう」

「それじゃあ、これから思い切り殴ってやろうぜ!!」

 次は蘭丸とメアリーが幸助の後ろから姿を現すと、刀と拳を構える。同時にライクも立ち上がった。

「頭に乗るなよ!下等生物がぁ!!」

「いや、申し訳ないけどまだまだ乗らせてもらうよ」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

【後日談完結】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長していった。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、そして・・・。 初投稿というか、初作品というか、まともな初執筆品です。 今までこういうものをまともに書いたこともなかったのでいろいろと変なところがあるかもしれませんがご了承ください。 誤字脱字等あれば連絡をお願いします。 感想やレビューをいただけるととてもうれしいです。書くときの参考にさせていただきます。 おもしろかっただけでも励みになります。 2021/6/27 無事に完結しました。 2021/9/10 後日談の追加開始 2022/2/18 後日談完結

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

処理中です...