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四章 魔族との和平交渉
第四十話 生きた永久機関
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ハリーを倒した同時刻。幸助は──────
「どうした!どうした!?動きが悪くなっているぞ!!」
「ぐぅぅ・・・!!」
ジールに防戦を強いられていた。精錬された身のこなし。息をつく暇も与えない連続攻撃。斬っても斬っても再生し続ける身体。どんなに致命傷を叩きこんでも再生するので、全く勝負の終わりは見えない。
ジールの戦法は能力を生かした捨て身覚悟の超攻撃型。前のめりに爪で身体をひっかいてくる様はまるで肉食獣。こちらも一生懸命崩しては一撃を叩きこむが、すぐに無効にされてしまう。
痛覚も何度も攻撃を喰らい続けたせいで狂ってしまったのか、まるで痛がる様子はない。寧ろ笑みを浮かべて喜んでいるすらある。
買ったばかりのミスリル鎧は既に爪痕だらけだ。それでも、深い爪痕が付いていないのは、ミスリルが優秀な金属である事を証明している。
「ほらほらほらぁ!!どうだぁ!攻撃する隙すらも無いだろう!」
「お前が間合いを詰めてくるお陰でなっ!!」
盾で防ぐと同時に全身の体重を使って後ろへと押し込む。自分自身も後ろに下がると、幸助は建物の屋根ぐらいの高さまで高く飛び上がった。
(こうなったら、一撃でその脳味噌と心臓をぶった斬ってやる!!覚悟しろよ!)
天井に剣先を向けるように構える。落下の速度と重力を活かして一刀両断を画策しているらしい。幾度の戦場を潜り抜けてきたジールには手に取るように分かった。幸助の浅はか考えを呼んだジールは同様に高く飛び、幸助と同じ高さまでやって来た。
「甘いわ!若輩者め!!その程度でベテランを倒せると思ってるのか!?」
「まじか!!・・・でも、これは予想できたかな?」
「何?・・・ぐああああああああ!!」
剣を握る左手を離すと、手のひらから火炎放射を発射。ジールの身体に火をつけた。中級魔術のフレイムだ。アモーラ宮殿の騒動の後も魔術の勉強を怠らなかった言わば努力の賜物である。
不意打ちの火炎放射にたちまちジールの身体は焼け、重力に従い地面へと落ちていく。全身が火傷に覆われて隙だらけになったジールを幸助が見逃すはずがなく、予定通り、身体を左右に分けるように剣を振り下ろした。
「甘いぞ!小僧!!」
しかし、瞬間に意識を幸助へと再び向けたジールの金属の爪によって、防がれてしまう。空中で、地面を踏んで踏ん張れない為、押し勝つことができない。空中で仕留める事は出来ないと察した幸助は一旦地面へと降り立ち、着地と共に地面を蹴りジールを殺さんを斬りかかる。
ジールの落下地点に土煙が舞う。土煙ごとジールを斬るが、高い金属音と共に硬い物によって止められてしまう。
「だから、甘いと言っているだろう。何もかも・・・身体能力も技術もトドメの刺し方もな!」
土煙の中から出てきたのは顔の中心からじわりじわりと焼け爛れた皮膚を交換するジールだった。全身に着火していた火は土煙によって消えてしまっており、再生も4割程完了していた。地面に落下してから10秒も経っていないというのに。
恐ろしき再生力と対応力だ。だが、少しおかしい点がある。人間は行動を行うには食事でため込んだエネルギーと睡眠や休憩などで補給した体力を使わなければならない。肉体の再生は特に2つの要素を顕著に消費する。俺もよくボニーさんに傷ついた身体を再生魔術で治してもらうが、その後は決まって身体がだるく重くなる(怪我の大小で変わるが)。
俺とのタイマンが始まってから既に5分以上が経過。その間に何度も身体に深い傷を入れたり、先程のように魔術で身体を焼かれたりして何度も再生を使っているが、全く体力エネルギー切れを起こす様子がなく、攻撃のキレもずっと最高を維持している。
一体何故なのだろうか?今までの戦いの経験から考察してみる。その時、頭に思い浮かんだのは天使の翼を持ったアモーラ狂信者カールだった。
カールは異世界人ではないが、アモーラから能力を授かり、猛威を奮っていた。彼のもらった能力は2つ。天使の羽とダメージを筋肉に変換する能力。俺が初めて出会った能力2つ持ちの人間だ。
もしや、ジールも能力を複数持っているのでは?そう思い立った時にはジールの爪と鍔迫り合いをしていた。
「ジール・・・アンタもしかしなくても能力複数持ちだな?」
「正解だ。答えに辿り着けたのは経験か?それともカンか?」
「経験だ。予想するに無尽蔵の体力とエネルギーって感じだな。生きる永久機関ってわけだ」
「それも正解だっ!だが、聞いてなんの意味があるんだ?超えられぬ壁が更に高くなっただけだぞ?」
「いいや、低くなった・・・というよりも、登り方が分かった。と言った方が正しいな」
幸助が今まで培ってきた経験から目の前の無限機関持ちの化け物の倒し方は既に完成されていた。しかし、その撃破方法は自分の身の安全は保証できない捨て身の戦法である。だが、実力に圧倒的な差がある幸助にはその危険な方法しか残されていなかった。
「登り方か・・・一体どんな方法だ?俺にも教えてくれよ」
「知りたいか?知りたいなら───────剣で語り合おうじゃないか!」
「・・・ベタだな。裏切者、お前日本アニメ好きだったろ?」
「ああ、大好きさ。そういうお前は俺と近い時代の人間っぽいな。一体何処出身だったんだ?」
「俺か?俺はな・・・日本だ」
明らかにヨーロッパの顔つきなのに日本人と名乗られた幸助は首を傾げ、?を浮かべる。
「お前は転移だろ?俺は違う。転生してこの世界へと舞い降りてきた。能力を貰えただけでなく、貴族の子に生まれたお陰で何不自由なく大人になるまで暮らしてきたよ。地下に進撃するまではね」
「・・・アモーラか?」
「神か様を付けろ無礼者!俺が進軍に苦しんでいるのは俺自身が心身共に未熟で魔族を落としきれないからだ!正気を失い魔族を倒すためだけに動く他の異世界人はもっと惨めだけどな」
「・・・クソ女神」
「貴様・・・」
「そもそも、何故あんな奴を尊敬できるんだよ。人を勝手に殺しておいて恩人面して恩返しさせようとさせるやつだぞ?俺だったら真っ先に復讐を誓うね!ていうか、現在進行中だね!」
「貴様の妄言を口にするなぁぁぁぁ!!」
爪が俺の心臓を貫かんと突いてくる。俺は爪を反撃の盾で弾く事なく、完全に防ぐ。
「今だ!真価を発揮しろ!反撃だぁぁ!!」
「な、何!?う、うわぁぁぁ!!」
反撃の盾の効果である攻撃の4分の1を衝撃波に変換して相手に与える効果が発動し、ジールは勢いよく吹き飛ばされて行った。距離で言うと、15mぐらいだろうか?盾の加護にしては強力だと思う。
「これを上手く使えば・・・よしっ!来い!ジール!」
「お前から来いやぁぁぁぁ」
叫びながらジールは俺に突進してきた。
「どうした!どうした!?動きが悪くなっているぞ!!」
「ぐぅぅ・・・!!」
ジールに防戦を強いられていた。精錬された身のこなし。息をつく暇も与えない連続攻撃。斬っても斬っても再生し続ける身体。どんなに致命傷を叩きこんでも再生するので、全く勝負の終わりは見えない。
ジールの戦法は能力を生かした捨て身覚悟の超攻撃型。前のめりに爪で身体をひっかいてくる様はまるで肉食獣。こちらも一生懸命崩しては一撃を叩きこむが、すぐに無効にされてしまう。
痛覚も何度も攻撃を喰らい続けたせいで狂ってしまったのか、まるで痛がる様子はない。寧ろ笑みを浮かべて喜んでいるすらある。
買ったばかりのミスリル鎧は既に爪痕だらけだ。それでも、深い爪痕が付いていないのは、ミスリルが優秀な金属である事を証明している。
「ほらほらほらぁ!!どうだぁ!攻撃する隙すらも無いだろう!」
「お前が間合いを詰めてくるお陰でなっ!!」
盾で防ぐと同時に全身の体重を使って後ろへと押し込む。自分自身も後ろに下がると、幸助は建物の屋根ぐらいの高さまで高く飛び上がった。
(こうなったら、一撃でその脳味噌と心臓をぶった斬ってやる!!覚悟しろよ!)
天井に剣先を向けるように構える。落下の速度と重力を活かして一刀両断を画策しているらしい。幾度の戦場を潜り抜けてきたジールには手に取るように分かった。幸助の浅はか考えを呼んだジールは同様に高く飛び、幸助と同じ高さまでやって来た。
「甘いわ!若輩者め!!その程度でベテランを倒せると思ってるのか!?」
「まじか!!・・・でも、これは予想できたかな?」
「何?・・・ぐああああああああ!!」
剣を握る左手を離すと、手のひらから火炎放射を発射。ジールの身体に火をつけた。中級魔術のフレイムだ。アモーラ宮殿の騒動の後も魔術の勉強を怠らなかった言わば努力の賜物である。
不意打ちの火炎放射にたちまちジールの身体は焼け、重力に従い地面へと落ちていく。全身が火傷に覆われて隙だらけになったジールを幸助が見逃すはずがなく、予定通り、身体を左右に分けるように剣を振り下ろした。
「甘いぞ!小僧!!」
しかし、瞬間に意識を幸助へと再び向けたジールの金属の爪によって、防がれてしまう。空中で、地面を踏んで踏ん張れない為、押し勝つことができない。空中で仕留める事は出来ないと察した幸助は一旦地面へと降り立ち、着地と共に地面を蹴りジールを殺さんを斬りかかる。
ジールの落下地点に土煙が舞う。土煙ごとジールを斬るが、高い金属音と共に硬い物によって止められてしまう。
「だから、甘いと言っているだろう。何もかも・・・身体能力も技術もトドメの刺し方もな!」
土煙の中から出てきたのは顔の中心からじわりじわりと焼け爛れた皮膚を交換するジールだった。全身に着火していた火は土煙によって消えてしまっており、再生も4割程完了していた。地面に落下してから10秒も経っていないというのに。
恐ろしき再生力と対応力だ。だが、少しおかしい点がある。人間は行動を行うには食事でため込んだエネルギーと睡眠や休憩などで補給した体力を使わなければならない。肉体の再生は特に2つの要素を顕著に消費する。俺もよくボニーさんに傷ついた身体を再生魔術で治してもらうが、その後は決まって身体がだるく重くなる(怪我の大小で変わるが)。
俺とのタイマンが始まってから既に5分以上が経過。その間に何度も身体に深い傷を入れたり、先程のように魔術で身体を焼かれたりして何度も再生を使っているが、全く体力エネルギー切れを起こす様子がなく、攻撃のキレもずっと最高を維持している。
一体何故なのだろうか?今までの戦いの経験から考察してみる。その時、頭に思い浮かんだのは天使の翼を持ったアモーラ狂信者カールだった。
カールは異世界人ではないが、アモーラから能力を授かり、猛威を奮っていた。彼のもらった能力は2つ。天使の羽とダメージを筋肉に変換する能力。俺が初めて出会った能力2つ持ちの人間だ。
もしや、ジールも能力を複数持っているのでは?そう思い立った時にはジールの爪と鍔迫り合いをしていた。
「ジール・・・アンタもしかしなくても能力複数持ちだな?」
「正解だ。答えに辿り着けたのは経験か?それともカンか?」
「経験だ。予想するに無尽蔵の体力とエネルギーって感じだな。生きる永久機関ってわけだ」
「それも正解だっ!だが、聞いてなんの意味があるんだ?超えられぬ壁が更に高くなっただけだぞ?」
「いいや、低くなった・・・というよりも、登り方が分かった。と言った方が正しいな」
幸助が今まで培ってきた経験から目の前の無限機関持ちの化け物の倒し方は既に完成されていた。しかし、その撃破方法は自分の身の安全は保証できない捨て身の戦法である。だが、実力に圧倒的な差がある幸助にはその危険な方法しか残されていなかった。
「登り方か・・・一体どんな方法だ?俺にも教えてくれよ」
「知りたいか?知りたいなら───────剣で語り合おうじゃないか!」
「・・・ベタだな。裏切者、お前日本アニメ好きだったろ?」
「ああ、大好きさ。そういうお前は俺と近い時代の人間っぽいな。一体何処出身だったんだ?」
「俺か?俺はな・・・日本だ」
明らかにヨーロッパの顔つきなのに日本人と名乗られた幸助は首を傾げ、?を浮かべる。
「お前は転移だろ?俺は違う。転生してこの世界へと舞い降りてきた。能力を貰えただけでなく、貴族の子に生まれたお陰で何不自由なく大人になるまで暮らしてきたよ。地下に進撃するまではね」
「・・・アモーラか?」
「神か様を付けろ無礼者!俺が進軍に苦しんでいるのは俺自身が心身共に未熟で魔族を落としきれないからだ!正気を失い魔族を倒すためだけに動く他の異世界人はもっと惨めだけどな」
「・・・クソ女神」
「貴様・・・」
「そもそも、何故あんな奴を尊敬できるんだよ。人を勝手に殺しておいて恩人面して恩返しさせようとさせるやつだぞ?俺だったら真っ先に復讐を誓うね!ていうか、現在進行中だね!」
「貴様の妄言を口にするなぁぁぁぁ!!」
爪が俺の心臓を貫かんと突いてくる。俺は爪を反撃の盾で弾く事なく、完全に防ぐ。
「今だ!真価を発揮しろ!反撃だぁぁ!!」
「な、何!?う、うわぁぁぁ!!」
反撃の盾の効果である攻撃の4分の1を衝撃波に変換して相手に与える効果が発動し、ジールは勢いよく吹き飛ばされて行った。距離で言うと、15mぐらいだろうか?盾の加護にしては強力だと思う。
「これを上手く使えば・・・よしっ!来い!ジール!」
「お前から来いやぁぁぁぁ」
叫びながらジールは俺に突進してきた。
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