大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太

文字の大きさ
上 下
166 / 212
四章 魔族との和平交渉

第三十一話 俺が寝ている間に何があった?

しおりを挟む
「ふわぁ・・・良く寝た。あれ?二人共何やってるの?」

「おはようございます、コウスケさん。今トランプやってるんです」

「コウスケ、このゲーム面白いな。地上との関係が完成したら林檎と一緒に輸入しよう」

 数時間の睡眠を終え、体力を完全に取り戻した幸助は2人がトランプをやり終えるのを待ち、寝ている間の事を聞いた。

「コウスケさんが寝る直前にランマルさんが助けに来てくれたのは覚えていますよね?ランマルさん、旅ですんごく強くなってて、ジールを撤退まで追い込んだんです」

「あの体力お化けに押し勝ったの?」

「はい。その後、時間稼ぎの為に破壊された鉄の門を閉め、溶接しました。いつまで持つか分かりませんが・・・」

「ボニーさんは?」

「怪我人の治療をしてます」

 悪くなりかけていた状況を何とかして持ち返そうとしている。それが今の状況だ。しかし、いつまで緊急補強した門が耐える事が出来るのか分からないのが怖い。

「今すぐに戦いの準備をしないと・・・アメリア。俺の着る服は?」

「準備してある。サイズもピッタリのはずだ」

 採寸でもしたかのように俺の身体にピッタリな服を着る。次に必要なのは防具たちだ。前回の戦いでジールに挑むには流石に鎧が必要だと痛感したようだ。

「俺の鎧は直ったか?」

「その事なんだが・・・実は今しがた鍛冶屋に行ってきたところ、あまりにも損傷が激しすぎて鎖帷子以外は直らなかったそうなんだ」

「ここに来るまで大分無茶したしな。仕方ない。俺もプレートアーマーデビューするか。アメリア、鍛冶屋が何処にあるんだ?」

「城前にがファイト―ル様の証が看板になっている建物がある。それが鍛冶屋だ」

「よし、じゃあ行くか。メアリーはどうする?」

「・・・・・・」

 声をかけるがメアリーは気持ちは上の空の様子。目の前で手を叩いて意識をこちら側へと強制的に戻す。

「メアリー?」

「・・・ㇵッ!そ、そうですね!私もガントレット見てほしいですし、行きましょう!そうしましょう!」

「大丈夫か?メアリー。体調が優れないなら無理に行かなくても・・・」

「いえいえ!大丈夫です!ぼーっとしてただけなんで!それでは行きましょう!」

 メアリーは俺の手を握ると、引っ張って外へと出ていく。リビングを出る際、アメリアが妖艶な笑みを浮かべていたが、まだ発情が解けていなかったのだろうか。



 アメリアの屋敷は案の定、城の近くに位置していた。城は鉄の門から一番遠い場所に位置している為、建物が破壊された痕跡は見えないが、あちらこちらで兵士や騎士達が走り回っている。怪我人を運ぶ者、家を修理する材料を運ぶ者、全員が訪れた危機に何とか対処しようとしている。

「あっ!同志殿!お目覚めになられたのですか!元気そうで良かったです!」

 しかし、皆笑顔だ。否、笑顔でいなければやっていけないのだろう。無理にでも笑顔を作らなければ暗い空気が漂う事を知っているから空元気を出しているのだろう。

 一生懸命に危機を乗り越えようとする地底人の姿に涙腺が緩む。同時に自分も協力しようと思う気持ちが強くなる。

 仕事に励む騎士達の邪魔にならないように歩き、ファイト―ルの証が看板になっている建物に辿り着く。まだ、20m程離れているが、金属を叩く音が鳴り響いている。営業している事に安堵し、鍛冶屋へ入ると色白の筋骨隆々の男達が金属を叩いていた。金属音があちらこちらから耳に入ってきて頭が痛くなりそうだ。

「おい!お前ら!」

 背後から話しかけられて振り向くと、2mはあるだろう男が入口から現れた。肩にはハンマーを背負っており、鍛治職人である事を示唆している。

「アメリア女王が言っていた地上人だな。マジで申し訳ないんだが、鎧と盾は治せなかった。直せたのは鎖帷子と、額当てだ」

「はい、アメリア女王から修復不可能だという話は聞きました。なので、新しい鎧を見繕いたいのですが」

「まあ、そうなるわな。おい!新入り!お客さんが鎧を見たいそうだ!2階段に連れて行ってやれ!」

「はい!」

 部屋の隅で掃除をしていた若い男が走ってくると、俺達を2階へと誘導する。階段を上り、2階に到着すると、待ち構えていたのは個性的な鎧達だった。基本的な物、棘が付いている物、魔術が込められた宝石が埋め込まれている物、極限まで金属を減らした物など、種類は様々だった。

「おいらのおすすめになっちまいますが、これはどうでしょう?スティンガーアーマー!魔物と戦うなら有効ですよ!」

 まず、最初におすすめされたのはあらゆる場所に棘が付いた鎧。確かにほとんどステゴロで襲ってくる魔物には確かに強いかもしれないが・・・。

「これ自分にも刺さらないか?」

「・・・たまに」

「別のにしよう。なるべく汎用性の高い鎧を頼む」

「では、これはどうでしょう?重すぎず軽すぎない。それでいて頑丈な鋼の鎧です。先代の国王様が若い頃に愛用していた鎧と全く同じものです。腕も真上に伸ばせますんで、動きやすい一品になっています」

 次に出されたのは基本的な作りの鎧。男が言った通り、肩の可動範囲もとても広い。確かに汎用性も高いが・・・。

「これよりもっと頑丈な鎧はある?これからちょっと面倒なヤツと戦うからさ」

「これよりも頑丈な鎧!?い、いや~~これ以上頑丈となるとしかありませんね。かなりのお値段になりますが、お財布、大丈夫っすか?」

「いざとなったら換金しにいくから良いよ。その鎧教えて」

「では、ついて来て下さい」

 今度は新入りの男が持ってくるのではなく、俺達をその鎧まで誘導する。紹介された鎧は白銀に輝く美しい鎧だった。

「こちらはミスリルという希少な金属が使われたうちの作品では最高の代物です!」

「ミスリル?」

 前の世界でやっていたゲームに出てきた単語だ。詳しくは知らないが。

「銀の美しさを持ち、鋼以上の強さを誇る貴族御用達の鎧です!持ってみると、分かると思うんですが、鉄より少し軽いんですよ」

 右手に鋼の鎧を、左手にミスリルの鎧を持つ。確かに鋼の方が重い。よし、これに決めた。

「いくらだ?」

「200万ファイになります。どうなされます?もし良ければこちらで換金しますが・・・」

「そうか?なら、これを換金できるかな?」

 バッグから林檎数個取り出し、渡す。新入りの男は林檎がどんなものなのか分かっていなかったようで、親方達のいる1階へと行く。

 数秒後、親方のうちの1人が焦った顔で俺の元に駆けつけてきた。

「おおおお客さん!これって・・・これってもしかして果実と呼ばれる物ですか!書籍でしか見た事のない!地上にしか生えないという伝説の・・・」

「ええ、そうです。今売ったらとんでもない値段になるんじゃないですかね?あ~~でも、あと少ししたら地上と地底の和平条約が成立されて価値は大分下がるでしょうね~~」

「な、何だって・・・?」

「林檎はね、地上では普通に生えている果物なんです。もし、和平が成立して地上と地底で貿易が始まったら価値は下がるでしょうね」

 アメリアに全てあげなくて良かった。まさか、こんな所で役に立つとは・・・。

「・・・・・・買わせてくれ!!ミスリルの鎧は持って行っていい!アンタみたいな強くて勇敢な戦士に使われるなら、本望だしな!!それじゃあ!!」

 林檎を大事そうに抱えると、親方は換金所に向かって走っていった。

「相変わらず親方は行動に移すのが早いな・・・さて、お客さん!サイズ調整をしましょうか!」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

【後日談完結】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長していった。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、そして・・・。 初投稿というか、初作品というか、まともな初執筆品です。 今までこういうものをまともに書いたこともなかったのでいろいろと変なところがあるかもしれませんがご了承ください。 誤字脱字等あれば連絡をお願いします。 感想やレビューをいただけるととてもうれしいです。書くときの参考にさせていただきます。 おもしろかっただけでも励みになります。 2021/6/27 無事に完結しました。 2021/9/10 後日談の追加開始 2022/2/18 後日談完結

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

処理中です...