大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太

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四章 魔族との和平交渉

第二十七話 手も足も出ない

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「──────むんっ!!」

(は、速っ!!)

 一気に間合いを詰めてきたジール。幸助は反射的に剣で防ぎ、はじき返す。

「やはりかなりの手練れだな。洗脳されてさえいなければ是非ともこちら側について欲しいくらいだ。だが、これだけでは終わらんぞ」

 間合いを取って、猫のように素早い動きで目にも止まらぬ連撃が幸助を襲う。盾を持っていない為、剣で攻撃を防ぐ必要があり、攻撃に全く転じる事が出来ていない。

「ところで、お前はどんな能力をもらったのだ?」

「はぁ・・・はぁ・・・貰ってねえよ!代わりに自由を貰ったんだ!」

「自由か・・・命を貰っただけでとどまらず、自由までもらうとは。傲慢なヤツだな」

「別に人の勝手だろうが!それに俺は運命のせいで命を落としたわけじゃねえ!アモーラが俺に病気を患わせたせいで死んだんだ!俺だけじゃねえ」

「成程な・・・それで?その妄想は何処で思いついたんだ?」

 本当の事を妄想だと断定されると腹立たしい。そのイライラが俺の動きを鈍くする。

「ぐっ・・・!!」

 ジールの爪が既に防御エンチャントの切れていた身体に3本の切り傷を付ける。爪はリーチが短いが、その代わりに小回りが利く上に同時に複数の傷をつける事が出来るので厄介だ。

「どうしたどうしたどうした?」

「あぁ!ぐぅ!・・・」

 一撃を喰らってしまい、完成されつつあった避けのパターンが破壊されてしまった事により、もつれるようにジールの連撃をモロに喰らってしまう。鎧を着ていないので服と身体はボロボロだ。

「「コウスケ!!」」

 幸助の危機にメアリーとアメリアが駆けつけようとするが──────

「ねぇねぇ、君達さぁ・・・1対1って知ってるww?」

「戦いの邪魔はさせないぞぉぉ」

 ハリーとノックによって行く手を阻まれてしまう。何とかして潜り抜けようとしているうちに幸助は爪での斬撃をその身に延々と受け続ける。

(クソ・・・攻撃が止む感じがしねぇ・・・なんていう莫大な体力なんだ。一体、レベルはいくつ何だ?)

 爪連撃が始まってから既に3分が経過。普通なら1分で疲れはじめ、2分経つ頃には最初のようなキレが無くなっていくはずだが、ジールの爪連撃は留まる事を知らない上に強さが最初と全く変わらない。その上息切れもしていない始末だ。

「い、イテェ・・・」

「・・・75発か。中々タフだな。一体レベルはいくつある?」

 ポケットからはみ出したカードを奪い、身体能力を確認する。

「レベル12でこのステータス・・・恐ろしいな。早めに摘んでおいて正解かもしれないな」

 レベル10だった幸助は度重なる異世界人との戦いで2つもレベルが上がったようだ。2つものレベルアップは幸助の身体能力を大きく向上させた。しかし、それでも何年も戦ってきた異世界人にとって敵ではなかった。

「その命、アモーラ様に返してもらおうか・・・」

 ジールの爪がゆっくりと幸助の胸へと入って行こうとした瞬間、ジールは後ろに突然現れた殺気に気が付いた。心臓を鷲掴みにされたような殺気に驚き、幸助から手を離し、後ろからの殺気に反応して爪でその身を守る。

 ガキィン!金属がぶつかり合う音が響く。心臓を鷲掴みにするような殺気の持ち主の使う武器は東洋で使われる独特な曲刀。あまりの切れ味のよさに西洋の冒険者もその武器の名を知っている者は多い。その武器の正式名称は『刀』。東洋の島国の剣士サムライやブシが愛用する武器である。

 不意打ちを防がれた男はジールを足蹴にし、間合いを取る。男は刀だけでなく、東洋の島国の剣士が愛用する独特の鎧も身に纏っている。だが、鎧の例に漏れず、普通よりも身体がずんぐりしてしまっている。きっと、厳つい顔立ちの男なら様になっていただろう。

 しかし、鎧を纏い、刀を振るう男はまるで女のような顔立ちで、勇ましくは見えなかった。代わりに美しく見えた。

 サムライ・・・否、武士の顔を見た幸助は出血多量でロクに動かない腕を震えながら伸ばして男の名を呼ぶ。

「蘭丸さん・・・」

 幸助の意識はここで暗転した。
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