大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太

文字の大きさ
上 下
159 / 212
四章 魔族との和平交渉

第二十四話 剣一本で戦う愚か者

しおりを挟む
「コロスコロスコロス!!」「アハハハハハハハハハアァァァァ!!」「全てはアモーラ様の為に!!」

 最前線である門前にやってくると、当たり前だが、ジースト騎士と俺と同じ異世界人が交戦していた。まだ、戦闘が始まったばかりだからだろうか?若干ジースト側が優勢だが、いつ劣勢になってもおかしくない戦力差だ。

「くそう!!どんなに斬っても斬っても進んできやがる!!ひるむなりしろよ!!」「クソ!コイツ魔力が尽きねぇのか!?魔術が止まれねぇ!!」「ぐわぁぁぁ!首を噛むな!血、血が!血が吸われていく・・・」

 ジースト騎士自体の実力は素晴らしいが、やはり神から力を与えられた異世界人を相手するには難しいようだ。

「メアリー、防御エンチャント!!」

「はいよ!!」

 全身を青透明の鎧が覆う。短時間だが、防御力を得た俺は、まず攻撃が効いていない異世界人を殺しにかかる。

「はぁ!!」

 鎧の隙間を縫うように斬撃を叩きこむ。中々の出血量だ。しかし、異世界人はひるむ事なく付き進んでくる。どんなに痛い攻撃を喰らっても動じない。これは恐らく痛覚を遮断しているんだ。決して攻撃が効いていないわけではない。

「弱点が分かればこっちのもんだよっ!!」

 横から襲ってくる剣を弾き、喉仏を刺す。すると、異世界人は血の泡を吹いて絶命した。

「よし!次──────ん?」

 後ろからただならぬ気配を感じる。俺を殺さんと──────否、俺を喰わんとする意思が感じられる。急いで振り返ると、吸血鬼のような恰好をした男が牙を剥き出しにして俺の首筋に噛みつこうとしていた・・・・が──────。

「どっせーーーーい!!」

 メアリーの雷を纏った蹴りによって完全には開ききってはいない鉄の門に激突した。

「サンキュー!メアリー!」

「礼は要らねぇ。とりまアイツ殴り殺してくるわ」

 拳に氷の刃を纏うと、吸血鬼モドキに向かって走り出した。

「じゃあ、俺はお前の相手でもするか・・・」

 右半身から感じる冷気。右を向くと、ジースト騎士を数人凍らせてしまった魔術師の異世界人がいた。フードで顔が良く見えないが、顔立ちはアジア人そのものだ。

「魔族ぅぅぅぅぅぅ!!魔族ぅぅぅぅぅ!!」

 標準は俺に定まったようで、魔術師は俺に右手の平を向けてくる。すると、氷が地面を走り、俺の足元に巨大なとがった氷塊を発生させた。その高さ驚きの2m!簡単な動作しかしていないのに上級魔術レベルの氷が発生した。魔力が尽きないと言われていた異世界人というのはコイツか。

「魔族ぅぅぅぅ!!」

 再び氷が俺を貫かんと地面を走る。避ける為、横に移動すると、走る氷はまるで生き物のように軌道を変え、俺を襲ってきた。今度は槍のように鋭くて細い氷だ。

「ぐっ・・・!」

 避けるのがほんの少し遅れたせいで肩に当たってしまうが、防御エンチャントのお陰で貫かれる事はなく、衝撃を受けるだけにとどまった。

「魔族魔族魔族魔族ぅぅぅ!!」

 氷の槍で仕留められなかった事にイラついたのか、魔術師は連続で氷塊を宙に作り出し、俺に向かってぶつけてきた。走ってくるのではなく、飛んでくる氷塊ならばこちらも攻める事が出来る。

「ふっ!はっ!はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 飛んでくる氷塊を避け、魔術師との距離を縮める。まさか魔術師側も詰められると思っていなかったのか同様しており、俺のタックルをモロに喰らい、倒れる。仰向けになった魔術師の上に馬乗りになり、剣を突き立てようとするが、咄嗟に氷を発生させられてしまい、直前で止められてしまった。

「ぐううう・・・!」

 氷は進行していき、俺の腕の第一関節まで凍結させる。更に凍っている為、力が上手く入らない。逆に今、力を魔術師側に入れられたら氷と一緒に腕が砕けてしまいそうだ。それなら──────

「『フレイム』!!」

 氷に包まれた手に火が灯る。最近覚えたばかりの炎の中級魔術だ。これで一気に溶かす!!

「うおおおおおおりゃああああああ!!」

 溶かし始めてから僅か15秒。指が動くようになったのを確認した俺は残りの氷を砕き、剣に力を込めた。

「ああああああああああ!!魔族ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 最後まで魔族地底人への殺意を剥き出しにしながら魔術師は絶命した。明らかに地底人の顔立ちでも無ければ、肌も太陽の光で焼けていたというのに終始俺を地底人と間違えるという事は地底人と見分ける事すら困難な状態に陥っていたのだろう。

 ほんの一欠けらの同情を胸に刃に付いた血を拭う。自分の周りに異世界人がいない事を確認して一息ついていると、ポンと硬い手に肩を叩かれた。反射的に振り返ると、後ろにはジースト騎士達が立っていた。

「同志殿・・・助力感謝します」

 騎士達は足取りを合わせて芸術にも匹敵する敬礼を幸助に向かって行う。すると、幸助は照れくさそうに頭をかき、口を開いた。

「気にしないでくれ。これからも助け合う関係になるんだから。堅苦しいのはやめよう」

「同志殿がそうおっしゃるのなら、我々もそうします」

 この時、地底人と地上人の関係の間に出来ていた溝が埋まったような気がした幸助だった。

「おい!コウスケ!騎士の野郎共!!なれ合いは後にしな!!まだまだ来るぞ!!」

 壊された鉄の門の先から聴こえる足音、地底人への殺意を現す呪言、赤く光る目。まだまだ休む暇は無さそうだ。

「行くぞ!皆!!俺についてきたいヤツだけ来い!!地底人と地上人の力見せつけてやるぞ!!」

「「「「「おおおおおぉぉぉぉぉ!!」」」」」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

【後日談完結】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長していった。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、そして・・・。 初投稿というか、初作品というか、まともな初執筆品です。 今までこういうものをまともに書いたこともなかったのでいろいろと変なところがあるかもしれませんがご了承ください。 誤字脱字等あれば連絡をお願いします。 感想やレビューをいただけるととてもうれしいです。書くときの参考にさせていただきます。 おもしろかっただけでも励みになります。 2021/6/27 無事に完結しました。 2021/9/10 後日談の追加開始 2022/2/18 後日談完結

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

処理中です...