大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太

文字の大きさ
上 下
126 / 212
三章 黄金の愛と銀の翼の騎士、2人ともぶっ殺す

第三十七話 息を合わせて倒せ!倒せ!

しおりを挟む
「めありー。気持ちは分かるが、ここは拙者にやらせてはもらえぬだろうか?」

「嫌だね。あんたにはメチャクチャ世話になってるが、これだけは譲れねえ。アタシだって、タイマンでやりたいんだ。我慢しろ」

「・・・承知」

「それに今は、復讐じゃなくて、あのクズを逮捕する事が優先だ。殺すなよ?」

「・・・・・・承知」

 相談が終わり、上を見上げると、鎧で重いはずの身体を持ち上げ、ジャンプ斬りを試みるピピンがいた。

「でりゃあああああ!!」

 あまりにも大振りで、不意打ちでなければ当たらなかっただろうが、もし当たっていたら即死していただろう。

「めありー!」

「はいよ!───『ビルドアップ』!」

 流石、死の危険を何度も潜り抜けた仲間と言った所だろうか。先程まで(大した事ではないが)揉めていたにも関わらず、素晴らしい連携をピピンに見せつける。

 元から鍛えてある蘭丸の筋肉に更に筋肉が付け加えられる。ほんの一瞬だが、筋肉が木のように太くなり、皮膚を軋ませる。腕の皮膚に痛みを感じながらも、重く鋭い一撃をピピンの胸へと叩き入れた。

「悪い!増強しすぎた!大丈夫か!?」

「大丈夫だ。今よりも身体の耐久性が低かったら耐えきれなかっただろうがな。れべるあっぷに感謝だな」

 身体に影響を及ぼすエンチャントには限界がある。その限界は人によって異なり、限界値はレベルアップによる身体と身体能力の向上による上がる。

 レベルアップがスロータイプなのにレベルが24に達している蘭丸は耐える事ができたが、まだレベルも耐久力も心許ないメアリーだったら、今頃皮膚が裂けていただろう。

 そんな痛い思いをして放った攻撃は、鎧によって、ほとんど無かった事にされてしまった。

「む・・・これでも駄目か・・・なら・・・めありー!!」

 腰に帯びていたサーベルを抜き、メアリーに向かって叫ぶ。すると、笑顔で魔術を使う準備を始めた。

「おっ!あれか!!良いねぇ~~アタシあれ好きなんだよな!!──────『サンダーエンチャント』!!」

 蘭丸の愛刀とサーベルに魔術で作られた雷が宿る。自慢の足の筋肉で跳ねると、宙で横回転し、そのままピピンへと向かっていく。

「雷獨楽つむくり!!」

 技名の通り、今の蘭丸は大きな殺人コマそのもの。切れ味の良い二本に加え、雷を纏っており、生物に攻撃するにはもってこいの技である・・・ピピンが特殊な鎧を着ていなければ・・・。

「ハハハハ!!無駄無駄!アモーラ様から授かった鎧をそんな弱っちい攻撃と雷で貫通するなんて不可能!!」

「くっ・・・!初めて試す技だったのだが・・・」

「わりぃ、そういえばアイツの鎧、魔術効かない事言うの忘れてた・・・」

「そのような情報は戦う前に言って欲しい・・・だが、そんなに良い鎧を装備しているというのに、何故あやつは攻守に優れた構えを取っているんだ?」

 異世界にやってきて様々な剣術を見てきたお陰で目が肥えた蘭丸には分かる。魔術を弾く能力と頑丈性を誇る鎧を着ているにも関わらず、攻守のバランスを考えた剣の構えをしていると。西洋の剣術を日本の剣術で例えるのは些か違和感を感じるが、例えるなら剣道の中段だろうか?特に特出してはいないが、バランスが保てており、一番使いやすい構え。ピピンは中段に似た構えをしていた。

 蘭丸は首を傾げた。どうしてそんなに素晴らしい防御力を持っているというのに、攻めの構えを取らないのだろうか?と。防御に不安を抱いているのだろうか?それとも、クセだろうか?考えられるのは前者だろう。ピピンは堕ちたが、その実力は本物。クセで構えを変えないなんてありえない。きっと、構えには理由があるはずだ。その理由を知る為にもまず──────

「その構え、崩させてもらおう!!」

「くぅ・・・!!」

 隙が無いなら作れば良い。誰がこんな良い言葉を言ったのだろうか。刀身の強度に不安がある蘭丸はフェイントを使った隙を作る戦法を用いる。胴を攻撃すると見せかけて籠手、頭を斬ると見せかけて胴と言った感じで、ペースを奪い、隙を生みだす。

 数十秒後、隙は生み出され、一瞬だが、バランス重視の構えが崩れる。崩れた瞬間に見えた胴に構えの秘密が隠されていた。ぽっかりと金色の鎧に開く穴。穴からは暗くてよく見ることができなかったが、素肌のような明らかに鎖帷子ではないモノがあった。

「そうか・・・お主、その穴を隠す為にわざわざ攻守に堅実な構えを取っていたんだな」

「ぎくぅ・・・!!そ、そんなわけ・・・」

「あぁ~~!忘れてたぜ!!そういえば、アタシのパンチでコイツの鎧に穴を開けたんだっけ!!」

「だからそういう大事な情報は戦う前に教えろ!!」

 もっと早く言ってくれていれば戦闘の長引かせずに、先に行った幸助達と合流出来たのに、と後悔のため息を吐く蘭丸だが、メアリーが戦闘時間短縮の為の弱点を作ってくれた事には変わりはない。

 勝ち筋は見えた。後は突き進むのみ。

「めありー!息を合わせろ!!」

「おう!!任せとけ!!ランマル!!」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

【後日談完結】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長していった。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、そして・・・。 初投稿というか、初作品というか、まともな初執筆品です。 今までこういうものをまともに書いたこともなかったのでいろいろと変なところがあるかもしれませんがご了承ください。 誤字脱字等あれば連絡をお願いします。 感想やレビューをいただけるととてもうれしいです。書くときの参考にさせていただきます。 おもしろかっただけでも励みになります。 2021/6/27 無事に完結しました。 2021/9/10 後日談の追加開始 2022/2/18 後日談完結

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

処理中です...