大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太

文字の大きさ
上 下
68 / 212
二章 濡れ衣の男を救え!!

第十六話 リゼットの屋敷に迫る刺客 パート2

しおりを挟む
 扉の外に出ると、俺らのリゼットさんの所まで案内してくれたメイドさんが怯えた顔で刺客の死体を見ていた。ついさっきまで話していたヤツが突然死んだのだから当然の反応だろう。

 先程殺した刺客にかなり乱暴されたのか、血高そうなメイド服は血が付着しているだけではなく、胸元が破けてしまっている。

「立てますか・・・?」

「は、はい・・・何とか・・・」

「すみませんが、部屋の中に隠れていてくれませんか?」

「分かり、ました・・・よろしくお願いします・・・」

 怯えるメイドさんに入れてから周囲の状況を判断する。周りには他の刺客はいないようだ。今さっき殺したアイツだけという可能性もあるが、仲間もいる可能性も十分にある。

「さてと、何か持ってるかな?」

 刺客の死体を漁り、ナイフと呼ぶにはリーチの長い刃物を手に入れる。モーニングスターは鎧でガチガチに身を固めた戦士向けの武器だ。敵が複数いる事を考えると小回りが利く刃物を使った方が良いだろう。

 モーニングスターを置き、ナイフに手を伸ばす。

「死ねぇぇぇぇ!!」

 手を伸ばした次の瞬間、上から仲間の刺客が降ってきて、俺の右腕をナイフで貫いた。

「ああ・・・!!」

「オレの仲間を殺した恨みだ!とくと味わえ!!」

 腰から別のナイフを抜き、もう一度襲いかかってくる。だが、次は不意打ちではなく真正面からの攻撃だ。なら、対策ができる!!

「うおおおおおお!!」

 幸助は雄たけびと共に勢いよく腕に刺さったナイフを抜き取り、迫りくる刺客の、右肩に深々と刺した。

「あああああああああああああああああ!!」

 血と共に刺客の低い音の悲鳴が屋敷中に響き渡る。痛みで倒れようとしている刺客を俺は穴の空いた右腕で支え、左手で刺客の肩に刺さっているナイフを寸胴の中身をかき混ぜる要領でゆっくりと動かし、肉を抉っていく。すると、刺客はあまりの痛みに悲鳴をどんどん上げていった。

「おい!どうした!?」「やられたか?!」「すぐに向かうぞ!」

 刺客はどうやら仲間意識が高いようで、仲間の悲鳴を聞いていてもたってもいられなくなったようだ。ぞろぞろと俺の方に足音が近づいてくる。右から1人、左から2人といった所だろうか?

「右から仕留める・・・!」

 利き手ではない左手でナイフを持ち、足音が聞こえる廊下の曲がり角で止まり、走って来た刺客が顔を出して瞬間、喉仏を貫く。喉を貫かれてしまい、声も出せないようだ。

「おい!何処だ!?」

 右の処理をしているうちに左から来ていた2人もさっきまで俺がいた場所に到達したようだ。

「おーーい!こっちだよ!!」

 気づいていないようなので、手を振って場所を教えてあげると、ナイフを両手に持ち、殺気丸出しでこちらへと走って来た。目出し帽のように口と目以外は隠れているが、仲間が殺されてかなりの焦りと怒りを感じているようだ。

「このクソヤローー!」「ぶっ殺してヤル!!」

 しかし、俺はというと利き腕をナイフで貫かれてしまった影響で2人も捌ける気がしない。どうしたものか・・・・・・。

「あの・・・お客様」

「誰だ!・・・って、君はさっきのメイドさんじゃないか」

 服を引っ張られる感覚に襲われ、後ろを振り向くとそこには、屋敷に入る前に俺のブロードソードを預けたメイドさんが俺の剣を大事そうに抱えながら立っていた。

「ナイスタイミング!でも腕が使えねぇ・・・」

 右腕はまだ出血が止まっていないし、力を入れると鈍い痛みが右腕に響く。傷口さえ塞ぐことができれば良いのだが・・・。

「お客様。その傷、私に任せて貰ってもよろしいでしょうか?」

「な、治せるんですか?」

「いえ、私は家事しか取り柄のない人間ですので魔術や奇跡は使えません。代わりに応急措置なら・・・ハァ!」

 メイドさんは何処からともなく包帯と安全ピンを取り出すと、俺の穴の開いた右腕に包帯を巻いてくれた。出血で傷口辺りはすぐに赤く染まってしまったが、それ以上血が広がる事はなかった。いつも通りとはいかないが、剣も握れる。

「サンキュー、メイドさん!今からちょっと荒事になるから後ろに下がっててくれ!良いな?」

「はい、ご健闘をお祈りします」

 そんなものを祈られたら勝たなくてはならない。幸助の剣を握る手に力が入る。

 ドタドタと足音を立てて近づいてくる2人の刺客。先程のように曲がり角で隠れて1人を殺す事は可能だろうが、その隙にもう1人が後ろのメイドさんを人質にしかねない。つまり俺に残っている選択肢は1つ。蛮勇ともとれる勇気で突っ込む事だ。

「うおぉぉぉぉりゃぁぁぁ!!」

「うわぁ!つ、突っ込んできたぞ!」

「ひるむな!ナイフをなげろ!!」

 矢のように飛んでくるナイフを避け、胴ががら空きだった刺客に剣を深々と刺す。

「お"・・・があ"・・・!!」

「マイケルゥゥゥ!!」

 仲間を思う叫びが屋敷中に響き渡る。今ので確信した。コイツら、大して強くはない。しかも、刺客として3流だ。

「へぇ、君マイケルって言うんだ。良い名前だね」

 残ったマイケルを壁に追い込み、首根っこを掴んだ。

「やべで・・・ごろ"ざな"い”で・・・」

 俺の知っている刺客は命乞いもしないし、情報を吐く前に自害している。しかし、俺が首を絞めているマイケルは子供のように泣きわめいて命乞いをしている。味方としては恐ろしいぐらい頼りないが、敵として・・・裁判を有利に進めるにはとても便利だ。

「じゃあ、何をするべきかは分かってるよな・・・?」

 マイケルを掴む手の力を強め、爪を立てる。最近切っていなくて完全に伸びきった爪はマイケルの皮膚を裂く。刺客として何の才能のないマイケルは首を赤べこのように縦に振った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

【後日談完結】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長していった。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、そして・・・。 初投稿というか、初作品というか、まともな初執筆品です。 今までこういうものをまともに書いたこともなかったのでいろいろと変なところがあるかもしれませんがご了承ください。 誤字脱字等あれば連絡をお願いします。 感想やレビューをいただけるととてもうれしいです。書くときの参考にさせていただきます。 おもしろかっただけでも励みになります。 2021/6/27 無事に完結しました。 2021/9/10 後日談の追加開始 2022/2/18 後日談完結

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

処理中です...