大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太

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二章 濡れ衣の男を救え!!

第十話 面倒くさいヤツに絡まれる

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「弁護士?何で?」

「控訴するんですよ、控訴。この世界の裁判も三審制でしょ?」

 裁判で不服な判決を言い渡されても、2回だけやり直しのチャンスが与えられる。それが控訴と上告だ。この世界はファンタジーを抜けば、ほとんど元いた世界と同じだ。ならば、裁判も三審制のはず。自警団リーダーの顔を見るに、どうやらその読みは当たっていたらしい。

「詳しいな。あっちの世界で法律でも学んでいたのか?」

「法律を学ぼうとしてたんですよ。その前に死にましたけど」

「だが、どうやって判決を覆すんだ?真実の神の前で裁かれているんたぞ?」

「それなんですが・・・本当に真実の神の前で裁かれたんでしょうか?」

「・・・どういう事だ?」

「裁判長、裁判官が金か何かを握らされて真実の神の教徒の力をジェイクさんの裁判の時に使っていない可能性を考えているんですよ」

「な、なんだと!?」

 人間は金に1番弱い。この世界の裁判官達が買収されたとは思いたくないが、可能性はゼロではない。俺はその可能性にかけている。

「というわけで、弁護士を紹介して下さいな!金は全額俺が負担するんで!」

「・・・弁護士の知り合いか~いたっけな~」

「もし、失敗したらリーダーさんは無関係、成功したらリーダーさんの手柄」

「俺の甥っ子が最近弁護士になったばかりだわ!新人で仕事が無いって言ってたから是非雇ってやってくれ!」

「リーダーさん、マジ大好きです」

 自警団リーダーの瞳が札束の形に変形する。やっぱり、お金には人間は勝てないというわけだ。



「よいしょっと・・・看守、鍵サンキューな・・・って、うわぁ!!」

 一足先に地上に上がったリーダーさんの驚く声が聞こえてきた。

「どうしたんですか?リーダーさん・・・って、誰?」

 気になって急いで梯子を駆け上がると、先程まではいなかった鎧姿の男が立っていた。

「うわぁ!!とは何だ、失礼なヤツだなこの町の平和を守る王国騎士のポール様に向かって」

鎧男の正体は全く動かないで巷で有名な王国騎士団の騎士だった。実質的な自警団の上司に当たる為、リーダーさんの腰が腰の曲がった老人のように低くなる。

「いやぁ、すみません~ポール様~まさか出くわすとは思っていなかったのでつい~」

「ふんっ、どうだか。それよりも見回り担当のお前がなんでこんな所にいる?見回りはどうした!!それくらいしか能のないお前が見回りをサボってどうする?えぇ?言ってみろ?」

 リーダーさんの眉間がピクピクと動いている。そうとうムカついているようだ。しかし、流石は社会人と言ったところだろうか、ニッコリ笑顔を顔にはっつけて見事な対応をしてみせる。

「いやぁ、すみません!ポール様!実はそこにいる彼がどうしても貴族殺しのジェイクと面会したいと言うものですから!血涙流しながら見回りを止め、彼を連れてきたしだいであります!!」

 全然見事な対応じゃないわ。俺の方に丸投げしてきたわ。

「なんだ?この薄汚い盗賊みたいな奴は。冒険者か?」

「はい、その通りです!流石はポール様!彼は冒険者ギルドのコウスケ・イズミ!銀行強盗のジョンと、狂信者アンリの逮捕に貢献してくれたギルドのスーパールーキーでございます!!」

「へぇ~あのジョンを逮捕?やるじゃん、農民に毛が生えたようなクズが」

 どうやらポール様は褒めるながら貶すのが大の得意のようだ。舐められたら殺すの精神の持ち主である蘭丸さんだったらキレていただろうが、俺にはバイトで培ってきたウザい上司との接し方スキルがある。

「いや~大変でしたよ~ジョンの逮捕の時は!選択ミスってたら死んでましたもん、ボク。あんな危険な奴らを毎日のように相手してる王国騎士団の方々の苦労が身に染みて分かりました!いつも、命をかけたご勤務ご苦労様です!!」

 ぺこりと90度頭を下げる。こうする事でこういうタイプのバカは

「ほうほう。中々分かってるじゃないか!農民ごときのクセに~。まあ、でも、どんなに頑張っても僕達王国騎士には到底勝てないからあ・き・ら・め・な?それじゃあな~」

 最後の最後まで人の神経を逆撫でしたポール様は愉快そうにスキップを踏みながら牢獄入り口から出ていった。そして、出ていった瞬間、近くにあった机を思い切り殴った。

「あ~最悪。今日は酒飲みまくろ」

「いつもあんな感じなんですか?」

「うん、あんな感じ。それにしても対応完璧だったぞ、コウスケ」

「ああいうのは無意味に褒めてれば良いのは知ってたので」

「知っててくれて助かる。下手したら30分説教コースだったからな、俺より弱いクセに。それじゃあ、また明日」

 久しぶりに前の世界のバイトの思い出をつまみに今日はワインを楽しんだ。



 次の日も仲間の依頼の誘いを断って、自警団の集会所へとやってきた。リーダーさんによって弁護士を紹介されるからである。

 いつものように集会所に入ると、いつもはいない爽やかな青年が椅子に座って紅茶を優雅に飲んでいた。

「おう、来たかコウスケ。コイツが昨日言った俺の甥で新人弁護士のマートルだ」

 マートルさんは立ち上がると、右手を差し出してきた。

「よろしくお願いします。お互いに頑張りましょう!!」

 見た目通りの爽やかな人だ。もっと物静かな人が来ると思っていたから内心ちょっと驚いている。

「それじゃあ、早速ですが報酬はどうします?」

「勝訴はほぼ不可能な裁判なんで100万・・・と言いたいのですが、私もまだ新人で名前を売り出し中ですので75%オフの25万で手を打つのはいかがでしょう?」

「25万ですね。分かりました」

 少し前までなら躊躇していた金額だが、前よりも報酬の高い依頼をできるようになった為、25万なら揃えるのは難しくはない。

「ただ、弁護をする前に1つ頼みたい事があるのですが・・・よろしいでしょうか?」

「何でしょうか?私には弁護しかできることはありませんが・・・」

「その弁護をする前に確かめてほしい事があるんです。真実の神の教徒の力を使ってね」

 裁判に関わる職種は全員真実の神の教徒ではければならない。なら、裁判官でなくても真偽は判断できるはずだ。



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