大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太

文字の大きさ
上 下
61 / 212
二章 濡れ衣の男を救え!!

第九話 濡れ衣!?ジェイクの無罪を主張しろ

しおりを挟む
「ランマル、お前が現れるつい1か月前の事だ。アイツは貴族の男を殺したとして逮捕されたんだ」

「クソ・・・遅かったか」

 希望が再び絶たれてしまった蘭丸は打ちひしがれてしまう。やっとの思いで上から垂らしてもらった縄を切られてしまった蘭丸の顔はまるで死んだ魚のような顔だった。

「何で、貴族?ジェイクって人は殺した貴族に恨みでもあったんですか?」

「いや、特に接点はなかった。ジェイク自身も貴族には良いヤツと悪いヤツがいるから面倒臭いと語っていただけで貴族に特別恨みがあったわけではない。だから今でも疑問は残っている。だが、しっかりと裁判も行ったらしいんだ。お前も知っている通り、裁判官は真実の神の教徒だ。嘘を難なく見抜く」

 真実の神の教徒は人間の嘘を見抜く能力を得る事ができる。故に冤罪の確率は0%だという。

「何でジェイクに会いたいかは分からないが、そんなに会いたいなら牢獄に行ってみたらどうだ?終身刑が言い渡されたらしいから面会はできるはずだ」

「どうします?蘭丸さん。会いに行きますか?」

「罪を被った者の力を借りようというのか?拙者は御免だ」

「さいですか・・・じゃあ、俺行ってきますわ」

 もしかしたらジェイクという人から他の記憶の神の教徒を見つけられるかもしれない。会えるなら会ってみよう。



 ケンタウロス退治から1日が経過。幸助は自警団の集会所へと訪れていた。面会と言っても、知りあいではない囚人と面会をする事は難しいらしい。そこで日々、犯罪者を逮捕していて、交流もある自警団なら力を貸してくれると思ったからだ。
 
「えぇ?ジェイクと面会がしたい?あの大悪党と?」

「はい。ちょっと彼から知りたい事がありまして」

「でも、知りあいではないから自警団を頼ったと。賢明だな。王国騎士に頼んでたら面倒な事になっていたぞ」

 相談したのは自警団のリーダー。話の分かる良い人だ。

「本来なら駄目!!・・・だが、アンタには恩がある。面会できるようにしてみせるよ」

「流石は自警団のリーダー。出来る男ですね」

「褒めても何もでてこねぇぞ。ほら、行くぞ」

 フラム城下町で犯罪を犯した者は自警団の集会所の近くにある。地下牢獄へと送られる。貴族を殺したジェイクもそこで監禁されているようだ。

「ジェイクってどんな人なんです?」

「市民の味方と呼ばれていた貴族を殺した大犯罪者!!・・・って、世間では言われているがとてもそんなヤツには見えないんだよな~~ギルドの奴らからも評判良かったし」

「でも、裁判官はジェイクが犯人だって見抜いたんでしょ?」

「ああ。でも、ジェイクは判決を喰らった後でもずっと無罪を主張した。今もたまに言っているらしいぜ」

「真実の神に見抜かれているのに?なんだか見苦しいですね」

 ジェイクの詳細を聞いているうちに地下牢獄の入口に到着した。金属製の扉を開けると、すぐ下に穴が掘られており、梯子がかけられている。

「梯子を3回下りたらジェイクのいる階だ。面会時間は5分、俺も同伴だ。良いな?」

「はい」

 梯子を下りた先の地下は壁も天井も床もレンガで固められており、とても頑丈な作りをしていた。左右には檻が作られており、中には黒と白のしましま模様の服を着た人が大量に閉じ込められている。囚人だ。囚人達は俺達を殺意のこもった目で見つめている。

「この地下牢獄は罪の重さによって、収監される階が異なり、下に行くにつれて凶悪犯罪者が多くなる。ここ地下1階にいる犯罪者は殺人未遂銀行強盗で捕まったヤツばかりだな。因みに地下3階までが最大だ」

「魔術師の犯罪者がいたら枷とか檻とか壊されるのでは?」

「魔力を吸い取る特殊な素材でできた枷を嵌めているから心配はない。元の世界では魔術は無いのか?」

「たまに魔術師を名乗るヤツはいましたけど、大体がインチキでしたね」

「そりゃあ、随分と面白そうな世界だな」

 更に地下へと続く梯子を下りると、より凶暴そうな人達が檻の中に入っている。そういえば、アンリはどうしたのだろう?アンリぐらいの犯罪ならここに入っていると思うのだが──────

「アンリは女子監獄だ。この地下牢獄は男専用で、女専用はちょっと離れている」

「まあ、一緒にしたら檻の中で犯罪が起きるだろうし、妥当といえば妥当か」

 そして、更に降りて地下3階。他の階と違って檻の中は木材で隠されており、見ることは出来ないようになっている。唯一ある穴は鍵穴と、食事を渡す為の横に細長い穴だけだ。

「地下3階の囚人は1つの檻に1人ずつ収監されている。そのまま檻に入って面会をするぞ」

「入った瞬間に閉じ込めたりはしないで下さいね?」

「俺から先に入るから安心しろ」

 自警団のリーダーが案内してくれたのは1番右奥の檻だ。地上にいた看守から借りた鍵を使い、中へと入る。

 中に入ると、全体的に痩せこけ、白髪混じりの金髪の青年が虚ろな目で壁をじっと見つめていた。他人が入ってきたというのに全くこちらを振り向こうとしないし、何か言おうともしない。まるで死体のような人だ。

「・・・コイツが、ジェイクだ。おい、ジェイク。お前と面会したい者を連れてきた。いつまでも壁を見てないでこっちを見ろ!」

 リーダーが少し怒鳴ると、ジェイクはゆっくりと俺の方向を向いた。

「面、会・・・誰だ?この人・・・」

「お前に聞きたいことがある者だ。お前の知り合いではない」

「どうもはじめましてジェイクさん。俺の名前は泉幸助。冒険者ギルドの者です」

「俺は・・・ジェイク。ジェイク・ワトー・・・よろしく」

 口数は少なく、声も震えているが、会話は可能なようだ。それに、礼儀もしっかりとしている。とてもじゃないが大悪党には見えない。

「早速、本題に入ります。貴方は記憶の神の教徒ですか?」

「ああ、そうだ・・・」

「記憶の神の教徒は失った記憶を戻せるという噂は?」

「本当だ・・・俺も治せる。君は、記憶を失ったのか・・・?」

「いえ、俺では無く仲間が記憶を失っています。大切な人の記憶を。その記憶をなんとかして取り戻すべく、記憶の神の教徒を探して、貴方にたどり着きました」

「・・・・・・」

「しかし、貴方はもうこの地下牢獄から出ることはできません。ですので、どうかお願いです。俺に他の記憶の神の教徒の居場所を教えていただけないでしょうか?」

 ゆっくりと頭を下げ、幸助は懇願する。しかし、返ってきたのはまたしても望んでいない答えだった。

「・・・すまないが知らない。記憶の神の教徒は世界各国に散らばった・・・友だった彼らがどこにいるかも分からない・・・」

「そんな・・・」

 再びふりだしに戻されてしまった。また1から調べなければ・・・。

「だが、俺がいる」

「え?でも、貴方はここから出られない──────」

「俺は何度でも言う。無罪だ」

 虚ろだった瞳に一瞬だけ光が宿る。宿った瞳の光は俺の心を槍のように突き刺した。なんて真っ直ぐな目なのだろう。とてもじゃないが大悪党のする目ではない。

「俺の、無罪を、証明してくれ・・・」

 効率としてはジェイクの無罪を証明する方が早い。しかし、そもそも濡れ衣ではない可能性だってある。そうだとすればとんだ無駄足だ。究極の二択だ、さあ、どうする?俺・・・。











「・・・・・・・・・・・・・分かりました引き受けましょう」

「ッ!!本当か!?本当に、本当に証明してくれるのか?俺を信じてくれるのか?」

「信じるか信じないかはまだ分かりません。信じるにはまだ情報が足りなさすぎますからね」

「だが、動いてくれるんだろう?俺を助ける為に!!」

「はい、利害の一致ってやつですね。ですが、証明できないと分かったら諦めますが・・・よろしいですね?」

「・・・分かった、期待している」

 無罪を証明するなんて今までやった事はないが、これも蘭丸さんの為だ。やるしかない。

「時間切れだ。行くぞ」

「はい」

 幸助と自警団のリーダーはジェイクの檻から出る。檻の鍵を閉めると、リーダーは俺に少し冷たい目線を向けてくる。

「・・・アイツの無罪を証明するのは至難の業だぞ?」

「そうかもしれませんね・・・でも、安心して下さい。今、名案が思い浮かびましたんで」

「名案・・・なんだ、言ってみろ」

 すぐに無罪か有罪か判断する方法・・・あるじゃないか、凄い簡単な方法が。きっと、俺以外の人でも思い付いただろうが、既に『有罪』と判決が出てしまっているから誰も試さなかったのだろう。

「弁護士を紹介して下さい」

 再審・・・控訴を求める。それこそ大罪人ジェイクを助ける方法である。












しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

【後日談完結】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長していった。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、そして・・・。 初投稿というか、初作品というか、まともな初執筆品です。 今までこういうものをまともに書いたこともなかったのでいろいろと変なところがあるかもしれませんがご了承ください。 誤字脱字等あれば連絡をお願いします。 感想やレビューをいただけるととてもうれしいです。書くときの参考にさせていただきます。 おもしろかっただけでも励みになります。 2021/6/27 無事に完結しました。 2021/9/10 後日談の追加開始 2022/2/18 後日談完結

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

処理中です...