大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太

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二章 濡れ衣の男を救え!!

第六話 10日ぶりの仲間達

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 ごった返す人の波、溢れ返る活気、営まれる商売。城下町ではそれが毎日のように存在する。幸助はそんな城下町を見て帰って来たのだと実感する。

「やっぱりこの活気が一番しっくりくるな」

「拙者はもう少し静かな方が好きなんだけどな」

「まあ、それは人それぞれ。それよりもメアリーとボニーさん見つけに行きましょう」

「それでは拙者はぼにーを当たる。幸助はめありーの方を頼む。めありーもお主が行った方が喜ぶだろう」

「別に蘭丸さんでも喜ぶのでは?」

「・・・お主、女子おなごと恋仲になった事はないのか?」

「2回ぐらいはありますけど」

「なら、何故・・・いや、良い。とにかくめありーを頼む」

「は、はい。分かりました」

 蘭丸の言葉が歯の間に引っかかったトウモロコシの繊維のように気になるが、幸助はメアリーを探しにギルド・・・・ではなく、住宅街エリアの路地裏へと向かった。


「いけぇぇぇぇ!!」「そこだ!アッパーだ!顎、割ったれーー!!」「避けろ!避けるんだ!ああっ、クソ!!」

 光あれば闇ある。フラム城下町は表はとても平和で過ごしやすいが、裏である路地裏では毎日のように野蛮な事が行われていた。暴力窃盗は日常茶飯事。床には薬物中毒者が死んだように転がっている。路地裏は社会から見放された腫物の集まる場所。しかし、それはどんなヤツでも受け入れてくれるという意味でもある。

 そんな路地裏では最近、とある人物がとある娯楽を持ち込んだ事により、全路地裏の民を熱狂させるブームが巻き起こっていた。その娯楽の名は「路地裏ファイト」である。1対1の殺す以外はなんでもありな殴り合いが今、路地裏の民の娯楽になっていたのだ。勿論、掛け金ありの戦いである。

 野蛮な路地裏ファイトだが、王者がいた。戦績21戦21勝0敗の誰もが認める王者が。王者は今、挑戦者と戦っていた。

「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 挑戦者のストレートパンチが王者の顔面に狙いを定める。あと0.1秒もすれば、パンチは王者の顔面に届き、顔面の骨をぐちゃぐちゃにするだろう。しかし──────

「テメェが死ね!!」

 挑戦者のパンチが届く前に王者の一閃のような一撃が挑戦者の顎に強烈な一撃を加える。

「あ・・・が・・・」

 顎を殴られた事により、脳味噌がシェイクされた挑戦者は白目をむき、口からカニのように泡を吹きながら倒れた。

「勝者!!チャンピオン・メアリー!!」

「はんっ、雑魚がよ」

 チャンピオンの名はメアリー。銀の髪が美しい小柄な少女である。

「さぁてと、次は・・・ん?この匂い、もしかして・・・」

 メアリーは何かを嗅ぎ取ったようだ。嗅ぎ取ったと同時に路地裏の出入り口から靴音が聴こえてきた。カツンカツンと、リズムよく響く。路地裏の民は侵入者に警戒し、武器を構える。いつでも襲えるように戦闘態勢を取る。そして、満を持して現れたのは、黒髪の優しそうな青年だった。

 メアリーは青年の顔を見た瞬間、野生染みた表情が一気に年相応の少女のものとなり、青年に向かってダイブするように抱き着いた。

「コウスケさん!お帰りなさい!!」

「おう、ただいま。10日ぶりだね、髪伸びた?」

「ちょっと伸びましたかね?それよりもどうでした?布教活動は?」

「まあまあの結果が残せたよ。わがまま聞いてくれてありがとね」

「いえいえ、お気になさらず。それじゃ、帰りましょう!私、お肉が食べたいです!!」

「OK、今日は俺が奢るよ。いっぱい食べな」

「えっ!?良いんですか!?やったぁ!!それじゃあ、皆さん、さようなら~~」

 チャンピオン・・・ではなく、少女メアリーは仲間と共に路地裏から去っていった。路地裏の民はメアリーのあまりの変わりっぷりに30分程、放心状態になった。


 一方、その頃蘭丸は・・・。

「そこのカッコいいお兄さん♪私と良い事しない?」

「そこのあんちゃん!ちょっと飲んでいかない?カワイイ女の子もいるよ?」

 城下町のグレーゾーン『娯楽エリア』に足を踏み入れていた。まだ、昼だというのに活気があり、道行く人に話しかけて自分の店に誘おうとする者が多く、欲望に負けて入ってしまう通行人が多数だった。

 しかし、蘭丸は特に欲望に負ける事なく、目的の場所へと到着する。店の名前は『女王の戯れ』。簡単に言うなら、SMクラブである。しかし、戦国の時代からきた蘭丸は何故、こんな店があるのか理解できないようだ。

「・・・いつ来ても理解できん。ここに来る者は修行僧か何かか?」

 ただただ殴られたり、暴言を吐かれたり、鞭に打たれて痛いだけだというのに、一定数の客が存在するという。おかしな趣味を持っている者もいるのだなと思いながら、蘭丸は店の裏側から入って行った。

「あら?いらっしゃーーい♡ランマルさん、お久しぶりね♡」

 裏から入ると、布面積の少ない下品な服を着た女が腰を大きく振りながら拙者に近づいてきた。女の正体は『女王の戯れ』のおーなーであり、女王の中の女王?らしい。ここで働いている・・・というより欲を満たしている仲間を連れ戻しに来た時に知り合った。恐らく知りあいの中でも上位に入る変態である。

「ボニーちゃんを迎えに来たんでしょ?あと、ちょっとでお客さんの相手が終わるから待っててね?」

「・・・分かった。ところで、何故耳元で囁く」

「だってぇ、そっちの方がエッチじゃん?」

「全く欲情しない。ただ耳がかゆくなるだけだ」

「んもう~~ランマルさんったら、ホントにカタブツなんだから・・・あ!来た来た!おーーい!ボニーちゃん!お迎え来たわよーー!」

 複数ある個室の1つから出ていたおーなーと同じような格好をした背丈の高い栗色の髪を持った女が出てくる。手には鞭が握られており、頬は朱色に染まり、息は荒いが、拙者達の仲間であり、元僧侶であるぼにーだ。

「あれ?ランマルさん、もう布教活動は終わったんですか?」

「ああ、待たせてすまなかったな。明日からパーティは再会するが、行けるか?

「全然大丈夫ですよ!ここは日雇いでやってますし、良いですよね?オーナー?」

「たまには帰ってきてね。ボニーちゃん。貴女とっても才能あるし、人気も高いから♪」

「勿論!!」

 拙者とぼにーはおーなーに別れを告げて。ギルドのある商業エリアへと向かう。

「ぼにー。お主、あもーら教を抜けてから物凄く楽しそうだな」

「ええ!アモーラ教は私にとっては枷でしたし!お陰で毎日が楽しそうです」

「そうか・・・それなら良かった・・・」

「あ、一回ランマルさんもやってみます?鞭打ち。意外と気持ちいいらしいですよ?」

「遠慮しておく」

 因みにこの世界にSMを広めたのは2010年の日本からやって来たドMの男である事は、SM界の最高レベルの秘密である。
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