大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太

文字の大きさ
上 下
13 / 212
一章 クソみたいな女神とクソみたいな異世界転移

第十二話 虚ろなる武士

しおりを挟む
 次の日、白緑の草原に行く準備をする為様々な設備が整っているギルドに早朝に向かった。

「さてと。防具屋はと・・・」

「やっほー!コウスケ!!今日はちょっと雲が多いね!!」

「うおぅ!?アンリか。びっくりさせないでくれよ」

 今日も元気なアンリの登場。今日は黄色の柄が入った赤いリボンをつけており、右手には依頼書らしき羊皮紙が握られている。また誘いに来たのだろうか?なら、今日は白緑の草原に向かうからはっきりと断れなければ・・・。

「コウスケ!今日こそ一緒に依頼に行こう!!コボルトっていう二足歩行の犬っぽい魔物の討伐なんだけどね!今回大量発生しちゃったから冒険者を大勢募集してるんだって!!」

 コボルト。前の世界でやっていたRPGに敵として出てきた事がある。ゲームでは雑魚キャラだったが、こちらの世界ではどのくらい強いのだろう?気になる。しかし、今日は絶縁草の採りに行かなくちゃならないんだ・・・。

「場所は白緑の草原!凄い近いからすぐに帰ってこれるよ!」

「乗ったぁ!!」

 最高だ。


 30分後、討伐の準備を終えた幸助はアンリと共に集合場所である城下町の出入り口までやってきた。集合場所では既に20人もの冒険者達が待機しており、これから向かう戦に向けて闘志を高めている。

「貴方がたもコボルト討伐の参加者ですか?」

「はい」「はい!!」

「では、もうすぐ説明が始まりますのでお待ちください・・・」

 スタッフのような人までいるのか。これはかなりの貴族か地主が依頼主なのではないだろうか?そんな事を考えながら冒険者が集まっている場所を歩いていると、周りが見えていなくて誰かにぶつかってしまった。

「すみません。周りが見えていませんでした・・・・・・・・・ん?」

 どうしたのだろう?相手からの返事がない。不思議に思ってぶつかってしまった人の顔を見る。しかし、笠らしき物を被っており顔が良く見えない。見えるのは後ろで結んだ黒い髪と口元のみ。背は俺より少し高いな。笠だけじゃない、服は袴を着用し、腰には日本刀に似た剣を帯びている。この世界の日本人に当たる人だろうか?

「・・・・・・」

 日本人らしき謎の男は俺の謝罪を見てない以前に俺とぶつかった事に気付いていない様子だ。歩き方もおかしい。まるで何もかも失ったかのような・・・押したら転んでしまいそうな危ない歩き方をしている。すでに火が消えてしまった蝋燭を見ている気分になる。

「コウスケ、あの人が気になるの?」

「ああ。俺のいた世界の昔の恰好をしてるんだ。アンリは知ってるの?」

「あんまり知らない。ずっと前からギルドに所属してる人から聞いた話だと1年以上ギルドに所属してるけど、一言も言葉を発しないし、誰とも話さないんだって。素顔も希望を失ったような~燃え尽きたような~面白くない顔してるらしいよ」

「世捨て人かな?」

「わかんない。でも、いざ戦ったらすんごく強いんだって!この討伐に参加したのもあの人の強さを見る為でもあるんだ!!」

 一見すると、関わらない方が良い・・・というか関わる事ができない人物。しかし、服装からか、何故か興味を持ってしまう。依頼が終わったら無理にでも話しかけてみようか。

「コウスケ!依頼主さん来たよ!」

 アンリに服を引っ張られ、指さす方向を向くと、ふくよかな貴族の男性が俺ら冒険者の前に現れた。

「冒険者の諸君。おはよう。今日は緊急だというのにこんなにも集まってくれて心の底から感謝する。依頼書を見ていると思うので既に知っているとは思うが、今回コボルトが白緑の草原で大量発生してしまった。このままだとその近くにある私の経営する農場が潰されてしまう。君達にはそうなる前にコボルトを退治してほしい。報酬はコボルト1体で4000アモだ。換金する場合は死体をしっかりと持ってくるように。首だけでも換金対象とする」

 一匹で4000アモ!?流石は貴族!!体だけじゃなく心まで太っ腹だ。他の冒険者達も歓喜し、雄たけびを上げ、口笛を鳴らす。

「ただし!条件がある。今回はコボルトの数がとても多い為、ソロで討伐する事を禁止とする。私の農場を守る為に人が死んだとなると後味が悪いからな。ソロで来てしまった者は至急パーティを組むように!!」

 少しだけだが、冒険者達が不満を呟く。もらえる報酬が減ってしまうからだろう。俺は絶縁草を取るついでに行くだけなのでそこまで不満は無いが、このままだと討伐に行くことができない、なんとしてでも3人集めないt──────

「勿論、私と組むよね?」

「え?あ、うん」

 何としてもあと2人集めn──────

「あっ!アンリちゃん!一緒に一緒にパーティ組m──────ゲッ」

 と思っていたが、アンリにお熱な魔術師が街灯に誘われた蛾の如くやってきた。嫌いなのは分かってるから本人の前では不機嫌な態度はちょっと萎えるから萎えるからやめてほしい。

「さて、残るは1人か・・・まだまだパーティを組めていない人はいる。その中から経験が豊富そうな人を見つけてパーティに招待するか・・・」

 残りの1人を探す為、目を動かす。背の高い女性僧侶・・・駄目だ、引き抜かれてしまった。小柄な女性魔術師・・・ああ、出遅れて他のパーティに取られてしまった。日本人らしき男・・・・・・誰にも声をかけられず、棒立ちしている。

「・・・行ってみるか。あの、すみません!!そこの方!!」

 かなり大きな声で話しかける。けれども返事はない。自分の事ではないと思っているのか、気付いていないのか。外見の特徴を言ったら反応を示すだろうか?

「そこの袴を着てる剣士の方!日本刀を携えて笠を被っている貴方!!」

 しっかりと特徴を言うと、ピクリと日本風の男は動き、俺の方を向き、囁くように言った。

「拙者は・・・武士だ」

「あ、そうなんですか・・・鎧着てなかったんで分からなかったです」

「そうか・・・して、若いの。何様だ?」

「あの~もし良ければ一緒にパーティ組めたらな~って・・・ダメだったら他を回りますのでご心配なく」

「そうか・・・分かった。入ろう」

「本当ですか!?ありがとうございます!!」

 ダメもとで行って正解だった。そして周りの人がざわめていいる。アイツが喋ったぞと驚いている。本当に今まで喋っていなかったようだ。

「どうやら準備は出来たようですね。では、出発します」

 意外に簡単にパーティを組むことができた俺らは貴族の雇われ人の指示に従って白緑の草原へと向かうのであった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

【後日談完結】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長していった。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、そして・・・。 初投稿というか、初作品というか、まともな初執筆品です。 今までこういうものをまともに書いたこともなかったのでいろいろと変なところがあるかもしれませんがご了承ください。 誤字脱字等あれば連絡をお願いします。 感想やレビューをいただけるととてもうれしいです。書くときの参考にさせていただきます。 おもしろかっただけでも励みになります。 2021/6/27 無事に完結しました。 2021/9/10 後日談の追加開始 2022/2/18 後日談完結

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

処理中です...