大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太

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一章 クソみたいな女神とクソみたいな異世界転移

第一話 【朗報】主人公、転生可能

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「──────って感じで死んだのは覚えてる。はっきりとね。それなのに・・・ここ何処?」

 俺の名前は泉幸助。不幸にも末期癌で死んだ男だ。そう、確かに死んだのだ。ゆっくりと心臓を停止させて眠るように。死ぬまではとても苦しかったが、死ぬ瞬間はとても心地よかったのは覚えている。なのに何故、俺の視界に美しい花畑が広がっているんだ!?

 何処までも続いていそうな美しい花畑、透き通るような青色の空。幸助はそんな桃源郷のような場所で目覚めた。

「もしかして天国?いや、絶対そうだろうな。だって、俺の身体ちょっと透けてるし」

 周りの景色に驚かされていたが、自分の身体も半透明になっている事に気づく。どうやら本当に天国のようだ。

「天国ではありません。ここはわたくしの花園です」

 後ろから声をかけられる。美しい声だ。包容力があり、何処か懐かしさを感じるような優しい女性の声。振り返るとミロのヴィーナスのように美しい容姿と、滑らかな栗色の髪の毛を持った女性が純白のドレスを纏って立っていた。女性の容姿、佇まいを見た者は皆、俺が思っているようにきっとこう思うだろう。

「女神・・・様・・・?」

 美しい女性はバラのような美しくも優しい笑みを浮かべた。

「嗚呼、可哀想に・・・こんなにも若いのに病で死んでしまうとは・・・」

 女神様は瑠璃色の瞳からホロリホロリと涙を流す。俺の為に悲しんでくれている?たった一人の人間に対して神様が?そう考えると急に罪悪感が湧いてきた。

「あんま気にしないでくださいよ!癌だって気づかなかった俺が悪いし、それに現世にはもう未練は残っていませんし!!」

「それなら良かった・・・ですが。貴方のような才能あふれる若者がこのまま死んでしまうのは我々神からしても大きな損失です。どうでしょう?別の世界に転生したいとは思いませんか?」

「別の世界?一体どんな場所です?」

「貴方が暮らしていた世界とは違い、魔法や魔物・・・そして魔族が存在する世界です。その世界の人々は魔族に苦しめられています」

「・・・はい」

「どうかお願いです。貴方の力でその世界を平和へと導いて下さい」

 女神様はそう言うと、俺ごときに頭を下げてきた。何て優しい人なのだろう。人間の為に上位の存在である自分自らが頭を下げるとは・・・何という高潔さ!貴族程度では相手にならないぞ!それにとても魅力的な誘いだ。それに女神様が頭を下げるくらいだ。きっとその世界の人たちは素晴らしい人たちに違いない。

 ・・・・・・だが────────────

「申し訳ございませんが、丁重にお断りさせていただきます」

 断らせていただく。

「えっ・・・ええ・・・」

 女神様もまさか断られるとは思っていなかったようで鳩が豆鉄砲を食ったような表情でこちらを見ている。まあ、そりゃあ、たかが人間ごときに頭を下げたのだ。きっと快諾してくれるに違いないと心の中で思っていたのだろう。

「な、何故です?貴方は苦しむ人々を考えると助けたいという気持ちにはならないのですか?」

「ええ、当然です。目の前で助けを求めてる人がいたら助けるくらいの良心は持ち合わせています」

「では、何故?」

「それはですね。この俺は縛られるのが大嫌いだからです!!」

 泉幸助。17歳にして自由を求める者。その性格は幼少期からであり、先生の言う事を聞かないのは当然。宿題忘れは基本という誰にも折る事はできない信念を持っている。更につい最近、受検勉強という呪縛から解放されたばかりで自由を求める性格が強くなってしまっているのだ。つまり言うと、魔族に苦しめられている人々から救うという行為を面倒臭がっているのである。

「か、可哀想とは思わないのですか?」

「可哀想とは思いますが、俺一人が行って何になるんですか?」

 多勢に無勢。どんな強者でも、大勢の兵士の前では袋叩きにされるだけ。それに俺は別に強者ではない。慣れても一兵卒だ。

「そこはご心配なく。私が貴方に好きな能力を1つ授けます。無限の魔力や、圧倒的なカリスマ、不死身というのも良いですね。他にも色んな能力がありますよ。貴方の世界ではチート?と呼ぶのでしたっけ?チートさえあればきっと魔族から人々を救えるはずです」

「・・・・・・」

「さあ、どうです?きっと一騎当千も夢ではありませんよ?」

「そんなに凄い能力をただの人間に付与できるのなら、女神様本人が赴いて魔族を蹴散らせば良いのでは?」

「えっ」

 今、「えっ」って言ったな。それに額からも汗が滝のように出てきている。何か不味い事でも言ったのだろうか?

「そ、その事なんですが~実は~その~・・・神は人間に直接干渉する事ができなくて・・・出来たとしても天啓という形で人間にアドバイスしか出来なくて・・・」

 成程、制約みたいなものか。確かに俺らの世界でも神と呼ばれる存在が現世に現れる事は無かった。女神様の言葉は本当なのだろう。

「因みに他の選択肢とかはあります?」

「天国ですね。1000年程暮らしていただいた後に再び現世へと転生していただきます。ただ──────」

「ただ?」

「貴方がた若者が好むような娯楽はあの世にはなく、あるのは豊かな自然と一日三食の食事のみ。これまでも数えきれないくらいの若者を天国へと誘いましたが、あまりに暇すぎて精神の老化が激しくなり、中には精神崩壊する者までいますので、あまり行くことはオススメできませんが・・・」

 どうしよう、どっちも嫌だ。俺はこれまで動画サイト、ソシャゲ、インターネットを娯楽として生きてきた。それがない世界なんて考えただけで嫌になる。対して異世界はどうだろう?ネットも無ければゲームも無いが、代わりに魔法と魔物が存在している。これはもしかしなくても暇を潰せるのは異世界なのではないだろうか?

 泉幸助は不自由を嫌う男である。また、不自由と同時に退屈も嫌う男である。故に悩んだ。退屈を選ぶか、不自由を選ぶか大いに悩んだ。悩みに悩んだ末、彼の頭にナイスアイディアが下りてきた。

「分かりました。この泉幸助、異世界へと転生したいと思います」

「そうですか!ありがとうございます!!・・・ゴホン。では、早速準備に入りたいと思います。転生するに当たって、どのように転生しますか?貴族?戦士?それとも王族?」

 キャラメイクかな?MMOをやるときに良くやった事を思い出す。あの時はパソコンの中のアバターのキャラメイクだった為、特にこれと言ったこだわりは無かったが、今回はアバターではなく、自分自身のキャラメイクだ。簡単に決めてはいけない。なので慎重に質問して選択肢を増やしてみる。

「俺、このままの容姿で生まれ変わりたいんですが、大丈夫ですか?」

「はい、可能ですよ。ですが、姿を変えないとなると、転移という形になってしまいますが、よろしいでしょうか?」

「それでお願いします」

 ナルシストに思われるだろうが、俺は俺が大好きだ。泉幸助としての記憶があるのなら、そのままの容姿でいたい。もし、容姿が変わっていたら違和感を感じてしまうだろう。

「では、この紙にほしい能力や武器を書いてください。日本語でも大丈夫ですよ?」

 来た!この瞬間を待っていたんだ!俺は!!

 首を縦に頷くと、目の前に質の良い紙と羽ペンが乗せられたテーブルが現れる。俺はすぐさま羽ペンを手に取り、紙に望むモノを一つ書き、女神に渡した。

「できました!どうぞ!!」

 我ながら完璧な笑顔で女神様に望むモノを書いた紙を渡す。紙に書かれたモノを見た瞬間、女神様は眉をひそめた。不味かっただろうか?このまま怒りを買ったとして消されたりはしないだろうか?きっと今、肉体があったら、心臓はバクバクと音を鳴らしていただろう。

「・・・・考えましたね」

「ほっ。良かった」

 どうやらお怒りではないようだ。

「それにしてもまさか───『使命や束縛に縛られない自由』を求めるなんて思ってもいませんでした。良いのですか?次に死んだら天国行きですよ?」

「承知の上です」

 俺が望んだモノは「自由」。誰にもどんなものにも束縛されない自由。それが手に入るなら俺は何もいらない。

「あちらの世界の言語は脳に直接教え込むのでご心配なく。貴方向けに言うならダウンロードと言うべきでしょうか?因みに頭はパッパラパーになる事はないのでご安心を」

「意外と現代の事良く知ってるよね、女神様」

「では、転送しまう。どうか、ご武運を──────」

 半透明の体が更に透けていく。意識も遠退いていき、死ぬ前の感覚にそっくりである。しかし、唯一違う点があるとするなら、恐怖はないという事だ。

 さようなら、世界。そして待っていろよ、異世界────────────
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