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最終章 悪魔戦争

182話 メアの羨望

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「さ、寝よう寝よう。明日に備えてね」

『フフ・・・そうですね』

 睡眠に入る為、目蓋を閉じてじっと睡魔がやってくるのを待つ。しかし、一向に睡魔はやってこない。理由は何となくわかっている。俺だ。俺が明日の鍛冶に緊張&興奮しているせいで眠れないんだ。

『マーサさん、眠れないんですよね?』

「流石はメアだね。そうだよ、全く眠れない」

『・・・では、眠れるまで少しお話でもしませんか?』

「・・・何か話したい事でもあるの?」

『何故、そう思うのですか?』

「メアがそんな事言うのは初めてだからかな。だから変に勘ぐっちゃったんだけど、どうかな?」

『流石はマーサさんですね。パァラの癖を見破った事だけはあります』

 メアは少し沈黙を作ると、一言言い放った。

『遺跡で私が私自身の生い立ちを知った時、その場で整理が付いたと言いましたね?』

「ああ、言ってたね」

『あれ、実は真っ赤な嘘なんです』

 メアの心情が赤裸々に語られる。

『本当は皆が・・・人間が羨ましかったんです』

「それはどういう意味で?」

『色々です。だって、人間には私には無い物がいっぱいあるでしょう?自由に動き回れる手足だけでなく、嗅覚と味覚もある。私にはそれがありません』

 メアは剣だ。食べる事も出来ないし、嗅ぐ事も出来ない。俺らが当たり前にできる事をする事が出来ない。

『最初は割り切っていました。自分は剣なんだから仕方ないと。自分にしかできない事があるのだから、それを果たすべきだと。本心を押し殺してきました。けど──────』

 彼女は知ってしまった。赤ん坊の頃とは言え、自分が人間だった事を。

『悪魔さえいなければ、こんな体になっていなかった・・・こんな使命を背負わずに済んだと思うと・・・羨望が蘇ってきて・・・辛くて・・・』

「・・・・・・」

『悪魔との決戦の日も近いです。マーサさんの言った通り、1年もかからずに悪魔達は地獄の門を蹴破り、400年前に封印された雪辱を晴らしにくるでしょう。そして、その悪魔達を倒した後、世界からは危機が消え去り、悪魔を倒す為に作られた私の役目は必然的になくなります。その時、私は一体何を生きがいにして生きれば良いのでしょう?』

 メアは泣かない。メアには目が無いから。しかし、不安を語るメアの声は震えており、泣いているように聞こえた。

 俺は鍛冶、ルッタは人助け、ベルセルクは戦闘。皆、永続的に続けられる生きがいを持っている。一方メアの生きがい、存在する目的は悪魔の殲滅。それを終えた彼女には何が残っている?人間の体を持っているならまだしも、彼女は剣だ。一体何を目標に生きていけば──────。

 考えている途中で、電撃のようにある事を思い出す。そのある事とは、メアの未来を明るくする事であった。
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