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最終章 悪魔戦争

180話 用意周到

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「演説ご苦労。これで何度目だ?」

「初めてですよ、国王。お世辞はやめて下さい」

「お世辞なんて言ってる場合じゃないさ。地下の光鉱石とシャイニングは明日の昼に運ばせて貰う。とりあえず光鉱石は10kgで、シャイニングは100gでいいんだな?」

「はい、よろしくお願いします」

「任せておけ」

 新たな国王は、王になりたてだからか、少しフレンドリーだ。王の振る舞いとしてはいかがものかと言う声が上がっているが、俺的には好きなのでそのままでいて欲しい・・・いや、流石に外交となるとまずいので変えたほうがいいか。

「マー君!ナイス演説でした!!」

「ハハッ、ありがとう。さっきも言ってたけど、調整は本当に終わったの?」

「はい!バッチリです!!後はどうやって、光鉱石の融点である4500度を出すかですが・・・」

「着火剤は問題ない。ブトックの木材を使うから」

「あの黒くて太っとい木ですね!!すんごい燃えるって聞きました!!」

「代わりにすぐに無くなっちゃうけどね。だから、ブトック以外にも、石炭とか、燃えにくい木材も入れる」

「大掛かりですね!一体いくらぐらいかかってんですか!?」

「安い買い物だよ。金貨20枚くらい」

「安いって言っておきながら、冒険者の平均年収1年分じゃねえか。随分と奮発したな、マーサ」

「今まで貯金してたからね。ここぞって時に使おうと思ってたんだけど・・・今がその時だ」

 鍛治以外を挙げるとするなら、マーサの趣味は読書。あまり金のかからない趣味だ。その為、金はどんどん貯まっていき、今回の出費を抜いても金貨35枚は残っている。

「勿論、俺だけの分じゃないぞ。皆んなの分も含めて一気に購入した。だから、そんなにかかったんだよ」

「それを奮発って言うんだよ」

 奮発という行為を人生でしたことがなかった為、言葉の意味を完全に理解していないマーサなのであった。

「ではでは!早速作りますか!?聖剣さんの新しい体を!!」

「いや、今日はもう休むよ。洞窟からここまでずっと全速力で走って疲れちゃったし。それに、グリット合金を作るのに必要な金属と木材が運ばれてくるのは明日の昼だ。ベルセルクを探してメアを回収して家でぐっすり眠ることにするよ」

「ず、随分と具体的ですね。マー君の頭の中には既に計画があるんですか?」

「まあね。パァラ、ベルセルクは何処にいた?」

「お前の演説聞いた後に、他の冒険者と一緒に訓練場に行ったぞ。走ったら間に合うんじゃねえか?」

「それもそうだな!!行ってくる!!」

 口では疲れたと語るマーサは、再び全速力でハンスを追いかける。結果、城から出た500mの所で追いつき、メアを回収することに成功した。
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