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5章 400年の輪廻転生

152話 5ヶ月半ぶりの帰郷

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 北の森への道は意外と長い。前に歩いて向かった際には森に入るまで12時間かかったのを覚えている。

 盗賊なんて住み着く事ができない広い草原を歩くのはとても気持ちがいい。今、世界に悪魔の手が近づいてきている事をついつい忘れてしまいそうだ。

 しかし、そんな草原にも魔物は存在する。存在するのだが・・・何故か襲い掛かってこない。俺達を見るや否や、尻尾を巻いて逃げてしまうのだ。獣系は勿論、虫系も、植物系も、そして、アンデッドも。

 俺達の強さを戦う直前に気づいて逃げたのだろうか?いや、厳密には違うな。多分、ベルセルクだ。

 ベルセルクの気配を察知して逃げ回っているんだ。魔物すら襲いたくないと思わせるのか、ベルセルクは・・・。

「あっ!そうだ!!マー君!ちょっと良いですか?」

「ん?どうしたの?お腹が空いたなら、俺のバッグの右側に乾パンが───」

「違いますよ!わたしの村です!別に急ぎの用事ではありませんし、一旦村によるのはどうでしょうか?」

 今向かっている北の森の中には、ルッタが生まれ育った農村がある。俺も顔なじみなので、頼めば調査には無駄な荷物ぐらいは置かせてくれそうだ。

「そうだね。ルッタも久しぶりに会いたいんでしょ?」

「はい!!成長したわたしを見てほしいんです!!」

 剣術の腕を磨いただけでなく、魔法の調節も一流の魔法使い並みに上手くなった彼女を見てどんな感想が出てくるのか、今から少し楽しみだ。

「あれが例の森か?」

「はい!!そうです!そうなんですけど・・・あれ?」

 ベルセルクが指差した先の森は確かにルッタの故郷がある森だった。森からは灰色の煙と、赤い火が上がっていた。

「うそでしょ!?また、ゴブリンですか!?」

「いや、もしかしたらゴブリンよりも酷いかもな。少し急ごう」

 どうして、森の中に隠れた農村だというのに、こんなにも頻繁に襲われるのだろうか?目的は、遺跡の調査だが、世話になった村が襲われているのを見捨てるのも心が痛む。

 5ヶ月半前は俺は死にかけ、ルッタの命も危険にさらしてしまった。だが、今は違う。俺とルッタは勿論成長したし、今はパァラもベルセルクもいる。戦闘面に関しては問題は無い。残す問題は1つのみ。

「パァラ、ベルセルク!走ろう!!その後に多分戦闘になるけど、構わない?」

「良いねぇ・・・さっきから戦えなくってフラストレーションが貯まってたんだ・・・ぶっ殺してやんよぉ!!」

「その勢いで村人まで殺すんじゃねぇぞ?あ、俺はやりすぎとかしねぇから安心しな?」

 2人とも準備は万端なようなので、森が全焼してしまう前に、森に向かって足を速めた。
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