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5章 400年の輪廻転生

145話 道徳の授業

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 城下町の再建を手伝い終えたパァラは、暇つぶしと再教育も兼ねて、ニコの家に住み込み、彼女の臨時師匠となっていた。

「よし、次88ページを開けぇ」

「はい・・・」

「読めぇい」

「えっと・・・『アレキサンダーは、ニーナを愛していた。しかし、彼女には婚約者がいた。アレキサンダーの親友、ペドロだ』」

「良し、ここで問題だ。アレキサンダーは人間としてどうするべきだ?」

「ふ、2人の結婚を祝って・・・ニーナへの恋心を捨てて新たな恋を探す」

「正解だ。やりゃあできんじゃねえか」

 パァラはニコの錬金術の師匠にはならなかった。代わりに、道徳の師匠になる事にした。

 既に心が成熟しているニコの道徳心を正すのは困難だろうが、師匠の経験が多いパァラはそれを難なくこなしていく。

「パァラ先生・・・一体いつまでこんなことをするんですか・・・?」

「目的の為なら手段を全然選ばない所が治るまでだよ。マーサの件はマーサにも非があるが、8割お前のせいだと言うことを忘れるなよ?」

「も、もちろんです・・・」

 ニコは、マーサの温情によって、罪の告発はされず、地下牢行きを免れた。なので、マーサ監禁事件を知っている者はごく僅かだ。

 これ以降、マーサを監禁しない事は確実と言っても過言ではないが、目的の為なら犠牲は厭わない性格は変わっていないので、その為の道徳教育である。

 しかし─────。

「先生・・・一体いつになったらマーサに合わせてくれるんですか?アタシ、3日前に会ったっきりでそろそろ禁断症状ががががががが!!!

「3ヶ月半待てたのに、なんで3日程度で我慢できなくなってんだよ!!」

「ドラッグと一緒です!!使えば使うほど頻度が高くなっていって、最終的には短期間吸わなくなっただけでも暴走するんです!!そして、今のアタシが正にそう!!」

 マーサにはっきりと好意を伝えたニコはマーサに甘えるようになった。それだと勉強に集中できない為、勉強が終わるまで会うのはご褒美という事にしていたのだが、ニコは禁断症状を起こしてしまっている。

「こうなったら、先生を睡眠薬で眠らせてその隙に────」

 こうなると、せっかくの勉強も一気に台無しに。ニコは再び目的遂行の為に犠牲や攻撃を厭わない野獣と化す。やはり、根本から変える事は不可能というわけだ。

 こうなると、止められるのはただ1人だけとなる。

 コンコン。ドアをノックする音が家に静かに響く。次の瞬間には、ニコの独り言は消え、ドアの前に移動していた。

「お邪魔しまっ────うおっ!!」

 訪問してきたのはマーサだった。ニコはノックの音で気づいたようだ。これが、禁断症状の成せる業なのだろうか?

「好きっ♡好きっ♡好きっ♡♡」

 抱きついて、マーサの胸に顔を擦り付けるニコ。まるでご主人が仕事から帰ってきた時の犬のようだ。
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