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4章 全ての元凶

121話 ギルドの地下

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 リッキーの言う通り、オストリッチ派の冒険者達はギルド内で寝泊まりをしていた。アルコールの匂いと、汗や吐瀉物などが混ざった悪臭が漂っている。毎日のように職員さんが掃除をしていたが、今は職員さんはいないみたいだ。

「ギルドが元に戻ったら職員さんにも感謝を伝えないとな・・・」

「アンタらしくないわね。あ、まだ起きてるヤツいる」

 全員が全員眠っているわけではない。泥酔状態の中ギリギリ寝ていない者もいれば、コーヒーか紅茶でも飲んだのか、目がギンギンの者もいる。

「眠らせるか・・・」

「酔ってるヤツはいけるけど、完全に目が覚めてるヤツは無理。スリープは効かないわ」

 睡眠催促魔法のスリープの効果は状況と相手の状態に依存する。

「カフェインで完全に目が覚めてるヤツもいるし」

「その、カフェインっていうのは何?」

「お茶とかコーヒーとかに入ってる成分。眠れなくなるの」

 お茶とコーヒーで眠れないのは、同じ成分が原因だったのか。知らなかった。

「流石は錬金術師だな」

「今度錬金学会に発表予定の事よ」

「それを俺に言っても良いのか?」

「問題ないわ。だって─────あっ」

「どうした?」

 ニコの視線の方を向くと、完全に目が覚めているオストリッチ派の冒険者が、股間を抑えながらギルドの外に出ようとしていた。

「カフェインには、尿の排出を促す効果もあるの」

「それは良い事聞いた。これからは寝る前は飲まないようにするよ。それで、あの起きてるヤツはどうする?」

「あら、そんなの決まってるじゃない」

「ああ、そういう事ね」

 戦鎚を取り出し、ギルドから出てきたオストリッチ派の冒険者の後頭部を軽く小突く。前のめりになって倒れそうになっている男を腕で支えて、ゆっくりと地面へ下すと、そこら辺にあった空き樽の中にぶち込んだ。

「さ、行きましょ」

「ああ、行こう」

 久しぶりに入るギルドは懐かしさを感じたが、それ以上に悪臭と汚れ具合で不快感を感じる。こんな状態にしたオストリッチ派の人間を今すぐにでも殴りたいが、グッと堪えて厨房の横にある地下への道を歩いていく。

 前までは物置として使われていた地下室だが、どう隠れ家に改造したのだろう・・・か?ってあれ?

「何も変わっていない?」

 地下室は、物置のままだった。物や食べ物が置かれている位置もまるで3ヶ月半前と変わらな──────。

「がっ!?」

 後頭部に強めの打撃が入る。頭蓋骨の中の脳が揺れ、意識が一気に薄くなっていく。誰からの攻撃かも分からないまま、俺の意識は闇の中へと落ちていった。









 
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