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3章 極悪囚人更生施設サルフル鉱山

78話 剣の師匠

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「脱獄に手伝えって事はつまり・・・わたしに犯罪の手伝いをしろって言うのですか!?」

「仕方ねぇだろ。捕まってる以上、何かもらっても没収されんだからよ」

 囚人には自由は無い。自由な飲食も娯楽も出来ない。確かに、そんな状況じゃ何か貰ってもまるで意味がない。むしろ、囚人生活が長くなるだけだ。

「で、でも脱獄ならハンスさんだけでもできるんじゃないんですか?あんなに強いわけですし」

「ああ、出来るな。代わりに兵士達の死体の山ができるけどな」

「・・・それは嫌ですね」

「オレも意味のない殺しは嫌いだ。悪いのは兵士じゃなく、無罪でオレをここにぶち込んだウォリアのクソ貴族のせいだ。兵士達を殺したら夢に出てきちまいそうだ」

「へっ?ハンスさんは悪い事をして捕まったんじゃないんですか?」

「信じてはもらえないだろうが、オレはある貴族と対決した。あっちが仕掛けてきたかつ、合意の上でな。んでもってオレが完膚なきまでボコしちまってな、プライドの傷つけたとか何とか言われて暴行の罪に問われてここに来たってわけだ」

「酷い・・・!!そんな事許されていいわけがありません!!」

「だろ?そう思うだろ?だから、オレはここから出て、そいつをボコボコにしなきゃ気が済まないのさ」

「その後はどうするんですか?脱獄犯として逃げ続けてるんですか?」

「いいや、オレは元々ここの国出身じゃない。ここを出て、クソッタレ貴族に復讐したらすぐに母国に帰るさ」

「なるほど!分かりました!!」

 格子の間に腕を入れ、手を差し伸べる。

「わたしはハンスさんに剣術を教えてもらいます!!代わりにわたしは、ハンスさんの脱獄を手伝います!!それで良いでしょうか?」

「・・・そんなに簡単に信用して良いのか?もしオレが嘘を付いていたらどうする?」

「嘘にしては良くでき過ぎていると思います!それに、ハンスさんの目は嘘をついているように思えません!」

 論理的ではない理由に思わずハンスも目が点になる。こんなにも純粋な少女がいるのか、という呆れと驚きと感動が入り混じった表情だ。

「じゃあ、契約成立だな。毎日深夜の3時に来い。檻越しだけど教えてやる」

「分かりました!ありがとうございます!!・・・あ、そういえばちょっとお願いしたい事があるんですけど、良いですか?」

「とりあえず聞いてやる。なんだ?」

「あのー・・・えーっと・・・師匠って呼んでも良いですか!」

「好きにしな。あと、脱獄プランはお前に丸投げするからな。しっかり考えておけよ」

「はい!師匠!!」

 師匠と呼ばれて満更でもないハンスなのであった。
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