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3章 極悪囚人更生施設サルフル鉱山
68話 臆病な囚人
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「いや~すんません・・・本当なら新しいつるはしに変えていたんですが、今は生憎──────」
「在庫がないんだろ?だから俺が臨時で雇われた。少し刃が短くなるけど良いか?」
「ええ、ええ!大丈夫です。使えれば何も問題はないので」
俺よりもはるかに年上なのに、オドオドとしている。囚人に虐待し続けられた結果だろう。恐怖が身体に染み付いている。
「アンタ、何年くらい前からここにいるんだ?」
「この鉱山を国が買い取ってからずっとです・・・囚人歴は18年・・・って、そんな事知りたくないですよね。すみません」
「いや、別に構わない」
18年、つまり俺が生まれる前から捕まっていたのか。こんなにオドオドした性格になるのも仕方のないものだろうか。
「少し、この鉱山について聞いても良いか?」
「一囚人として答えられる限度であればお答えいたします・・・」
「感謝する。じゃあ、この鉱山で採れる石を教えて欲しいんだが」
「そうですね・・・大体は鉄ですね・・・たまに宝石の原石が紛れている事がありますね。知っていますか?シャイニングという真っ白な宝石です」
シャイニング。パァラが言っていたグリット合金の作成に必要な宝石だ。決してパァラを疑っていたわけではないが、サルフル鉱山には確かに存在しているようだ。
「他には無いのか?風の噂に過ぎないが、光る不思議な鉱石がいると聞いたんだが・・・」
「光る鉱石?・・・・いや、聞いた事がありません。先程も言った通り、この鉱山で10年労働していますが、そんな神々しい鉱石は一度も見た事がありません・・・」
鍛治職人である俺ですら知らなかった鉱石なのだから、相当希少性が高いのだろう。10年働いている囚人が言うのだから間違いなく。
「何故、その鉱石を探しているのですか?」
「鍛冶屋として気になっただけだ。その鉱石で剣を作ったらどうなるんだろうってな」
「そういう事ですか・・・お力になれず申し訳ございません」
「いや、そんな事はない。凄い助かったよ」
話をしているうちに、つるはしの研磨が終わる。少し刃が短くなってしまったが、再び鋭さを取り戻した。
「ああ!ありがとうございます・・・!なんとお礼を言ったら良いのやら・・・」
「気にしなくて良い、ついでだ。ところでアンタなんて名前だ?」
「な、何故このようなクズの名前を知りたがるのです?」
「何となくだよ。それとも聞かれたくなかったのか?」
「いえ!いえ、そんな事はございません!!私の名前はリバー・バーチュでごさいます・・・」
「マーサ・ラームだ」
「素敵なお名前です・・・ん?ラーム?」
終始ぎこちない笑みを浮かべていたリバーの顔が曇る。俺のファミリーネームにひっかかったようだが────。
「もしかして、お祖父さんも同じ鍛治職人ではありませんでしたか?」
「ああ、そうだけど・・・あ~もしかしてじいちゃんの知り合い?」
「はい!それはもう良くしてくれました!18年以上前のことですがね・・・ハハッ」
声の高揚が感じられた。それなりに仲がよかったようだが、じいちゃんからはリバー・バーチュなんて人物の話は一度も聞いた事がない。
いや、俺への悪影響を考えて話さなかったのか?仮にもサルフルに送られるレベルの犯罪者だったわけだし。
でも、出会ったしまったからには伝えた方が良いだろうか?じいちゃんは昔に亡くなってしまった事を。
「リバー、実はだな・・・」
「あ!あ~!まずい!休憩時間が終わってしまった!申し訳ないのですが、作業に戻ります!つるはし、ありがとうございます!!」
リバーは、修理したつるはしを手に取ると、逃げるように作業小屋から出て行ってしまった。じいちゃんの訃報を伝えたかったのだが、また今度にしよう。
「在庫がないんだろ?だから俺が臨時で雇われた。少し刃が短くなるけど良いか?」
「ええ、ええ!大丈夫です。使えれば何も問題はないので」
俺よりもはるかに年上なのに、オドオドとしている。囚人に虐待し続けられた結果だろう。恐怖が身体に染み付いている。
「アンタ、何年くらい前からここにいるんだ?」
「この鉱山を国が買い取ってからずっとです・・・囚人歴は18年・・・って、そんな事知りたくないですよね。すみません」
「いや、別に構わない」
18年、つまり俺が生まれる前から捕まっていたのか。こんなにオドオドした性格になるのも仕方のないものだろうか。
「少し、この鉱山について聞いても良いか?」
「一囚人として答えられる限度であればお答えいたします・・・」
「感謝する。じゃあ、この鉱山で採れる石を教えて欲しいんだが」
「そうですね・・・大体は鉄ですね・・・たまに宝石の原石が紛れている事がありますね。知っていますか?シャイニングという真っ白な宝石です」
シャイニング。パァラが言っていたグリット合金の作成に必要な宝石だ。決してパァラを疑っていたわけではないが、サルフル鉱山には確かに存在しているようだ。
「他には無いのか?風の噂に過ぎないが、光る不思議な鉱石がいると聞いたんだが・・・」
「光る鉱石?・・・・いや、聞いた事がありません。先程も言った通り、この鉱山で10年労働していますが、そんな神々しい鉱石は一度も見た事がありません・・・」
鍛治職人である俺ですら知らなかった鉱石なのだから、相当希少性が高いのだろう。10年働いている囚人が言うのだから間違いなく。
「何故、その鉱石を探しているのですか?」
「鍛冶屋として気になっただけだ。その鉱石で剣を作ったらどうなるんだろうってな」
「そういう事ですか・・・お力になれず申し訳ございません」
「いや、そんな事はない。凄い助かったよ」
話をしているうちに、つるはしの研磨が終わる。少し刃が短くなってしまったが、再び鋭さを取り戻した。
「ああ!ありがとうございます・・・!なんとお礼を言ったら良いのやら・・・」
「気にしなくて良い、ついでだ。ところでアンタなんて名前だ?」
「な、何故このようなクズの名前を知りたがるのです?」
「何となくだよ。それとも聞かれたくなかったのか?」
「いえ!いえ、そんな事はございません!!私の名前はリバー・バーチュでごさいます・・・」
「マーサ・ラームだ」
「素敵なお名前です・・・ん?ラーム?」
終始ぎこちない笑みを浮かべていたリバーの顔が曇る。俺のファミリーネームにひっかかったようだが────。
「もしかして、お祖父さんも同じ鍛治職人ではありませんでしたか?」
「ああ、そうだけど・・・あ~もしかしてじいちゃんの知り合い?」
「はい!それはもう良くしてくれました!18年以上前のことですがね・・・ハハッ」
声の高揚が感じられた。それなりに仲がよかったようだが、じいちゃんからはリバー・バーチュなんて人物の話は一度も聞いた事がない。
いや、俺への悪影響を考えて話さなかったのか?仮にもサルフルに送られるレベルの犯罪者だったわけだし。
でも、出会ったしまったからには伝えた方が良いだろうか?じいちゃんは昔に亡くなってしまった事を。
「リバー、実はだな・・・」
「あ!あ~!まずい!休憩時間が終わってしまった!申し訳ないのですが、作業に戻ります!つるはし、ありがとうございます!!」
リバーは、修理したつるはしを手に取ると、逃げるように作業小屋から出て行ってしまった。じいちゃんの訃報を伝えたかったのだが、また今度にしよう。
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