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3章 極悪囚人更生施設サルフル鉱山

67話 つるはしを作る

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 今日はとりあえず10本作るとしよう。

 つるはし作りの為に支給された鉄のインゴットを熱し、溶かし始める。修繕したお陰か、良い速度で赤くなり始めている。

「良いね・・・」

 金槌で打つのに丁度良い温度になった頃合いで溶炉から出して、金床に移動させ、つるはしの形に整形していく。

 先端に行くごとに鋭く細く整形。持ち手は木なのでここで作るのはあくまでも刃の部分のみ。

 最後に持ち手の木をはめ込めるようにつるはしの真ん中に穴を開けたら冷やす。

 人肌でも触れる温度になったら次は研ぎの時間だ。先端で岩を砕くのだから、鋭すぎず鈍すぎずを意識して研ぐ。

 あまりにも研ぎすぎるとすぐに壊れる要因になる。何事もやりすぎは良く無いのだ。

「・・・このくらいで良いかな?」

 つるはしの鋭さに納得したら、木を削り、持ち手へと加工していく。最後に持ち手と刃をはめ込んだらつるはしの完成だ。

「まあまあの出来だな」

 ここで思った事があるだろう。もっと効率化できたのでは?と。予め木を持ち手に加工しておけばよかったのでは?と。

 その通りである。完全に忘れていた。数をこなす鍛治は非常に久しぶりなので忘れていた。ただ、1本目で気が付けたので良しとしよう。

 1本のつるはしを作るのにかかった時間は50分程。効率化すれば30分で1本作るのはかたいな。

「さあてと、先に刃を部分を作ろうか、それとも持ち手の部分を作ろうか・・・いや、溶炉熱してるから普通に刃の方だな」

『お取り込み中申し訳ないのですが、少し良いですか?』

「暇だから大丈夫。どうしたんだ?メア」

『こちらの小屋に向かって人間の方が近づいて来ています』

「兵士か?」

『にしては生命力の反応が異様に小さいので恐らく囚人かと思われます』

 兵士ならともかく、現在進行形で作業中の囚人が近づいて来ているのは不思議だが、メアの探知が外れた事は一度もない。信じないなんて選択肢は無い。

「教えてくれてありがとう。悪いんだけど、しばらくの間ただの石のフリしておいて」

『分かりました。お気をつけて』

 しばらくしないうちに扉がノックされる。入室を許可すると、栄養不足が丸わかりのガリガリの初老の囚人が入って来た。

「すみません・・・こちらに今鍛冶屋がいると聞いてきたのですが、どうか私のつるはしを直してはいただけないでしょうか?」

「そういう事か・・・良いけど、仕事場を抜け出して大丈夫なのか?」

「ただ今休憩時間なので問題ありません」

 囚人が手渡してきたつるはしは確かに壊れていた。しかし、先が折れただけなので削れば使える。新しいのに取り替える必要はない。

「待ってろ。時間内に直してやるから」

「ありがとうございます・・・」

 囚人は深々と頭を下げる。髪の毛と髭が伸びすぎており、顔が分からない。散髪はどのくらいの頻度で囚人は行っているのだろうか・・・。
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