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3章 極悪囚人更生施設サルフル鉱山

62話 人生は我儘を通し切る事はできない

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 宿に戻ったマーサは老人から聞いた話をパァラに話した。すると、パァラは天井を仰ぐように己のミスを悔やんでいた。

「悪い・・・この間来た時は大丈夫だったから今回も大丈夫だと思ってたんだが・・・」

「サルフル鉱山の国営化は10年前からだけど、この間っていうのは一体いつの話なんだ?」

「ええと・・・ざっと30年前かな?」

 400歳からしたら、常人で言う所の3年程度に値するのだろうか?

「頼りにしろとかほざいときながらこのザマは酷いな・・・天才錬金術師の名に傷がついちまった・・・」

「全部アンタのせいってわけじゃないさ。国営化してる事を知ってるのに言わなかった事も、アンタに頼り切りになりすぎた事も俺のミスさ」

 さっきも言った通り、国営化は知っていた。しかし、トンスの炭鉱夫すらも追い出しているとは知らなかった。

「なるほど!働いてた人がいなくなっちゃったからこの町の活気が無くなってたんですね!!」

「だな・・・仕方ない、城下町に潜り込んで鉱石を手に入れるか・・・」

「待て、忘れたのか?一般に光鉱石は出回っていない。城下町に行っても無駄足だ」

「光鉱石はサルフルでしか取れないのか?」

「いや、そんな事はない。多分他の鉱山でも採れるとは思うぞ」

「じゃあ、どこか適当な鉱山で─────」

「見つけるまでに何年もかかるだろうがな」

 確実にあると分かっているけど、入れない鉱山と確実にあるとは言い切れない鉱山。どちらかを選ばなければならないという2択。

 しかも、俺は炭鉱業に関してはまるで素人。死ぬまでに見つけられるかも分からない。

「やっぱり、サルフル鉱山で見つけるべきなのか?そもそも、トンスの炭鉱夫を追い出してるのに俺なんかが入れてもらえるのか?」

「じゃあ、変装して忍び込めば良いんじゃねえか?バレる危険性はあるが、光鉱石を見つけられる確率が0からグン!と上がるぜ」

「国が運営してるんだ。身元の管理もしっかりしてると見た方が良い。こっそり侵入もまず無理だろうな」

「無理無理って否定ばっかりだな。メアを元に戻したいんじゃないのか?」

「戻したいが、リスクが大きすぎる。安全かつ安定した策を考えるべきだ」

「この状況ではどっちもは取れない。どっちかを選べ、良いな?」

「どっちか・・・か」

 確かに俺の要望は些か我儘が過ぎていたかも知れない。どちらかを選ぶとするなら安全な新たな鉱脈探しか?そうすればルッタやパァラ達を犯罪者にする事は・・・。

『あの、少し良いでしょうか?私に良い考えがあるのですが・・・』

 ここに来て、気まずくて話ができなかったメアが小袋の中から声を上げた。
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