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3章 極悪囚人更生施設サルフル鉱山
61話 廃れた町
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「安くてよかったですね!!お金にも余裕無いし!!」
「あまりにも安すぎてビビるくらいだけどな。それに、俺らが使ってる部屋以外はほぼ空いてるしな」
あまりにも繁盛していなさすぎる。宿屋の店主も今にもぽっくり行ってしまいそうなおじいちゃんだった。ペンを持つ手が常時震えていたのも確認した。
「様子がおかしい・・・の一言ですませて良い問題じゃないかもしれねぇ。おい、マーサ。確か町の端っこに小さいけどそこそこ立派な鍛冶屋が建ってるはずだ。今日はもう日が暮れてるから無理だが、明日道に迷わないように場所だけ把握しておけ」
パァラから有益か情報をもらった俺は、荷物を起き、護身用の戦鎚を持ち、メアが入った小袋をポケットに入れて宿を出る。
始めて来る町だからかもしれないが、トンスはやや迷路じみた構造をしていたので、何故かうろちょろしていた老人に鍛冶屋の道を聞いてみる事にする。
「鍛冶屋?アンタ一体いつの話をしているんだい?」
「・・・もしかして無いのか?鍛冶屋は」
「ああ、少し前からな」
「少し前というのはどのくらいからだ?」
「ええと・・・10年くらいからかの?」
そんな馬鹿な!鉱山の麓の町だぞ!第二次産業として、鍛治が盛んになっていてもおかしくはないというのに、一つもないだと?
明らかに異常だ。この町で何が起きているというんだ?そういえば─────。
「炭鉱夫はどこにいる?そろそろサルフル鉱山から帰ってきてもおかしくはないんじゃないか?」
「ああ~、なるほどの。残念だが、この町にはもう炭鉱夫はおらんよ。いるのは元炭鉱夫のジジババのみさ」
意味が分からない。俺がこの町に入る時、サルフル鉱山から鉱石を運ぶ人達を確かに見た。サルフル鉱山は未だに稼働しているはずだ。なのに、炭鉱夫がいないだって?
「まるで状況が飲み込めてないようだから、説明してやる。サルフル鉱山はな、10年ほど前に国が買い取ったんだよ。そして、極悪囚人の労働場にした。その結果、トンスの炭鉱夫の仕事は奪われる事となり、今に至るってわけさ」
「ああ、それは知ってるよ。俺だって城下町に住んでたわけだからな。だけど、この様子だと・・・トンスには鉱石が一欠片も流れていないのか?」
マーサは知っていた。サルフル鉱山が国によって買い取られている事を。それによって鉄などが安くなったことも勿論。しかし、サルフル鉱山の麓町の状況までは把握していなかった。
そして、おそらくパァラも知らなかった可能性がある。この町に入ってから不思議がる素振りを見せていたからな。
「じゃあ、この町でインゴットや鉱石を手に入れる事は?」
「不可能だな。残念だったな若いの」
無駄足。そんな言葉が良く似合う。失意の中、俺は宿へと戻っていった。
「あまりにも安すぎてビビるくらいだけどな。それに、俺らが使ってる部屋以外はほぼ空いてるしな」
あまりにも繁盛していなさすぎる。宿屋の店主も今にもぽっくり行ってしまいそうなおじいちゃんだった。ペンを持つ手が常時震えていたのも確認した。
「様子がおかしい・・・の一言ですませて良い問題じゃないかもしれねぇ。おい、マーサ。確か町の端っこに小さいけどそこそこ立派な鍛冶屋が建ってるはずだ。今日はもう日が暮れてるから無理だが、明日道に迷わないように場所だけ把握しておけ」
パァラから有益か情報をもらった俺は、荷物を起き、護身用の戦鎚を持ち、メアが入った小袋をポケットに入れて宿を出る。
始めて来る町だからかもしれないが、トンスはやや迷路じみた構造をしていたので、何故かうろちょろしていた老人に鍛冶屋の道を聞いてみる事にする。
「鍛冶屋?アンタ一体いつの話をしているんだい?」
「・・・もしかして無いのか?鍛冶屋は」
「ああ、少し前からな」
「少し前というのはどのくらいからだ?」
「ええと・・・10年くらいからかの?」
そんな馬鹿な!鉱山の麓の町だぞ!第二次産業として、鍛治が盛んになっていてもおかしくはないというのに、一つもないだと?
明らかに異常だ。この町で何が起きているというんだ?そういえば─────。
「炭鉱夫はどこにいる?そろそろサルフル鉱山から帰ってきてもおかしくはないんじゃないか?」
「ああ~、なるほどの。残念だが、この町にはもう炭鉱夫はおらんよ。いるのは元炭鉱夫のジジババのみさ」
意味が分からない。俺がこの町に入る時、サルフル鉱山から鉱石を運ぶ人達を確かに見た。サルフル鉱山は未だに稼働しているはずだ。なのに、炭鉱夫がいないだって?
「まるで状況が飲み込めてないようだから、説明してやる。サルフル鉱山はな、10年ほど前に国が買い取ったんだよ。そして、極悪囚人の労働場にした。その結果、トンスの炭鉱夫の仕事は奪われる事となり、今に至るってわけさ」
「ああ、それは知ってるよ。俺だって城下町に住んでたわけだからな。だけど、この様子だと・・・トンスには鉱石が一欠片も流れていないのか?」
マーサは知っていた。サルフル鉱山が国によって買い取られている事を。それによって鉄などが安くなったことも勿論。しかし、サルフル鉱山の麓町の状況までは把握していなかった。
そして、おそらくパァラも知らなかった可能性がある。この町に入ってから不思議がる素振りを見せていたからな。
「じゃあ、この町でインゴットや鉱石を手に入れる事は?」
「不可能だな。残念だったな若いの」
無駄足。そんな言葉が良く似合う。失意の中、俺は宿へと戻っていった。
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