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2章 稀代の超天才聖人錬金術師パァラちゃん

52話 死者に弔いを

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 2時間後、俺とルッタはパァラに連れられて崖の上の小屋に戻っていた。

「これで最後のお願いだ。ちょっとこの体の処理を手伝ってくれ。このままじゃ腐敗臭振り撒く害になっちまうからな」

 布に包んで外へ運び、木材を遺体の近くに置き、炎の魔法で燃やす。老体という事もあってか、遺体はすぐに燃え終わり、灰となった。

「・・・サクセスみたいに魂がこもったって事はないよな?」

「こもってない・・・と思う。生きれる状態じゃないからな」

 サクセスの事もあってか、答えが曖昧になっている。常識が覆ったのだから仕方無いと言える。

「次はサクセスだ。埋めるの手伝ってくれ」

 次は崖を下り、足場の土で見晴らしの良い場所を見つける。

 土の魔法で地面を掘った方が時間的にも労働力的にも非常に効率的だが、人としての心が許さず、ショベルを使って人一人が入れる穴を作り、穴の中にサクセスを埋め、祈る。

「これで、コイツの体がゾンビとなって人を襲う事はないな。屍術師に利用さえされなければな」

「なあ、サクセスは人生全てをかけたと言っていたが、サクセス自体は何年生きていたんだ?」

「培養液に浸していた時期を除けば、10年と1ヶ月と5日だ」

「短いな」

「乗り移る為の肉体としては失敗作だったからな」

 サクセスに経緯を払っているのかは定かではないが、きっぱりと失敗作とは言い切っていない。知識を取り戻すまでの態度とはまるで違う。この態度が知識を取り戻したからなのか、サクセスの死があったからかは不明だが。

「400年生きてきたが、まだまだこの世界には驚かされる事ばかりだ。サクセスと言い、マーサの剣とかもな」

『剣ではなく、メア・モークという名前がありますので、そちらで呼んでいただけるとありがたいです』

「その名前も聞いた事がない。んでもって、お前らが俺を訪ねてきた理由も今分かった。メア・モークについて聞きに来たんだな?」

 コクリと頷く。しかし、この様子だと知らないようだ。

「悪いが知らん。趣味でジッパの事は調べているが、メア・モークという銘の剣なんて聞いた事がない。だが、不思議なもんだな、喋る剣なんて学校の歴史書に載るレベルなのに」

「活躍する機会が与えられなかったんだから仕方ないさ。ただ、厳密には俺はこの金属に関して聞きに来たんだ」

 小袋に入った金属をパァラの手の平に載せる。

「うげぇ!闇の魔法に侵食されてんじゃねぇか!バッチィ!」

「俺も何度か触ったが、短時間なら問題はない。俺達はその金属の正体を求めてきた。分かってるのは合金という事だけ。後は何が何だかさっぱり分からん」

「ほほう・・・これなら俺も分かるぞ、ジッパの歴史を調べてる時に見かけた。名前はグリット合金、ロストテクノロジーさ」

 ロストテクノロジー、失われた技術。つまりはメアの完全修復は不可能ことになる。いきなり断たれてしまった希望。背中のメアは大きなため息を吐いている。

「・・・そうか、それは残念d────」

「俺が、解明していなければな!!」

「アンタ、最高だな」

「だろ?だが、しかし!!グリット合金の技術は俺の頭の中にしかないし、誰にも教えたくはない!!この言葉の意味、分かるな?」

「・・・同行させろ、その旅にって事?」

「正解!!話が分かるじゃないか」

「でも、あんた今女児だろ?大丈夫なのか?」

「おいおい!さっきの戦いを見たろ?体力はまるでないが、戦力としてはばっちしだぜ?何なら、お前らの安全すら保障しちゃうぜ?」

 これは俺なんかよりも断然頼れる。同行させない理由が見当たらない。

「よろしく、頼む」

「ああ・・・よりしくね☆マーサお兄ちゃん!」

「きっしょ」

「あ゛?」

「いや、何でも」

 今まで散々男口調だったのに、いきなり女の子口調に変えるのはちょっと、いやかなりキツイ。そう思ってしまうマーサとルッタなのであった。
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