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1章 追放とクソ雑魚オンボロ聖剣との出会い

7話 旅の仲間は錆びた剣

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『貴方が鍛治職人・・・?』

「なんだ?見えないのか?」

「はい、どちらかというと冒険者のように見えますが・・・そもそも、なんでこんな場所に鍛治職人がいるのですか?』

「聞くな聞くな。しばらく経ったら教えてやるから」

 追い出されたのは丁度今日。少しでも、関連性のある物を見ただけで思い出して腹が立つ状態。

 それに、眠い。ずっと歩き続けていたせいで体力がまるで残っていない。

『ま、待って下さい!まだ聞きたいことが────』

「明日の俺に聞いてくれ。お前と違ってこっちには生身の体があるんだ。寝かせてくれ」

『それも、そうですね・・・では、寝落ちでもよろしいので400年間の変化を────って、あれ?』

 少し吸引力が高い寝息が聞こえてくる。聖剣は自分で振り向くことが出来ない為、目で確認はできないが、マーサは確実に寝ていた。

 睡眠宣言から僅か数秒で眠りについてしまった。それは睡眠ではなく、気絶ではないだろうか?しかし、意識がないことには変わりない。

 彼が起きるまで待つことにしよう。

『・・・スサノオ様』

 はるか昔に死亡し、白骨化した元の持ち主をしばらく見つめ、聖剣も再び眠りに付くのだった。今回は401年ではなく、7時間の睡眠だ。



 次の日、マーサは喋る聖剣をリュックにぶち込み、森の中を、歩いていた。

『森・・・ですか』

「反応からして、前は森ではなかったみたいだな」

『ええ、ここは400年前は悪魔との戦場でした。私達が昨日寝床に使ったのは、怪我を負った戦士達の休憩所でした』

「なるほど。だから、簡素に作られていたわけか。そういえば、お前銘はなんでいうんだ?」

『な、名前ですか?貴方、鍛治職人なのに、私レベルの聖剣の銘を知らないのですか!?』

「うん、知らない。だって、何にも成果を上げてないじゃないか」

『うぐっ・・・』

「確かに良い剣だったろうけど、武勲をあげてなきゃ名前は歴史に刻まれないよ。無機物だと尚更ね」

 身体能力が高いから、才能がずば抜けているからという理由だけで歴史には刻まれない。その力を活かすことでようやっと歴史に刻むことができるのだ。

『メア・モークです・・・』

「性格だけじゃなくて、名前も人間っぽいな。ならば、メアと呼んだ方がいいか?」

『お好きなようにどうぞ』

 マズイ、少し拗ねてしまった。どのくらいの期間かは不明だが、旅の仲間なんだ。仲が悪くなることだけは避けたい。

『ところで、私の体はいつになったら治して下さるんですか!?』

「農村に行ったら直してやる。死ぬわけじゃないんだし、そうカリカリするな」

『貴方には分からないでしょうねぇ!この錆びた体の不快感!そして役立たずの劣等感!!』

「はいはい、嫌ですねぇ~。そら、行くぞ・・・」

『こら!話は最後まで聞いてくださいまし!!』

 寂しくは無くなったけれども、騒がしくなってしまった。
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