上 下
1 / 208
1章 追放とクソ雑魚オンボロ聖剣との出会い

プロローグ

しおりを挟む
「マーサ・ラーム。本日付けで君をギルド『ディラム』から解雇させてもらう」

「・・・マジですか?」

「おおマジだ」

 生まれてくる時、親は選べない。そんな言葉がこの世にある。

 この俺、マーサ・ラームはこの言葉を今までまるで気にかけた事がなかった。だって、その親がいないんだもの。

 父親は俺が生まれる前にどこかへと姿を消し、母親はその件で精神をおかしくしてしまい、3歳の時に自殺。

 残された俺は当然のように親戚中をたらい回しにされた。親が親なんだ。誰だって腫れ物扱いしたくなる。

 けど、幸運な事に俺には小さな頃からとある才能を持っていた。

 金槌を振るった事がないのに、俺には『鍛治』のスキルが備わっていた。そして、更に幸運な事に俺の祖父ちゃんは鍛治職人だった。

 残念な事に祖父ちゃんは12歳の頃に死んじゃったが、お陰でギルドのお抱え鍛治職人として生きる事ができた。

 命を削って金稼ぎをする冒険者のギルドの鍛治職人。決して簡単ではないが、やり甲斐とそれに見合った報酬は貰える。

 悪くない生活だった。けど、そこまでこの生活が長くは続かなかった。当然の解雇通知で俺の安定した鍛治職人生活はたった6年で終わりを迎えたのだ。

「俺の打った武器に何か問題でも?不良品はしっかりと見極めて提供していたはずですが・・・」

「いや、お前自身に問題はないんだよ。問題はお前の父親だ」

「俺の親父!?生きてるの!?ていうかどうやって知ったんです!?」

「お前が報復する可能性を考えて、誰が特定したのかは伏せておくが、お前の父親については詳しく話そう。マーサ、お前の父親はこの国、ウォリア王国の上級貴族だ。つい1ヶ月前、国王暗殺を画策したとんでもない奴だ」

 ここで明かされた衝撃の事実。自分が生まれた理由がなんとなく分かったような気がする。

「つまり、俺は貴族の性欲解消の結果生まれたって事・・・?」

「・・・そうだろうな。そして、お前は国家転覆を狙った貴族の血縁上の息子。申し訳がここにいさせるわけにはいかない」

 国賊の息子なんて雇っていたら、ギルド自体が潰されかねない。俺に解雇を言い渡したギルド長も苦虫の噛み潰したような表情を浮かべている。

 このギルドにはとても世話になった。これ以上迷惑はかけたくないし、自分のせいで潰れるなんて嫌だ。

「分かりました・・・今まで、ありがとうございました・・・」

 俺は解雇通知と、あまり重くない退職金を手に、ギルド長室から立ち去った。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ちょっと仕事辞めて実家に帰る~田舎ではじめる休活スローライフ

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:321pt お気に入り:146

記憶喪失の婚約者からの溺愛に困惑しています

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:1,814

弱小国の王太子に転生したから死ぬ気で国を生き残させる

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:16

不倫研究サークル ~大学生編~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:27

婚約者をないがしろにする人はいりません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:92pt お気に入り:2,436

犬好きの彼 犬嫌いの彼女

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:21

札幌真夜中カフェ ~天国へ導くハーブティー~

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:14

聖なる歌姫は喉を潰され、人間をやめてしまいました。

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:279

処理中です...