いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!

町島航太

文字の大きさ
91 / 181
四章 異世界に呼ばれた理由

90話 聴こえてくる懐かしい言葉

しおりを挟む
 当たり前だが、ヒュームと魔獣人の容姿は大きく異なる。隠れるには人が普段通らない地下に隠れざるを得ない。

 皆が寝静まったことを確認してから窓から飛び降り外に出る。

 図書館で暗記した城下町の地図を頼りに地下へとやってきた。思わず鼻をもぎたくなる匂い。下水道だったみたいだ。耳を澄ますとネズミの鳴き声が聴こえてくる。そんな不潔極まり無い地下だが、果たして人はいるのだろうか。

「スキル解放『感覚強化』」

 五感を強化するスキルで周りの音や風向きを感じ取りやすくする。すると、先程まで聴こえてこなかった人間の会話が聴こえてくる。しかも使われている言語はコンパス国の母国語である英語ではなく、俺が元の世界で聞き親しんだ日本語だった。

(何で日本語が聴こえてくるんだ?もしかして、俺以外にこの世界にやってきた日本人がいるのか?)

 同じ境遇の人間がいるかもしれないという可能性に思わず心が躍りそうになるも哲郎は一旦深呼吸をして落ち着いた。

(待て待て!早とちりしすぎだ!この世界には英語があるんだぞ。似た言語ではなく全く同じ言語だ。日本語だってあってもおかしくないし、この国に、この世界の日本人に当たる人間がいたっておかしくない!)

 国交が断絶しているので限りなくその可能性は低いが、確認する価値はある。

(音で場所は把握した。『感覚強化』は解除して───)

「スキル解放『忍び足』」

 足音を消すスキル。購入価格は2000イン。両足を欠損した元殺し屋に売ってもらった。

「まじかよ・・・こんな汚い所であと3日も待たないといけないのかぁ!?」

「仕方ないだろ、パーティーの準備もあるし何より勇者がその気じゃなかったんだから!」

 日本語での会話が聴こえてくる。かなり大声だし、3日後のパーティーの話をしている。

(まさかとは思うが、日本語を話しているのは魔獣人なのか?)

 聴こえてくる会話を頼りに歩いていると、壁に普通の家のような木製の扉が付いている場所を発見する。扉に使われている木はかなり腐っている事から、大分前に設置された隠れ家のようだ。扉には穴が何か所も空いており、そこから目をのぞかせると、魔獣人3人が日本語で会話をしている場面を目撃する。

 予感は的中したようで、魔獣人の言語は英語ではなく日本語だったらしい。なのにどうしてこんなにも見た目が違うのだろうか。一体何があって、この世界の日本人にあたる人種は魔獣人になってしまったのだろうか。謎は深まるばかりである。

「そういえば、タイラはどうした?」

「巡回だろ。コンパス人が来ないかの」

「ああ、そうだったな。帰ってきたら次は俺の番か。めんどいな」

 どうやら扉の先の魔獣人の他にもう1人いるみたいだ。下水道に魔獣人がいる事情を聞くのは1人だけで充分。後の3人は面倒な事になる前に片づけておくか。

「スキル解放『火属性強化』」

 スキルで火属性を強化し、扉を蹴り開ける。

「な、なんだぁ!?」

「炎魔法『フレイム』!!」

 驚いている隙に強化した炎の魔法で3人の魔獣人を原型が残る程度に焼き殺す。我ながら酷い戦い方だが、1対3なので文句は言わないで貰いたい。

「な、何してんだ!?」

 右から怒鳴り声が聞こえてきたので顔を向けると、そこには巡回から帰ってきたであろう魔獣人が武器を構えていた。

「・・・おかえり、タイラ君」

「な、何でおいらの名前を!しかも、どうやってパンジグの母国語・・・を・・・」

 動揺している隙に睡眠魔法『スリープ』で寝かせてから、縄で縛り拘束した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari@七柚カリン
ファンタジー
 突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。  知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。  正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。  過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。  一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。  父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!  地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……  ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!  どうする? どうなる? 召喚勇者。  ※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。  

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...